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ヤマトコノカタ  作者: キクチ シンユウ
第二章 ー 空間遊戯 ー
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2-13 巻き込まれた者たち


 この世界で集結地として使用されていた建物内は、備え付けられたランタンの灯りに照らされ、必要最低限の明かりだけが室内を照らしていた。


 陽が昇ることのないこの世界は、常夜(つねよ)の国と呼ばれていた。


 仮設で作られた居室の中は薄暗い灯りが広がっていた。


 武と赤松は、この常夜の国へ転移された経緯(いきさつ)を西澤と岩本へ説明していた。


 二人は説明をしながら錠の様子も伺い、証言に食い違いがないかをアイコンタクトで確かめながら話した。


「報告中に転移してしまうとは迂闊(うかつ)だったが、災難だったね」


 西澤は武たちを労うように言った。


「君たちのことは報告し、学生隊本部にも連絡しておく」


「西澤大尉。これからだが、転移騒動対策本部としてはこの子たちは橋頭堡まで後送するのか?」


 岩本が西澤に確認した。


「民間人なら、ただちに根の堅洲国との黄泉比良坂の橋頭堡まで後送するべきでしょう。

 ですが、この子たちは学生隊です。

 私としては、特にその友人を知る物部学生には転移者の捜索に参加してもらいたい」


━━え?


 武たちは声には出さず驚いた。


 錠と赤松も顔を見合わせる。


「学生隊を捜索行動に参加させるのか?」


「はい。この状況で学生隊を行動に加えることは軍令にも沿っています。

 橋頭堡までの最短距離のルートもまだ安全化できていませんし、この集結地に残置させても、いつ襲撃を受けるかわかりません」


「確かに我々と行動していた方が安全かもしれんな」


「それに来栖学生については、後送するより我々と行動した方がいいかと」


 錠は西澤と目が合い、気まずそうに声を出した。


「はは……。僕についてはお構いなく」


「そういうわけにはいかないぞ。

 君は来栖グループの長男だろう?」


 錠の言葉に間髪入れずに西澤が言った。


 岩本は錠の方を向いた。


「来栖グループの創業家の人間か」


「はい……」


 錠は異議なく答えた。


 岩本は小さく息を吐いた。


「君たちを橋頭堡まで後送するにも、この集結地から転移者を捜索しながらの行動になる。

 これからは我々の指示に従って行動するように」


「了解です」


 三人は岩本の指示に返答した。


「岩本少佐。これからの行動ですが、飛行状態(ケルビム)での飛行はどうされますか?」


「1空( 第1空間戦闘団 )として大方飛び回ったよ。

 だが、高度十メートル以上の飛行によって発生する重力異常のような現象はまだ解明できていない。

 さらに上空から狙撃も受ける。

 敵は我々以上にこの世界を熟知しているのではないか?」


「それに関しては、先ほど来栖学生を襲った装甲肉弾兵も探り探り行動しているようではありました」


「ん? この世界は別勢力の支配下だと言いたいのか?」


「それは物部学生がよくわかるのでは?」


 西澤は武の方を見て言った。


「ぼ、僕がですか?」


「君は鬼塚一郎が作った世界へ行った経験がありますね?」


「そ、そうですが……」


 武はこの世界を見渡した時に感じたことを思い出した。


「確かに、一郎の作った世界のような人気の無さというか、無機質な空間のような印象はあります」


「あのイザナミノミコトの魂を憑依した人魂が作ったという世界かもしれないのか」


 岩本が呟いた。


 岩本は、一郎(イザナミ)が作ったもう一つの葦原の国の上空で、黄泉軍との空戦を繰り広げていた。


「ならば転移者全員を早急に発見し、この世界を制圧しなくてはならんな。

 我々としても飛行状態(ケルビム)での行動は抑え、地上での捜索行動を実施する。

 六時間後に集結地を出発でどうだろう?」


「わかりました。

 こちらも班員たちに伝達します」


 西澤は岩本に敬礼をしてから、武たちの方を向いた。


「君たちもそれまで休息を取るように」


 西澤はそう言って部屋を出て行った。


 続くように岩本も扉へ向かったが、途中で振り返り武の方を見た。


「捜索できるようになってよかったな」


「え、いや……」


「構わないよ。

 何も言わないさ」


 そう言い残し、岩本も部屋を後にした。


「あれって岩本少佐、勘づいてるよね……?」


 岩本が去ってから少し間を置いて、錠が言った。


「まあ、だろうな」


 赤松はそう言って、備え付けられたベッドへ横になった。


「とりあえず休もう。

 俺たちもしっかり管理されながら行動しないと」


「そうだね」


 錠も体を横にした。


「焦るなよ、武」


「う、うん」

 

 武は赤松の言葉に返事をしてから自分もベッドへ横になる。


 部屋の中で(きら)めくランタンを眺めながら、武は大きく息をついた。


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