ギャルゲーの選択肢
コミカライズ5話も更新
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「すごいすごいすごい! 20階層が作れちゃうポイントがあっという間に溜まっちゃった~!」
ペタちゃんがごろごろ身もだえながら歓喜している。
温泉ダンジョンから汲みだされた医療の湯を、飯困らずダンジョンに運び出し。
各国から地位の高い病人とその護衛がわんさかと駆けつけてきだして、今の飯困らずダンジョンはとんでもない状況になっている。
温泉ダンジョンも温泉の汲みだしに日々てんやわんやの大騒ぎではあるが、そのほとんどはセパンス王国の女騎士のみのため、世界各国からの護衛が集まってきている飯困らずダンジョンの状況とは比べ物にならない。
さらに主人の病気が治った後も、護衛たちは帰り際に飯困らずダンジョンでドロップ品を狙っていくのだ。
もっとも病気治療に来ている何グループかはそんな悠長な余裕など持てる状況にない。
セパンス王国の護衛をつけてもらうには希望者が多すぎて人数が足りず、自前の護衛のみで突き進み、19階層に至るまでのモンスターの強さに普通にあらがえずに散っていく姿も多々見られた。
しかし、そんな無体な状況もペタちゃんにとってはダンジョンの盛況要素のひとつでしかない。
むしろ久々の生命ポイント大量ゲットといったところだろう。
「ああ~、マスターの言ったとおりだわ、医療の湯は大盛況になるって。ねえねえマスター、温泉ダンジョンも20階層作れる?」
「んん? 作れるけど、作るのは医療の湯の大騒ぎがひと段落ついてからにしたいなぁ、次の湯も確実に大騒ぎになる効果だからね」
「じゃあ飯困らずダンジョンを先に20階層にしてもいい?」
「それはいいけど、一緒に作らなくてもいいの?」
「……人間の魂をこれ以上混ぜ込んだら、心がもっとぐちゃぐちゃになりそうだから……あれは、もうやめとくわ。
人間の好きって感情を感覚で知りたくてマスターとの魂の融合をもっと深めたかったんだけど、少し融合量が増えただけであんなに心が苦しくなるなんて思わなくて」
うーん、あれは融合量が増えてから最初に感じた強い感情がアウフちゃんに対する嫉妬だから、タイミングが悪かっただけのような気もするけどな。
まあ、こっちとしてもあんまりダンジョンコアの感覚が思考に混ざるのも困りものなので、中止してくれた方がありがたくはある。
医療の湯がてんやわんやな状況かつポイントはギリギリなんだけど、温泉ダンジョンの20階層も作っちゃう~? みたいなペタちゃんみたいな思考が俺の心の片隅にあるしな……。
「……なんで好きって感情を知りたかったの?」
「私、マスターが好きなの、大好き!
私の作った8階層を超えてくれた時からずっと好き。10階層を超えた時にはもうマスターのことが世界で一番好きになってた。
ダンジョンを大きくしてくれるっていうダンジョンコアとしての好意を、これまでずっとマスターは私に与えてくれてた。
だからマスターも私のことが好きなんだってずっと思ってた。
でも、ダンジョンコアの好きと人間の好きには、微妙なズレがあるような気が最近してきたのよ」
「あ、ああ、うん。そうなんだ」
あまりにストレートな好き好きの言葉の連続に少しむずがゆくなる。
それはいいが、俺がダンジョンを大きくし続けることがダンジョンコアへの好意って、なんかおかしくないか?
