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第5話 ミラクル

 止める間もなく、士官生たちが、Dr.ナイジェルの周りを取り囲んだ。


コルデリアが士官学校へ押しかけて、


切断撤回要求の為、共に直談判してくれる同士を募ったらしい。


ジミー・オースティンの名声は、士官学校にも及んでいたのだ。


彼の軍人としてだけでなく、ひとりの人間としての生命線を


断ち切る事だけは、彼を慕う者たちは我慢ならなかったのだ。


「こちらにおられるDrの手腕を信じて、


オースティン大佐の右腕の再建手術を行うように我々も求めます! 」


 士官生を代表してサミュエル・シドニーが訴えた。


「軍の命令に背くつもりか? 」


 Dr.マグナが身を乗り出すと聞いた。


「我々は陸軍の未来を担う者として、


陸軍の悪しき体制を変えたいと考えています。


そう考えているのは、我々だけではありません! 」


 シドニーが、Dr.マグナの目の前に嘆願書を叩きつけると言い放った。


「私からも、よろしくお願いいたします」


 後から駆けつけたコルデリアが頭を下げると告げた。


「短期間でよくここまで集めたな」


 Dr.マグナが嘆願書を手に取ると


そこに記された士官生たちの氏名を確認した。


(これだけの者たちが、あの男を慕っていたのか!? )


驚いたことに、士官生たちにまぎれて、教官やスタッフ。


陸軍の若き軍人たちの署名も見て取れた。


(これで民意を示したとでも言いたいのか? )


「この先、オースティン大佐だけでなく、同じ症例の患者が現れるかもしれません。


昨今、医学が発展していることは否めませんでしょう? 」


 コルデリアがすかさず加勢した。


「なんだと!? いったい、誰に向かって物を言っている! 」


 Dr.マグナが声を荒げた。


「Dr.マグナ。必ず、成功させます。ただ、対立は望みません。


こちらの準備は出来ています。あとは、あなた方の覚悟だけです」


 Dr.ナイジェルの言葉に対して、


Dr.マグナがニヤリと意味深な笑みを浮かべた。


結局、マスカレ法が実施されたのは、


ジミーが、日本の横田基地へ転勤した後のことだった。


それと言うのも、執刀医を務めるDr.ナイジェルが、


医学留学生という身分であったこと。


彼以外に名乗りを上げる正式な医師が現れなかったからだ。


やむを得ず、Dr.ナイジェルの帰国に合わせて、


日本の横田基地へ緊急搬送措置が取られた。


到着するや否や、


Dr.ナイジェルが留学する前まで、


勤務していた帝都大学病院へ協力を求めた。


以前から、Dr.ナイジェルの手腕に一目置いていた


整形外科チームが快く承諾。


ただちに、横田基地へ集合すると、


Dr.ナイジェルが、アメリカの名医から学んだ


集大成とも言える最新技術を用いたマスカレ法による手術が行なわれた。


[1回目]

欠損部に、セメントを詰め込み特殊な膜を形成する。


ー6週間、合併症を防ぎながらなじむのを待つー


[2回目]

他の部分から移植した自分の骨を詰め込む。

バイオアクティナ・ガラスや

長期除放性抗生剤を組み込んだ特殊な措置を施す。

あらかじめ、形成された特殊な膜やインプラントが、

移植した新たな骨(土台)を保護する一方で再生を強く促す。


Dr.ナイジェルたちのおかげで、ジミーは驚異的な回復を見せた。


その後、様々な紛争地帯をめぐり軍歴を重ねる中、


3年間。士官学校の教官を務めて、多くの優秀な軍人を戦地へ送り出した。


2026年の新政権で、国防長官になった。


活躍の場を政界へ移した矢先、再び、彼を病魔が襲うのであった。



















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