表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
39/232

39 手毬草ー15

 ジョセフ様の成人祝いの舞踏会から2週間後。わたくしと弟は久しぶりに王宮へ向けて馬車を走らせていた。

 理由はもちろんティオル殿下が主催するお茶会に出席するためだ。


「クラスの令嬢の中には、今回のお茶会に招待されなかったことで側妃候補になる事を諦め、本格的に王族以外の婚約者を探し始めた人もいるんですよ」

「そうですの? それは悪いことをしてしまいましたわね」

「ちょうどいい機会だったと思います。彼女たちもずるずると婚約の機会を逃すのも問題だったでしょうから」


 年頃の子息令嬢の間では、今回のお茶会はティオル殿下並びに王族の婚約者候補を決定するものだという噂があるらしく、それに従うように招待されていない子息令嬢は確かに婚約者を決めようと水面下で動き始めたらしい。

 わたくしにもその情報は入ってきているけれども、招待できなかった令嬢は確かに側妃候補としても若干の問題というよりも、何かが足りない人ばかりなので、これを機会に新しく婚約者を探してくれるのなら、それはそれでいいのかもしれない。

 王や王太子用の後宮はそれなりに広く作られているとはいえ、あまりにも側室を迎え入れていては好色と言われてしまうのは言うまでもなく、正室が選んだ側室は子供を残すことも重要だが、公務も行わなければいけないので実のところ着飾って楽しく遊んでいればいいわけではないのだ。

 着飾って楽しく遊ぶのが許されるのは、なんの権力も持たない王が選んだ愛妾のみ。

 それも実家からの支援と、王の私財からその遊興費は支払われるため、実家の後ろ盾があまりなければその遊興費も王のさじ加減となってしまう。

 なんといっても王の私財はしっかりと管理されており、愛妾に割り当てられる遊興費は実際のところ細かく領収書が発行され、記録される。

 それはそうだろう。

 王が個人的に持っている領地や宝飾品、絵画などの芸術作品の管理もただではないのだ。

 それを手配するのは国王個人という体裁がとられているものの、実際のところは王宮で働いている文官が手配している。

 領地の管理など、不正が無いように、また、王族としての見栄のため困窮しないように適宜調査を入れなければいけないのだから、公務で忙しい王がそこまで気を使ってしまえば過労で倒れるというものだ。

 それに、王の個人的な領地は王太子が決まってしまえば基本的にはその大半がそのまま王太子に譲られる。

 それは王太子になった者が試験的にその領地を収める事が出来るかを試すもので、それが王になるための最終試験とも言われている。

 もちろん王が管理する領地は各地に点在しており、それを視察するだけでも苦労するのだが、それもまた試練と言えるのだろう。

 空間魔術を使用できる高位の魔術師が居れば転移が可能なため、移動距離こそ短縮できるが、転移魔術は使用者の魔力に多大な影響を与え、転移後しばらくはあまり行動が出来ないというリスクもある。

 もっとも、わたくしのように精霊魔法を使っての移動であれば、それは完全にわたくしの魔力を食うだけなので、わたくしだけが移動する分には何の問題もない。

 強いてあげるのであれば、わたくしの魔力と相性が悪い人がわたくしの精霊魔法で転移しようとするとはじかれてしまう事だろうか?

 精霊魔法による転移は精霊界にある道を使うため、相性が悪い魔力はどうしてもはじいてしまうのだ。


「それに、ティオル殿下が今回のお茶会で姉上に女性側の招待客を決定させた事と、本格的に王太子選抜が開始された時期が重なったせいですね。子息令嬢の間ではやはりティオル殿下が王太子になり姉上がその婚約者になる事が決定したのではと噂されています」

「そういう噂もありますわね。わたくしにはそのような打診はまったくありませんのに」

「姉上は慕われていますし、王太子の婚約者になっても周囲が騒ぎ立てるようなことはないでしょう。まあ、ある意味側妃になりたいといい寄ってくる人はいるかもしれませんけどね」

「それもまた面倒ですわね。なんとか王太子の婚約者にならずに済む方法はないものかしら?」

「ぼくとしては姉上はずっとシャルトレッド家にいてくれて構わないのですが、王太子の婚約者にならなくても姉上は魔術学院を卒業したら家を出てしまうつもりなのでしょう?」

「それについては何度も言っていますわね。S.ピオニーのこともありますし、家を出て何かをすることは決定していると思ってもらいたいですわ」

「それは寂しいですね。せめてぼくが魔術学院を卒業するまで待ってほしいです。いえ、結婚するまででしょうか」

「ふふ、それはまた曖昧ですわね。グレビールは政略婚を望んでいるというのはお父様達に伝えているようですが、お父様達から婚約者の打診はありましたの?」

「あるといえばありますね。沢山いただいている釣り書きを見せてもらい、その中からピンとくる令嬢を選ぶようにと」

「そうですの。学院に通うご令嬢には何か感じる方はいませんの?」

「そうですね、親しくしている人はいますが……生涯を共にとなるとまだ考えられませんね」


 そんな感情の中、ディアティア様は悪役令嬢になってしまうかもしれないと考えると、なんというか切ないものがある。

 これで婚約しているというのであれば、まだ悪役令嬢になっても納得がいくというかそのほうがしっくりくるのだが、ディアティア様が悪役令嬢になるのはあくまでも親しい友人を盗られた事への嫉妬がきっかけだ。

 そこには恋心があるかもしれないが、あくまでもかもしれない(・・・・・・)であり、公式の発表では友情の輪にひびを入れたヒロインを憎んでの行動とある。

 弟との間に恋愛感情もないのに、友情の嫉妬から悪役令嬢になってしまうのは何とも切ないものがあるな。

よろしければ、感想やブックマーク、★の評価をお願いします。m(_ _)m

こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 設定が細かく作り込んであって、しっかりした作品だと思いました。 [気になる点] 人物紹介には「ディアティア」とありましたが、時々この話し以外にも「ティアディア」になっています。 [一言]…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