第6話:学園での衝突
学園の門をくぐった瞬間、空気が変わった。
静かで、整っていて、どこか“冷たい”。
新人が小声で言う。
「……なんか……視線が痛いですね……」
ぽぷらんが周囲を見回す。
「みんな、こっち見てるぞ……芋のせいか?」
ぽてまる(巨大芋)は、校庭の芝生の上で勝手に転がっていた。
生徒たちがざわつく。
「え、芋……?」
「なんで転がってるの……?」
「危なくない……?」
咲姫は胸を張って言った。
「大丈夫なのです。芋は自由なのです」
いや、自由の定義どうなってるニャ。
生徒会、登場
そのとき、校舎の方から足音が響いた。
制服の着こなしが完璧な少女が、数名の生徒を従えて歩いてくる。
新人が青ざめる。
「せ、生徒会……!」
少女は咲姫を見て、一瞬だけ目を細めた。
「……咲姫さん。また“可愛い”を持ち込んだのですね」
咲姫は微笑む。
「そうなのです。今日は玉ねぎコーラスを――」
少女は手を上げて遮った。
「ここは学園です。奇行は控えてください」
空気が凍った。
ぽぷらんが小声で言う。
「……なんだこの圧……」
ルネは玉ねぎドレスを抱えながら震える。
「ひぃ……こ、この人……怖いのですぅ……」
うさちぁんは空気を読まずに屋台を広げる。
「はいはい~、学園限定“玉ねぎ餡子まんじゅう”だよ~!」
生徒会の少女が眉をひそめる。
「販売行為は禁止です」
「じゃあ“寄付”という名目で~」
「禁止です」
「じゃあ“気持ち”という名目で~」
「禁止です」
「じゃあ“魂の契約書”という名目で~」
「絶対に禁止です」
うさちぁんが撃沈した。
咲姫、拒絶される
少女は咲姫の手にある玉ねぎを見て言った。
「それ……また“歌う”のですか?」
咲姫は嬉しそうに頷く。
「そうなのです。今日は学園に“可愛い”を届けるのです」
少女は冷たく言い放った。
「咲姫さん。あなたの“可愛い”は……ここでは迷惑です」
咲姫の表情が、ほんの一瞬だけ揺れた。
僕は息を呑む。
新人が小声で言う。
「……これが……咲姫さんの言ってた“冷たさ”……?」
ぽぷらんが拳を握る。
「なんだよそれ……!」
ルネは震えながら咲姫の袖を掴む。
「咲姫さん……わたしは……咲姫さんの“可愛い”好きなのですぅ……」
咲姫は微笑んだ。でも、その笑顔は少しだけ寂しかった。
玉ねぎが空気を割る
そのときだった。
咲姫が抱えていた玉ねぎが、静かに震えた。
「ぽぉん……」
生徒たちがざわつく。
「え……今の音……?」
「玉ねぎ……?」
「鳴いた……?」
生徒会の少女も目を見開いた。
咲姫は玉ねぎをそっと抱きしめ、静かに言った。
「可愛いは……迷惑ではないのです。まだ……届いていないだけなのです」
少女は言葉を失った。
玉ねぎがもう一度震える。
「ぽぉぉん……」
その音は、学園の冷たい空気を、ほんの少しだけ揺らした。
こうして――学園での衝突が始まった。




