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04

自分の姿や声を直視するのは困難だ。




外出の準備を終えたあと、私は鏡から半歩だけ距離を取る。


用があり、街へ出る。

そのたびに私は自分の輪郭を確認しないようにしている。


街の中というものは、無数の「個」という現象が交差する、巨大な因果の交差点だ。


街路樹の葉が風で揺れている。


歩道に面したショールームの巨大なガラス窓。

不意に視界の端で、一人の女性がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

私は無意識に、その「見知らぬ誰か」の装いに目を向けてしまう。


そこに映っていたのは、柔らかさを装った、けれどどこか魂の抜けた既製品のブラウスを纏い、流行に遅れぬよう計算された、しかし主張のない色彩のスカートを揺らしている、中途半端な体裁の女性だった。


数秒の遅滞を経て、それが自分であるという事実に直面する。


私は足を止める。

ガラスの中の「私」も、操り人形のようなぎこちなさで動きを止める。


その瞬間、言いようのない吐き気がこみ上げた。


足を止めたまま、私は反射的に襟元を整えようとして、途中でやめた。

直せば直すほど、ガラスの中の女が、より整っていってしまう気がしたからだ。


私が選んだはずの服。

私が鏡の前で、パウダーを叩き、紅を引き、「これでよし」と頷いたはずの装い。

それが、あまりにも私という幽霊の核から遊離して、借り物の舞台衣装のように浮き上がって見えたのだ。


その装いは、私の内面を表現する言葉ではなく、私を外界から隠蔽するためのカモフラージュだった。

私は、自分で選んだはずの「女性らしさ」という記号によって、世界という巨大なシステムに分類され、標本箱にピンで留められている。


その感覚に耐えかねて、私は逃げるように歩き出す。

ヒールの音がアスファルトを叩くたび、虚飾の音が街に響き渡る。

やがてそれも、クラクションや雑踏のざらついた音に溶け、私の歩調だけが、どこへも届かず宙に浮いていた。



そうして歩きながら、私は自分の喉の奥に、別の居場所があることを意識していた。


角を曲がったところで、知人に声をかけられた。

私は反射的に、最適化された笑顔を張り付け、喉の奥から声を絞り出す。



――ああ、お久しぶりです。お元気でしたか?



差しさわりなく、普通の挨拶をしただけだ。

だが、その瞬間、自分の耳に届いた自分の声に、私はひどく動揺する。


それは、私が知っている私の声ではなかった。


いや、物理的には私の声帯が震えて発せられた振動に違いない。

しかし、その響き、その抑揚、その語尾の処理。


それは、この世の中という舞台で「穏やかで、感じの良い、適切な距離感を持つ大人」を演じるために、長年の訓練によって生成された合成音声のように聞こえた。


この声は、私の魂を運ぶための乗り物ではない。

ただ、その場の空気を円滑に循環させるための、潤滑油としての音波だ。

私が本当のことを言おうとすればするほど、声はどこか高い位置で浮遊し、不自然な震えを帯び、結局は既定の周波数へと収束していく。



――それでは、またどこかで。



空疎な約束を投げ、背を向ける。

足音は、人の波に紛れてすぐに形を失い、私自身の耳からさえ切り離されていった。


街に出る前、私はただ用事を済ませるつもりでいただけだった。


装いは私を規定し、声は私を裏切る。

ガラスに映るあの空虚なマネキン。

耳元で鳴り止まない、あの愛想の良い合成音声。


それらが私を現象として完成させていく一方で、その中心にあるはずの私という照明は、ますます薄く、透き通っていく。



家路を急ぐ私の影が、街灯の下で伸びたり縮んだりしている。

その影は、ガラスに映ったあの女よりも、ずっと私に近い形をしているような気がした。



風が髪を揺らし、微かな音を立てて通り過ぎていく。


ガラスに映ったあの女が、私という幽霊の真実の姿だったのか。

あるいは、知人に投げかけたあの滑らかな合成音声こそが、今の私を形作る「本当の言葉」だったのか。


それを暴こうとすればするほど、私はまた、自分に新しい衣装を着せ、別の声色を用意してしまう。

鏡に向かって「本当の自分」を問いかけることほど、幽霊にとって滑稽で、そして無慈悲な行為はないのだから。



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