第2話:芋ラグビー始めます
巨大芋“ぽてまる”が床を転がり、水没社宅の傾きがさらに悪化した。
新人が叫ぶ。
「猫二さん!これ絶対危ないですよ!!」
「危ないニャ。でも咲姫の“可愛い”は止まらないニャ」
咲姫はぽてまるを見つめ、まるで新しい玩具を見つけた子どものように目を輝かせた。
「ぽてまるは、投げても、転がしても、撃ち込んでも可愛いのです」
いや、最後のだけ物騒ニャ。
そこへ、ぽぷらんが芋の苗を抱えて走ってきた。
「猫二ー!芋の苗拾ったぞー!あとでこれ“ゴール”に植えたら面白くね?」
「ゴール!?芋でゴール作る気ニャ!?」
ぽぷらんは巨大芋を見て、またもや目を輝かせた。
「これさ、ラグビーみたいに投げて、バスケみたいに撃ち込んだら絶対楽しいって!」
新人が絶望する。
「ラグビーとバスケを……混ぜるんですか……?」
咲姫は嬉しそうに手を叩いた。
「芋ラグビーバスケ、可愛いのです!」
「可愛くないニャ!!」
うさちぁんがすかさず屋台から顔を出す。
「芋ラグビーバスケ公式ドリンク、予約開始だよ~!“ぽてまるシュート味”もあるよ~!」
「味の概念どうなってるニャ!!」
新人は震えながらぽてまるを見つめた。
「こ、これ……本当にスポーツにするんですか……?」
「するのです」
咲姫が断言する。
「芋は投げても、転がしても、ゴールに撃ち込んでも可愛いのです」
いや、可愛いの万能説やめるニャ。
ぽぷらんがぽてまるを抱えようとして――持ち上がらずに潰れた。
「重っ……!でもこれ、絶対盛り上がるって!」
新人が絶望した声を出す。
「盛り上がらないですよ!!人が死ぬ!!」
咲姫は首をかしげる。
「死なないのです。可愛いのです」
いや、可愛いの暴力ニャ(第1話から数えて五回目)
ぽてまるがゴロリと転がり、新人の足元へ迫った。
「ひっ……!」
僕は新人の襟首を引っ張って避けさせる。
「ほらニンゲン、これが芋ラグビーバスケの“初練習”ニャ」
「練習じゃない!!事故!!」
咲姫は満足げに頷いた。
「では、ルールを決めるのです」
「ルール!?」
咲姫は指を折りながら言った。
「芋を投げるのです。芋を追いかけるのです。芋をゴールに撃ち込むのです。芋を愛でるのです」
「最後だけスポーツじゃないニャ!!」
うさちぁんがメモを取りながら言う。
「よしよし~、“芋愛でポイント”を作ろう~。愛でたら1NkQ~」
「通貨をポイントに使うなニャ!!」
新人は頭を抱えた。
「もう……何が正しいのか……」
僕は肩をすくめる。
「正しいとか間違いとかじゃないニャ。咲姫が“可愛い”と言ったら、それがルールニャ」
咲姫は微笑む。
「そうなのです。世界は可愛いのです」
こうして――芋ラグビーバスケは正式に誕生した。
そしてこの狂気は、まだまだ序章にすぎない。




