第7話 デウスエクスマキナ
「何の事件ですか? 」
友田が身を乗り出すと聞いた。
「先日、Sホテルで、要人がひとり亡くなりまして。
目撃者を捜しています」
警視庁の刑事、川口英二が答えた。
「それは本当の話ですか? 目撃者を捜していると言うことは、
他殺と言うことですか? 」
「はあ」
「いつ、どの階の部屋ですか? 」
「土曜日の夜です。場所はお答え出来ません。
区役所に、何か気になる相談や苦情がなかったですか? 」
「特にありません。いや、待てよ。あの、これ見てもらえますか? 」
友田が、鎌倉から預かった写真を見せると言った。
「なんですかこれ? カラスの羽がどうかしたんですか? 」
川口が食い入るように、写真を見つめると聞いた。
「カラスの羽に、何者かの姿が映っているのが見えませんか?
何か、先が光るものを持っています。何だと思いますか? 」
友田が聞き返した。
「んんん? 小太りの男だ。手に持っているのは、銃らしきものだ」
川口が真顔で告げた。
「銃?! 凶器ですか? 」
「大声を出さないで下さい。この写真預かることは出来ますか? 」
「相談者からお借りしたものなんです。コピーで良ければお渡しします」
「よろしくお願いします」
かくして、区役所職員の友田の手から、
防衛大臣の角田晃一が殺害された証拠写真(凶器)が
警視庁の刑事の川口の手元へと渡った。
鑑識係が写真を解析した結果、
不審な小太りの男が手に持っていたのは、
ふつうは、熊など野生動物を殺す為に使用するテーザー銃であった。
小太りの男は全身黒づくめ。野球帽、サングラス、マスク姿。
暗くて、人相がよく見えないが下の方を見つめているみたいだ。
真下には、殺人現場となったバルコニーがある。
恐らく、至近距離から、真下へ向けてねらったのだろう。
ところが、殺人現場には、落ちているはずの針が残されていなかった。
恐らく、犯人が密かに、殺人現場から回収したのだろう。
それでも、被害者の体に小さな点のような
針跡があった事から、銃殺のせんが濃くなった。
もしかすると、犯人は、完全犯罪を計画したのかもしれない。
デウスエクスマキナ
完全なる神が出現して、唐突に、フクザツな展開を解決する。
動機はなんなんだ?
被害者と犯人との関係は?
政界の関係者。地元の事務所スタッフや後援会などの支援者。
身内や親戚縁者。知人友人。
被害者の周囲の人間関係や疑わしき人物を捜査したが、
小太りの男と同一人物がいなかった。
今のところ、銃の免許を所有していることしか、
犯人の手がかりがない。
生前、角田は、誰かからうらみを買うようなことはなかったという。




