8/84
ゴリオシ
二人はタケルの誘導でスーパー入口を出たところにやってきた。
「大丈夫ですか?」
タケルはおずおずと尋ねた。
「うん、だいぶおちついたのだ」
「怪我とかしてませんか?」
「幸いにも無傷だ」
「でもやっと会えた。ご主人様!」
その子はそういうと抱きついてきた。タケルの人生において異性にハグされる経験などないから、この暴挙は彼を酷く狼狽させた。周囲の目も気になるが、彼女の身体構造が伝わってくるのが、何より気になった。というか、すごく気になった。
タケルは、ふと我に返った。
「すいません、人違いかなにかですよね。あなたと僕は初対面で…」
「うう、さっきぶつかったショックで頭がくらくらしてきたのだ」
「じゃあ病院に…」
「…!?病院は苦手なのだ、君の家で休ませてはもらえないだろうか?」
涙を潤ませて顔を近づけて、見つめられる。その顔の距離はかなり近い。通りがかりの人からすれば、それはキスしてるように見えなくもない。とにかく現状を変えることが先決だ。タケルの判断力は感情に押し殺されていた。
「わかりました。買い物をしたいのですが、大丈夫ですか?」
「大丈夫なのだ」
その子は笑った。その顔はあどけないながらも、彼にはとても輝いて見えた。




