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天魔界のルール
「生きてて良かった」
タケルはヒナタを抱きしめて言った。涙をこらえきれず、それでもその言葉だけは告げた。「生きている」という言葉はこの場合微妙である。スクルドの話を総合するに、彼女は既に「思念体」とか「幽体」という存在であり、この次元でしか存在しえないものに変貌していることは、誰の目を見ても明らかだった。しかしタケルにはそんなことはどうでもよかった。
「あたしは天使に戻っちゃったのね」
妹はさびしそうにいった。タケルは妹の頭に手をのせて言った。
「帰ろうぜ、いつものところに」
「それができれば苦労はない。今ここは戦のただ中であり、彼女は選ばれるべくしてえらばれた天界の戦士だ」
レオンはつらそうに答えた。ベルもうなずく。
「持ち場を離れるなど、天魔大戦のなかであってはならないルールだからね」
「そっちの理屈は知らないよ。俺はヒナタを連れて帰る」
「異世界から離れたものが、異世界に戻れるわけないだろ」
「じゃあお前は何で学校にいたんだ?」
「それはある魔王からの命令を受けてのことだ」
「じゃあ戻るのは可能なんだな?」
「それはルール違反だな」
ベルはおとなしくなってそれに神妙に同意している。ヒトに分類されるタケルたちには、それが不思議だった。
「そんなルール、守らなくていいから…」
クララはおずおずといった。




