111:潜ってみっけたのは
――海に潜って最初に思ったのは、海って……空が晴れてるとホント、青く感じるってことだった……――
前面をガラス張り系にしたおかげで一応視界は良好。
結局いつも通り足漕ぎだからしっかりとペダルを踏み込んで。
はめ込んである方位磁石を確認しながら私はゆっくりとリン大陸から離れていった……
あ、マーメイ氏号の腕は収納済みだよ。
「それにしても……ホント海って広いなぁ……」
ほぼ無意識の言葉だったけど、それには肩に乗せた陽翔は首を傾げていた。
うん、まぁそうだろうね。
なんというかのんびりと水中を進むマーメイ氏号。
たまにくじらっぽいのとか、でっかくしたウツボぽいのとか通り過ぎてくけど……うん、平和。
――そろそろ目的の領域に到達しそうで、辺りには地続きの場所が増えてきていた。
「あー……やっぱそんな感じなんだ……」
こう、見てるとさ。
島が大地の一部っていうの、よくわかるよね。
私の目には、そこにはどうみても陸地があるようにしか見えなくて、なんとなく予想してた地殻変動もあながち間違いじゃなさそうにも感じられた。
でもやっぱり、この元大陸にはゼロとかみたいな存在はもういなそうだとなんか思えたのはその神聖領からうっすらと広がっているどす黒い何かが見えるからだと思う。
汚染物質とかそういうのじゃなさそうだけど……
そのうっすらとどす黒い何かを採取する為に私は、マーメイ氏号の片方の腕に瓶を、もう片方に蓋を持たせてさっそく作業をはじめた。
まぁ、どうやったら取りやすいのかわかんないけどさ。
瓶をまず逆さにして、そのまま腕を伸ばして。
ちょっと四苦八苦したけどなんとかそれを瓶に入れることができてよかったけど……
「なんだろこれ?」
ホントよくわからないものだった。
神聖領から流れてたもののことなんて
とりあえずゼロに見せてみてかなぁ……
「……あ?」
一応目的の場所は確認できたし、戻ろうかなって思ったときだった。
視界の端にほんの少しの違和感を感じたのは。
マーメイ氏号の腕を伸ばして、その違和感を掴んでみればそれは……
「んー……潰しそう……」
柔らかそうで、潰しそうで、すぐに逃げそうで。
例えて言うならなんだろ……マリモ羊羹?
あれからあの周辺をぐるっと一周してもう違和感を感じなかったからそのまままたリン大陸まで戻ってきたわけだけど……
これ、直に触れない方がよさそうだな。
瓶の方もあのぷにぷにしてそうなのも別々に小箱にいれて
ゼロに見せに来た、訳だけど……
「……よくこれを目視して平気だったよね……」
「え、やっぱヤバいものだったの?」
ゼロは両方とも1回見て、すぐに小箱の蓋を締め直しててたけど……どんだけヤバかったんだろ?
「瓶の方……いや、中身か。この中身は神聖領から広がってたって言ってたけど……言うなら身体の害にはならない汚物だよ。気に入らないけどアル・キングスに言った方がいいよ」
「うへぇ……めんどくさそう……」
そもそも汚物って言い方があれだよね。
あとゼロが言うにはこのどす黒いのはホントに神聖領だけに対してのものらしい。
だからその隣島に影響はなさそうっていうけど……微妙に疑問も持てるよね。
「いや、影響はないよ。ある意味呪いみたいなものであり、望月にならなんて言えばいいかな……洗脳?」
「あぁ、ゼロが私にやろうとしたような?」
「一緒にしないでほしいけど……信仰心の塗り替えって感じだと思うよ。」
うん、とりあえずやっぱりめんどくさそうなものってことはよくわかった。
とりあえずもう1個のぷにぷにしてるのはなんなのか気になるんだけど……
「こっちは……一番完全な大陸の欠片……かなぁ?」
「大陸の欠片……ぷにぷにしてた大陸なの?」
「そんなわけないでしょ」
まぁ、わかってて言ってるけどさ。
要訳すればゼロ達みたいな大陸の意識に成れなかったもの。成れる可能性さえなくなったもの。ということらしい。
「これ自体に力があるけどね。でも、しまっておいたほうがいいよ」
「わかった」
結局は厄介なものしかなかったってことでいいか。
にしても案外潜水艇で潜るのも面白かったなぁ……
また違うとこで潜ってみようかな!!
とりあえずゼロに聞きたいことも終わったから私は、ビネガーさんの家に戻る前に言われた通りにアル王にあのどす黒いのが入った瓶を見せたけどさ……
なんだろ……リデルさんとカイルさん、2人とも目を輝かせてたんだけど……
……私はそっと、そんな2人を見なかったことにしてさっさと帰ったのは言うまでもない……
触らぬ神にたたりなしってシメ。
まぁ、元帝国同様神聖領には触れないですけどね!!
感想とか、評価とか、ツッコミとか待ってますって言葉、どの程度意味があるんだろ?とか思うことあるよね。




