魔王との戦い
建物の外から小さな黒いものが、集まってくる。どこかで見たような生き物のようだった。
「ハエ?」
タケルは身近な生き物の登場に、肩透かしを食らった顔をした。それに反してレオンの表情は曇った。
「これは…まずいな」
もはや黒の群体と化したそれは、そのおびただしい数のせいで、周囲は闇と化した。羽音はクララの気を失わせるほどだったが、カレンがそれをとめた。
「ベルゼブブ王だ」
「それはなんだ?」
「魔界でも厄介な、低俗な姿からは想像できないが、ハイクラス、いやトップクラスの魔王だよ」
それは集まって大きなハエになった。巨大すぎるハエは大声でしゃべった。
「よくもそのような矮小な勢力で、ここを訪れたものだ!ハハ!」
「妹を返してもらおう」
タケルは恐怖に抗う気概で、それに対抗しようと必死だった。
「言葉は無粋よ。かかってくるがいい」
「剛力防御」
レオンはまず全方向からの攻撃に備え、空間遮断フィールドを張った。
「明鏡止水」
クララは全員の移動速度とチカラが増える魔法を詠唱しはじめる。
「フルパワーにゃ!」
小さなカレンの耳は大きくなり、手足も肉球と爪がついた。体制を低くとりながら、攻撃姿勢に入る。尻尾は毛がさかだっている。その目は野獣のそれに近くなっていく。
タケルは上着を脱ぐと、さっきの柄を取り出した。彼の胸の中心には丸い突起があり、そこには小さく呪文が刻まれている。タケルはそこにさっきの刀の柄を当てて、文字通り呪文を唱え始めた。その突起と刀は結合し、タケルはそれを引き抜いた。そこからは青白いヤイバが出現した。
「魔力を封じてあったんですね?」
カレンは半獣になってもその異形の術に驚嘆した。
「うん、普段の魔力を全て、ここに集めているんだ」
「それはいつから?」
「小さい時から、かな」
カレンは驚嘆した。それが延々と蓄積されているのならば、あの胸の部分には膨大な魔力が蓄積されていることになる。
「妹を返せえぇ!」
タケルは吠えて突進した。それはクララの補助魔法が詠唱を終えるぎりぎりだった。みなのスピードとパワーがアップした。
「虚空一閃!」
タケルはそのカタナを全力で振った。するとそのヤイバは長さをどんどん増し、どこまでも続く長さになった。それは巨大な魔王を4回切り刻んだ。
「爆発ねこパンチ」
カレンのパンチがその破片を直撃すると、そこから放射状に爆風が広がっていき、その破片は黒焦げになっていく。
「空間断絶」
魔族系の魔法が通用しないため、レオンは空間を切る魔法を即座に発動した。
「魔法防御」
クララは詠唱していた魔法を顕現した。みなを護るためだ。




