第9話:学園の心が揺らぐのです
校庭に響いた玉ねぎの「ぽぉぉぉん……」は、学園の空気を確かに揺らしていた。
生徒会長は膝をつき、震える声で言った。
「……これは……あなたの“可愛い”……?」
咲姫は静かに頷いた。
「そうなのです。可愛いは……迷惑ではないのです。まだ……届いていないだけなのです」
生徒たちがざわつく。
「なんか……胸があったかい……」
「涙が止まらない……」
「玉ねぎなのに……なんで……?」
新人は涙を拭きながら叫ぶ。
「し、しみるぅぅぅ!!でも……なんか……癒やされるぅぅぅ!!」
ぽぷらんは拳を握る。
「ほら見ろ!!咲姫の可愛いは世界一なんだよ!!」
ルネは玉ねぎドレスを抱きしめながら震える。
「ひぃぃ……でも……綺麗なのですぅ……!」
うさちぁんは屋台の上で叫ぶ。
「はいはい~、“涙の浄化まんじゅう”販売開始~!」
「商売するなニャ!!」
生徒たちの心が揺れ始める
生徒会長の後ろにいた生徒が、おそるおそる手を挙げた。
「……あの……会長……私……あの音……好きです……」
別の生徒も言う。
「わ、私も……なんか……落ち着くというか……」
さらにもう一人。
「玉ねぎ……可愛い……かも……」
生徒会長の表情が揺れる。
「……あなたたち……何を言っているのです……これは……秩序を乱す……」
咲姫は一歩前に出た。
「乱さないのです。ただ……心に触れるだけなのです」
玉ねぎが震える。
「ぽぉん……」
生徒たちの目が潤む。
学園の“異常”が露わになる
そのとき、校舎の窓が一斉に開いた。
中から、無表情の教師たちが姿を現す。
新人が青ざめる。
「ひっ……なんですかあれ……!」
教師たちは同じ声で言った。
「――可愛い反応値、上昇。学園の均衡が乱れています。即時、鎮圧を開始します。」
ぽぷらんが叫ぶ。
「鎮圧ってなんだよ!!玉ねぎの歌だぞ!!」
ルネは震える。
「ひぃぃ……怖いのですぅ……!」
うさちぁんは屋台を構えながら言う。
「はいはい~、“鎮圧される前に食べるまんじゅう”販売開始~」
「名前が不吉すぎるニャ!!」
咲姫、立つ
教師たちが一歩前に出た瞬間、咲姫は玉ねぎを抱きしめた。
「大丈夫なのです。この子は……歌うだけなのです」
玉ねぎが震える。
「ぽぉぉぉぉん……」
教師たちの足が止まった。
生徒会長が息を呑む。
「……この音……どうして……心に……」
咲姫は静かに言った。
「可愛いは……心を壊すのではなく、心を“揺らす”のです」
生徒会長の瞳が揺れた。
こうして――学園の心は、確かに揺れ始めた。




