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伯父はまたぷかりぷかりとパイプをやった。

私はこの驚愕の話にすっかり引き込まれていた。

「その村は一体何なの?

逆上した村長ならまだわかるけど、他の人達まで伯父さんを殺そうとするなんて変だよ」

それからこう続けた。

「六ッ幡村の歴史に終止符が打たれたってそう言う事?

皆捕まったから?」

そう聞いておきながら、私は何となく伯父の返答が私の問いを否定するものな気がした。

私の直感は正しかった。

「いいや、六ッ幡村の誰も捕まってはいない。

あの集落は消えてしまったんだ」

「消えた?」

「ああ、もはやきれいさっぱり何一つ残ってはいない」

              

私は体調が万全になってから幾人の有志を引き連れて、集落へと再訪した。

しかし、いくらしらみつぶしに山狩りをしても集落はおろか人家すら見当たらない。

あの国道沿いの家でさえどこにも見つからんのだ。

私は狐に化かされた気分だった。

あの夜から三月みつきも経っていない。

それなのに開墾した土地さえ見つからないとは、、

__結局、私は当時流行りであった精神疾患で幻覚をみていたのだと判断された。

その後しばらくは、家の者の計らいで静養という名の監禁状態にあった。

外に出たいのだと伝えると、一人小狡(こずる)かしそうな小男をおともにつけられてそいつが始終私の行動に目を走らせるのだ。

「旦那、そっちはいけませんで」

「ああ、いけません。なんで切符売り場なんぞに用があるんでしょう?」

「旦那」

「旦那」

「__旦那、もうお帰りになった方がよろしいかと」

__あれでは犬の散歩となんら変わらん。

家の者の言い分では、私を一人にすればまた気の誘うままふらふらと何処かへ行ってしまうだろうとのことだったが、あれは建て前に過ぎん。

この機会に私という人間から本能を奪おうとしたのだ。

野犬が飼いならされてきばを失うのと同様、私の立派なアイデンティティである放浪癖を失わせようと画策したのだ。__無論その奸計が成功する事は無かったのだが。

まあ、そんな話はどうだっていい。

私は家に軟禁されている間も、じっとあの集落の事を考えていた。

当然だ。このように消化不良な状態で投げ出されてどうして忘れる事が出来よう。

他人にどう言われようと、私は自分が幻何ぞ見ていない事は分かっていた。

でなければ、私はどうやって2か月もの間生活していたのだ。

あの村は実在していたのだ。今はなくとも、半年前までは数百年の歴史をようする集落があった。

六ッ幡村は確かにあったのだ。

__しかし、時の流れと言うものは恐ろしい。

どんな人間の説得やなだめかしよりも人の意識を容易に塗り替えてしまう。

数年が過ぎた頃には私はあれほどの体験をしたにもかかわらず、すっかり村の事を忘れていた。

幼い頃に見た風変わりな夢という立ち位置ぐらいにまで六ッ幡村は私の中で追いやられていた。

もし、その後も何もなければ本当に私の記憶の中からもあの村は消滅していたのかもしれない。

しかし、そうはならなかった。

ある日私は村の関係者を名乗る人間からの訪問を受けた。

あの村が確かに実在したこと。そしてあの村の実情、正体を教えられたのだ。

それは背筋の凍るものだった。


待て待て、そう焦るな。

物事に順序があるように、物を語るのにも順番がある。

あの夜__私が六ッ幡村から逃げおおせたあの夏の終わりの一夜をきちんと語るには少し話を遡らなければならない。

そう、ざっと二千年程前に__

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