第10話 アンアースド
時を同じくして、まるで、長い年月、地下に眠っていたマグマが、
火山活動を始めたかのように、止まっていた時間が静かに動き出した。
角田晃一殺害事件の容疑者を追っていた捜査チームが、
とある騒動にたどり着いたのだった。
「開発事業だと!? 」
担当刑事の川口が思わず声を上げた。
「実は、角田代議士は、山梨県出身でして‥‥ 。
先代の同じく代議士を務めていらした父親の跡を受け継ぎ、
選挙区内にある富士樹海地区青木ヶ原樹海エリアの開発を
公約に挙げているわけなんです」
後輩刑事の佐倉耕作が言った。
佐倉が、地元で聞き込みを行った結果を以下の通り報告した。
角田晃一の父、顕氏は、開発事業の反対派の中心におり、
「富士樹海地区青木ヶ原樹海エリア」反対派の重鎮だった。
開発事業に名乗りを上げている不動産会社、建築業者などは、
「レジャー観光開発」
「キャンプトラベル(ウォーキングツアー)」
「レジャー施設の建設」を計画している。
一方、反対派団体は、
観光化により、マナーが悪い観光客が増化する可能性があり、
「富士山文化遺産」に登録されている地域の
景観・環境保護活動に支障がある。
開発エリア内の磁気異常が原因で、
時として、方位磁石が狂うとの問題点を指摘して、
「登山鉄道構想」や「メガソーラー開発」を実現化した場合、
電磁波障害が発生する原因につながる事を指摘。
学者や専門家が調査した結果、
電磁波な影響を受けることにより、交通システムに混乱をきたす。
富士樹海にある地磁気研究所内に設置されている
精密機器にノイズを与える可能性があり、
天然の磁場データの純度が
損なわれる恐れがあることが分かったとして、
地元の政治家を頼り、何としてでも阻止しようとしている。
「政治家が、地元の開発事業を後押しするなんて
よくある話ではないのか? もしかして、殺害した犯人が、
反対派の中にいると言うわけか? 」
川口が思案顔で言った。
「先代の方が反対派の重鎮だったのに、
息子の方は東洲党の方針に従い、推進派にまわったわけなんです。
恐らく、長い間、共に戦って来た県民の間では、
裏切り行為だとみなされたのではないでしょうか?
それにより、山梨県内の衆議院議員が主催した
いわゆる資金パーティーで巨額の金が、東洲党に流れたそうです」
佐倉が神妙な面持ちで言った。
「選挙資金の流れを変えたとなると、公安も黙っちゃいられねぇはずだ!
それで、犯人の目星がつきそうなのか? 」
川口が前のめりの姿勢で聞いた。
「さっそく、公安からお声がかかりました。
公安の捜査線上に浮上していたある男がいまして‥‥ 」
佐倉がそう告げた後、ノートPCの画面を見せた。
画面に映し出されたのは、山梨県内で開催された
ライフル射撃の大会で撮影された写真だった。
「大会の運営者のタレコミで判明したのですが、
ここに映っている上位受賞者のひとり、
福原一紀42歳がどうも、角田代議士が死亡した2日前から、
Sホテルに宿泊していたらしいんです。
昨日。都内で開催された地磁気学の
論文発表会の受賞結果を確かめる為に現地入りしたそうです」
佐倉がそう説明した後、福原の姿を拡大して見せた。
「ああ、こいつは、カラスの羽に映し出された小太りの男?! 」
川口が思わず目を見開くと告げた。
「目撃者の証言と一致します。
福原は現在、山梨県で里山事業を手掛ける会社を経営しています。
今年の優勝者が、犬山左京という個人の研究者なんです。
犬山左京は、角田代議士の秘書を務めています」
「犬山左京の素性を調べるとするか」
「そう来ると思って、すでに、調べてあります」
その後、安井涼の弁護士が、安井の兄、吉武の捜索をお願いしていた
故郷の新潟県警から連絡を受けて、警視庁捜査1課に姿を現した。




