第3話:涙の玉ねぎ、発掘するのです
芋ラグビーバスケの初練習(事故)から数時間後。水没社宅の床はさらに傾き、ぽてまるは勝手に転がり続けていた。
新人は壁にもたれ、魂が抜けた顔で呟く。
「……もう芋はいいです……」
「新人、まだ序章ニャ。咲姫の“可愛い”はこれからが本番ニャ」
その咲姫が、突然ぴたりと立ち止まった。
「猫二。ここを掘るのです」
「掘る!?どこをニャ!?」
咲姫が指差したのは――社宅の真下。
新人が悲鳴を上げる。
「え、えええ!?床を掘るんですか!?建物が崩れますよ!!」
「崩れないのです。可愛いのです」
いや、可愛いの万能説やめるニャ(二話連続)
咲姫はスコップを取り出し、床に突き立てた。
ガンッ!!
「いや硬いニャ!? 床ニャ!? 床掘るのニャ!?」
「掘るのです」
咲姫は真剣そのものだった。
ぽぷらんがスコップを持って駆け寄る。
「掘るの!?掘るなら任せろ!!」
「任せるなニャ!!」
しかし、咲姫とぽぷらんの勢いは止まらない。新人も巻き込まれ、気づけば僕らは床を掘っていた。
地下10mの“それ”との遭遇
数時間後。地下へ続く穴は、もはや社宅の構造を無視した深さになっていた。
新人は震えながら言う。
「猫二さん……これ絶対ダメなやつですよ……建物の下を掘るなんて……」
「大丈夫ニャ。咲姫の創造は物理法則より強いニャ」
「それが一番怖い!!」
そのとき――ふわり、と鼻を刺す香りが漂った。
咲姫が目を細める。
「……来たのです」
穴の底で、淡く光る“緑色の玉ねぎ”が揺れていた。
新人が目を丸くする。
「な、なんですかこれ……?」
僕は息を呑んだ。
「緑色の……玉ねぎニャ。涙が止まらない高級品ニャ……!」
ぽぷらんが近づいた瞬間――
新人「うわっ!?目が……目がぁぁぁ!!」
ぽぷらん「しみるぅぅぅ!!」
僕「ニャアアアアアアア!!」
全員が一斉に涙を噴き出した。
咲姫だけが、涙を流しながらも微笑んでいた。
「美しいのです……」
いや、涙で前見えてないニャ。
うさちぁん、即座に商売を始める
うさちぁんが穴の縁から顔を出す。
「はいはい~、玉ねぎ餡子まんじゅう販売開始だよ~!涙の味~!一個3NkQ~!」
「早いニャ!!まだ玉ねぎ掘っただけニャ!!」
新人は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら叫ぶ。
「こんなの……食べ物じゃない……兵器……!」
咲姫は玉ねぎをそっと抱き上げた。
「これは……歌うのです」
「歌う!?玉ねぎがニャ!?」
咲姫は静かに頷いた。
「この玉ねぎは、涙と声を引き出すのです。きっと……美しいのです」
新人が震える。
「ま、まさか……これで……歌を……?」
咲姫は微笑む。
「そうなのです。玉ねぎコーラスを作るのです。」
僕は頭を抱えた。
「また新しい文化作る気ニャ……!」
うさちぁんがメモを取りながら言う。
「玉ねぎコーラス公式CD、予約開始だよ~!」
「まだ歌ってないニャ!!」
咲姫は玉ねぎを胸に抱き、涙を流しながら言った。
「美しいのです。きっと、世界を変えるのです」
いや、世界を変える前にまず社宅の床を直すニャ。
そのとき――玉ねぎがかすかに震え、「ぽ……」と小さな音を漏らした。
新人が青ざめる。
「い、今……鳴きましたよね……?」
咲姫は静かに微笑んだ。
「始まるのです。玉ねぎコーラスの物語が――」




