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40 手毬草ー16

 馬車が王宮に到着し、メイドによって会場になっている温室まで案内されるとそこにはすでに複数人の子息令嬢が到着しているようで、一部に人だかりができているのでそこにはこの中でも高位の存在が居るのだと予想がついた。

 弟もその事には気が付いたようで、わたくしに目配せをすると早々に人だかりのひとつにさりげなく入っていった。

 わたくしはどうしたものかと考えていると、弟が動いたことにより、わたくしの存在に気が付いた令嬢たちが集まってきた。


「ごきげんよう、ベアトリーチェ様」

「今日はお招きありがとうございます」

「ごきげんよう皆様。ふふ、お招きしたのはわたくしではなくティオル殿下ですわ」

「それでも、女性側の参加者を決めたのはベアトリーチェ様ではありませんか。私どもはこれはもういよいよと我がごとのように嬉しく思っております」


 そう言う令嬢たちの目は純粋に輝いており、わたくしがティオル殿下の婚約者になる事を疑っていないようだ。

 『誘惑のサイケデリック』のわたくし(ベアトリーチェ)もこのように期待をされてティオル殿下の婚約者になったのだろうか。

 正直なところ冗談じゃないというのが本音だ。

 王太子の婚約者になれば、王太子妃の教育があるだろうし、それに並行して公務だって発生してしまう。

 国の機密にも触れる事になり、そうなってしまえば逃げる事は難しくなるだろう。

 悪役令嬢にならなくても王太子の気が変わって婚約破棄になってしまえば、それこそ一生貴族牢への監禁か、苦しみのない毒を与えられての服毒死だろう。

 ……どちらも嫌だな。

 前世で喪女だったこともあり、婚姻に対して後ろ向きというだけでなく、王太子の正室だけでなく、貴族の正妻となれば夫が愛人を作っても笑みを浮かべて受け入れなければいけない。

 庶子を受け入れるかは家族での話し合いにはなるが、政略同士なのだからそこに深い愛情など期待してはいけないのだ。


「ベアトリーチェ様。今回のお茶会はなんでも王太子としての資質を見るためのものだそうですね」

「まあ、そうなのですか?」


 それは知らなかった。単にティオル殿下がわたくしとお茶会がしたくて理由つけて強引に開催したんだと思っていた。


「ほら、噂ですが王女殿下のお2人はあまり王太子になる事に乗り気ではないそうですし、実質王族の貴公子4人の中から決まるという事になりますでしょう? その中でもやはり最有力候補はティオル殿下ですもの」

「そうですよベアトリーチェ様。このお茶会は陛下たちも注目していると聞きました」


 令嬢たちの言葉に思わず苦笑しそうになり、咄嗟に扇子で口元を隠した。

 確かにある意味国王陛下も注目しているかもしれないが、それはあくまでも王太子候補が集まるお茶会だから注目していると言ったほうがいいかもしれない。


「皆様、あまりそう言った事を意識していてはお茶会を楽しむことは出来ませんわ。せっかくティオル殿下が開いてくださったのですから、このお茶会を楽しみましょう」

「……そ、そうですね」

「確かにベアトリーチェ様の言うとおりですね」

「え、ええ。ティオル殿下のご好意を無碍にするような発言をしてしまい申し訳ありません」


 その変わり身の早さに思わず苦笑してしまう。

 彼女たちはどうやらわたくしの発言を、「ティオル殿下の側妃になりたければ、無駄な行動をして不快にさせるな」と言っているようにとらえたようだ。

 わたくし、そんなことは一切言っていないのだが、深読みをすることは貴族にとっては息をするように当たり前の事なので、間違った深読みも時には起きてしまうのだ。

 そうは言うものの、わたくしはあくまでもお茶会を楽しもうと言っただけなので、深読みをした令嬢たちを追求するような真似をしなければ発言に責任はない。

 この場合、間違った深読みをしたほうが悪いのだ。


「それにしても、男性側の参加者は存じ上げませんでしたが、留学生の皆様も招待されているのですね」

「そうなんです、流石はティオル殿下ですよね。友好関係の広さには驚かされてしまいます」

「これは噂なのですが、エメリア殿下の輿入れ先をさがしているのではと……」

「まあ、滅多なことを言うものではありませんわ」

「も、申し訳ありません」


 実際にエメリア殿下の輿入れ先を探すのもかねてのお茶会だったとしても、その場合わたくしはその事を承諾して人選をしたことになる。

 そんな王家の機密に関わるとか冗談じゃない。

 もっとも、今回招待されている留学生を見れば、エメリア殿下の輿入れも考えているというのはあながち間違いではないだろう。

 エメリア殿下もそのつもりで今回のお茶会に参加するのかもしれない。

 ふむ、もしかしたらエメリア殿下はわたくしが声をかけた時からその事を考えていたのかもしれないし、さりげなくティオル殿下に子息側の招待客に留学生を入れるように提言していてもおかしくはないな。

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こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。

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