ここに呼び出された状況で、ダンジョン大きくしようとしないやつなんてまずいないだろうし。
そもそもダンジョンを大きくするために俺を呼び出しておいて、大きくできたから大好き、この人は私に好意を向けてくれているに違いないって、どんなヤンデレ思考回路だよ。
「それで、人間の好きも理解しようと観察をしてたんだけど、どうしてもよくわからなくて」
つまり俺のために人間の好きも理解しようとしてくれたということか、健気でかわいいね。
「で、観察していてわかったのは、マスターは膨らんだおっぱいを見るのが好きなのは確実だということね」
…………。
「でもね、それを理解するために何度も膨らんだおっぱいを見てても全然何もわからないのよ。
それで、魂の融合を深めて人間の感覚を入れてもそれはわからないままで……。でも、代わりに感じたのが……どうして……私のおっぱいは……小さい……。
小さいの……ってこと……で……うう」
突然声のトーンが大きく下がって、ぽろぽろと涙を流し始めてしまった。
小さいというダンジョンコアへの地雷ワードと、小さいと俺に好かれる要素がよくわからないけど減るかもしれないといった要素が絡んで悲しくなってしまったのだろうか。
本当に、人間の感情が良くない方向に作用してるなペタちゃんってば。
とりあえずペタちゃんを抱き寄せて、頭をぽんぽんと撫でながら慰めておく。
大丈夫、ちっさいのはそれはそれで好きだから、と言ってやろうとも考えたが、小さいと言ってしまうとペタちゃんは機嫌を悪くするので思いとどまった。
というか、前にも似たようなこと言われて、小ぶりな胸も好きだからみたいなことを言ったら、普通に睨まれてた気がする。
俺としては別に小さくても構わないんだけど、そう正直に言えないのが困る。
「大丈夫! ペタちゃんは大きい! なにしろこれから20階層の超巨大ダンジョンになるんだからな!」
「!! そうよ! 20階層よ! ずっとず~っと夢見てた超巨大ダンジョンになれるのよ!
私のダンジョンの大きさに比べたら、あんなちっぽけな肉なんて砂粒も同然!」
一瞬でペタちゃんの目がパァッと輝いて、興奮した様子になる。
とてもいい印象を与えたみたいだぞ。
ちっさくても俺は好きだよ、と言っていたらきっと好感度はマイナスだっただろう。
……ギャルゲーの選択肢かよ。
「ああ、20階層……私が20階層になるの……。マスターが、20階層にまで私を連れて行ってくれたの。
もう好きなんて言葉じゃとてもあらわせないのよ。
どうしたらいいの? 何をしたら人間にもっと好きを伝えられるの?」
……そうだなぁ、その答えはだなぁ、うへへ、ぐへへへへ。
……という回答にしかならないので、俺からその答えを教えてあげるのは道義に反する。
う~ん、ここはどう答えてあげればいいのだろうか?
ギャルゲーの選択肢状況が続くなぁ。
「俺から要望を出してその通りにしてもらうのは違うからね、答えはペタちゃんが自分で見つけてよ」
うん、極めて紳士的な回答をしたのではないだろうか。
「それがわかんないから、魂を混ぜ込もうとしたんだけどなぁ……」
好感度は据え置きの選択肢だったようだ。
「それじゃ、20階層作るわよ~~~それっ!」
~完成まで、あと354時間42分~
「えへへ、えへえへ、355時間後……355時間後に私は超巨大ダンジョンなんだ……うへへへ」
モニターを見つめながらペタちゃんがうへうへと笑っている。
「まあ、この階層で満足してちゃ駄目だよ」
「え?」
「俺はペタちゃんを世界最大のダンジョンにまで育て上げる、武具ダンジョンを超える階層のダンジョンにまでするつもりだからね」
「…………」
あれ? ペタちゃんの反応がないな。モニターの方を向いたまま固まってるぞ?
期待してるわよ~マスター! とか言ってくれるかと思ったのに。
ここの選択肢は、20階層になった喜びを素直に分かち合う方がよかったのかな?
…………。
ペタちゃんがずっと動かない、おーい、どうしたんだ?
前に回ってペタちゃんの顔を見てみると、顔を真っ赤にして胸のコアを押さえつけていた。
「……コ、コアが……魔力がドキドキして安定しない」
「どうしたのペタちゃん」
さっきまでの無邪気に好き好き~と言っていた表情が一変して、赤い顔でこちらを見つめる女の子の顔になっている。
君を世界最大のダンジョンにしてみせる、って言葉は少々好感度が上がりすぎる選択肢だったのかな?
……いや、これはもしかすると、人間の感覚で言えば、好感度が上がりすぎるっていうより。
付き合ってくださいとか、結婚してください、に匹敵する、好感度を上げきった後で言う最後のワードだったのかもしれない。
なお後から知ったのだが、この時飯困らずダンジョンと温泉ダンジョンでは大地震が発生し。
「あああああ、温泉が、汲んできた温泉がこぼれるううう!!」「いやあああー! 鉄道模型が! エネルギー値を計測中の鉄道模型があああ!」「お嬢様~! 伏せてくださあああい!」「うわあああ、ほとんどこぼれたああああ! また汲み直しいいい!?」「ああああ~、また量り直しじゃないの~!!」
などなど、各地で酷い被害を出していたようであった。
なんとも、はた迷惑な乙女のドキドキ感もあったものだ。







