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ヤマトコノカタ  作者: キクチ シンユウ
第二章 ー 空間遊戯 ー
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2-9 届かなかったもの


 武の前に現れなかった三上と伊藤が、行方不明となった翌日。


 課業を終えた武は、松岡から教官事務室に呼び出されており、廊下を歩いていた。


「武君……!」


 振り返ると、声の主は瑛美だった。


「瑛美さん」


「お友達が行方不明になっちゃったって……」


「うん……」


「武君は二人を探したいよね……?」


「えっ?」


「あっ! 違うよ!

 武君の思っていることを読み取ったりとかはできないの!

 ただ、そう思ってるんじゃないかなって……」


「あ……。

 そういえばあの時、心の中で話せたよね」


「うん。

 けど、知っている人の心に話しかけることはできるんだけど、瑛理子以外で返答してくれたのは武君が初めてだったよ」


「そうだったのか。

 てっきりこっちからも話し返せるのも能力なのかと思ったけど、あの時は神様の力があったからかもね」


「そうかもしれないね……。

 ごめんね、呼び止めちゃって。

 教官に呼ばれているよね?」


「大丈夫だよ。

 心配してくれてありがとうね」


「うん、また明日教室でね」


 見送る瑛美を背にして、武は教官事務室に向かった。



 武が教官事務室に着くと、松岡は隣の部屋の応接室へ通した。


「教官、二人は……?!」


 席に座ることなく、松岡に聞いた。


「まだ行方はわかっていない。

 おのごろ島への連絡橋に向かって二人が公共交通機関を使っていることは確認しており、二人は落ち合ってから姿を消している。

 ただ、昨日話したように、連絡橋付近で境界線空間ゲデルカゴーの現出は確認されていなかったし、道中でも同様に確認されていない」


「そんな……」


 武は直感していたことを口に出した。


「もしかして二人は、異世界に転移する動画を見てしまったのでは……?」


 松岡は武の顔をしっかり見て答えた。


「物部。当事者であるし、二人が心配なことはわかるが、今後の捜査はヤマト機関が警察と連携して行う。

 自分で二人を探そうとは決してするな」


「……」


 武は同意しかねる指示に即答できなかった。


「今回は学生隊は動員されていない。

 いいな?」


「……わかりました」


 武は応接室を後にした。



 寮の自室に戻ると、錠と赤松が武の帰りを待っていた。


「どうだった?!」


「二人が連絡橋に来るまでの間に境界線空間ゲデルカゴーの現出はなかったみたいだし、待ち合わせてから姿を消していることしかわからないって……」


「異世界転移の動画のことは聞いてみた……?」


「それは答えてくれなかった。

 それに、自分で探すのはやめるように言われた」


「なんだよー!」


 錠は不満を顔に出して大きな声で言った。


「熱血な松岡教官なら

 『物部! 今度は二人を救う時だ!』って

 言ってほしいよな!」


「まあ、この騒動に学生隊は動員されていないからな」


 赤松はなだめるように言った。


「だからって武が何もするなって無理があるよね!」


「……やっぱり俺のせいかもしれない」


 武の自責の言葉に、部屋は静まった。


 静寂の中で、武のスマホから着信音が鳴った。


 武が取り出して画面を確認すると、目を見開いた。


「三上と伊藤のグループだ!」


「え?! どっちから?!」


 錠が飛び込むように画面を覗き込む。


「三上からだ……!」


 武がメッセージを開くと、三上はURL付きのメッセージを送っていた。


──この異世界に転移できる動画って何なのかわかる?


「これってさ、アレだよね……?」


「悪い予感が当たったみたいだな」


 錠とは反対側から画面を覗き込む赤松がつぶやいた。


「な、なんで今、三上がこのメッセージを送ってきたんだ……」


「もしかしてこれって、武に送る直前に開いちゃって、異世界に行っちゃったんじゃないの……?」


「けど、こんな遅れて届くなんてことあるか?」


 赤松は真っ当なことを言った。


「だけどさ、そもそも異世界のことなんだし、この世界の科学的に普通じゃないことも起こるんじゃない?」


「まあ、確かにそうかもしれないか……」


「ただ、三上と伊藤はこの動画を再生した可能性がある」


「……武、お前もしかして?」


 赤松は武の決意を帯びた表情から、その考えを察した。


「そーこなくっちゃね!」


 明るい声を出した錠は、自分の収納空間アサムカゴーの中身の確認をし始めた。


「戦闘行動用の入り組み品セットは全部あるぞっと……」


 錠が戦闘行動中における入り組み品の確認を始めるのを見て、武も自分の物品の確認を始める。


「お前ら……」


「赤松も行くでしょ?」


「……」


 赤松は腕を組んで目を閉じた。


「松岡教官からの指示があった後に武がこのURLを開くのはまずいから、教官へのメッセージを送った瞬間に開こう」


「なるほどね! 悪気はなかったと!」


 三人はそれぞれ自室に戻り、荷物の整理を始めた。


 部屋の中が慌ただしくなる中、武はスマホを取り出した。


━━もしも瑛美さんにスマホでメッセージを送ったら、確信犯だよな……。


 武は届かないとわかっていながら、心配をしないでほしいという一念をしてから自室を出た。



「よーし! 外衣も羽張背はばりのせも持ったし、準備万端!」


 錠も意気揚々と自室から出てきた。


「じゃあ二人とも準備はいいか?」


 赤松の確認に、武と錠は頷いた。


「それじゃあ、教官にメッセージを送るぞ……!」


 武のスマホが松岡へメッセージを送信したのを確認し、武は三上から送られてきたURLをタップした。


 画面が切り替わり、動画の再生が始まるのを三人は固唾を飲んで見つめる。


 動画が再生されると、そこにはランタンが灯る街の夜景が映し出されていた。


「街の夜景……?」


 錠がそう呟いてまもなく、三人の姿は消失した。



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