魔王の城
一行は戻ったものの、ベルの処遇に困っていた。
「とりあえずその格好は、変えていただけないか?」
レオンは魔王に言った。ベルは肌は浅黒く、ほとんどビキニに近い露出度だった。コウモリの羽は、幾重にも生えていたし、ウシような角も生えていた。
「この機能美!かつ美しい格好をやめろと申すか、愚か者め!」
「センスが…ね」
ヒナタもドン引きである。
「ベル様、クララのような格好にはなれますかな?」
カレンが提案した。
「造作もないわ」
ベルは一瞬無数のハエになったが、ほどなく合体した。
「…かわいい!」
クララが感嘆の声をあげた。肌の色を変えて着替えただけにしか見えないのに、ベルはそのキャラを萌えに変えた。別人だった。
「かわいいか?…複雑だが悪くないの!我はこれでも魔王じゃから、レオンと比べてもらっては困るぞ!」
ベルはその言葉に反して、とても単純な女の子でしかなくなっていた。レオンはそこを担いだ。
「魔王ベル様、ついでといっては何なのですが、この矮小な『ヒト』の家が、消失しております。そこに新たな居城を作られてはいかがでしょう?」
怒るタケルとヒナタに目で合図をする。二人は真意がつかめなかった。
「おお、ちょうどいい空地じゃの!…ちと狭いが、まあよかろう。では我が魔力、括目せよ!」
ベルは両手を上にあげると、そこにコウモリが無数に飛来した。夕暮れ時でその数は膨大になっていた。ベルの手の上で真っ黒に飛来するそれを使役して、ベルは両手を空地に向けた。
「いでよ!我が城!」
そのコウモリが集まって空地は黒に埋め尽くされた、ほどなく魔法陣が自動で形成され、その周囲からは白煙が立ち込めた。
「こ、これは…!」
ヒナタは絶句した。そこにできたのは紫の土くれでできた、塔のようなものだ。形はかなりいびつで、曲がりくねっていて醜悪だった。大小の穴からは魔物の息吹すら感じる。表面には目がいくつもあって、まばたきをしている。そして、辺りは黒い雲がたちこめている。
「グ、グロテスク…」
クララは吐き気を伴い、身をかがめた。
「美しかろう!黒雲はオブジェクトとして特別に作ったものじゃ!」
「これが、城?」
タケルもその異形さに、絶望した。




