5 厨房にて
騒ぎの波が伝わっていく様子が上手く伝わればいいなと思います。
臨場感を出すためにどんどん人が増えていく・・・
探索者ギルド併設の居酒屋【小麦の雫亭】の昼は穏やかだ。
食堂も兼ねているので、もちろん昼食を摂りにソコソコ客足もあるのだが、何と言ってもギルド併設である。クエストを達成して探索者が流れてくる8刻からが本番だった。
料理長のアントニーが今日も恐らく緩やかであろうランチタイムの準備を厨房の中でボチボチ進めていると、給仕のリタが駆け込んできた。
「トニーさんちょっと。」
若干声を潜めながら、
「あっち見てあっち。」
案内受付の方に流し目する。
美人の流し目は絵になるな・・・と益体もない事を考えながらそっちを見てみると、
あれは・・・
「アランじゃねーか。帰って来たのかワイルドイーター。」
こっちに気づいて手を振ってくるアニータに手を振り返しながら
「今日も来ますかね・・・コレは」
リタが、やや緊張感を含んだ声を周りに気づかせない様に少し引き攣った笑顔で問いかけてきた。
「あー、来るかもな・・・って言うか来るなこれは。」
「見てみろよ、アランの面がツヤツヤしてるぜ。やり切った満足、って顔だありゃ。」
「確かにテカテカしてますね、準備しときましょうか。」
「そうだな、準備しとくか。」
向こうでキャベツを千切りにしている下っ端のジッタに
「ジッタ!キャベツは一旦置いといていいから使いっ走り行ってくれ。」
「エマージェンシー、全員集合掛けろ!ワイルドイーター警報だっつって伝えて来い。それで分かるから。」
と、伝言に走らせた。
向こうではリタが給仕の新人に
「トワちゃんおいでー、ちょっと今のうちに賄い食べといで。」
「はーい!」
「お?元気ねいいね。今日はこれからちょっと忙しくなるかも知れないから、しっかり食べといで。」
とか言いながらこっちに連れてきた。
リタ、お前も食っとけ。
リタとトアに賄いをよそいつつ
そうだな・・・俺も食っとくか。
と、思った。
「お前らも今のうち食っとけー、この後は修羅場になんぞー。」
ジッタと他の連中は間に合うかな?
多分始まったが最後昼飯食えなくなるぞ?
飯を食って下ごしらえの続きに戻ろうとしていると、魔石カウンターのザザがやって来た。
「時間ないので単刀直入に言います。アントニーさんワイルドイーター帰還のことは?」
業務連絡ってヤツだな?
「見てた。し、一応応援も呼んである。」
「さすがアントニーさん。それじゃこれ見ておいてください。魔石代は経費で落としますんで。」
「・・・今回もありますよ。」
と記憶石を渡してきたので
「わかった。ありがてぇサンキューな。」
と、礼を言って見送った。
クルっと振り返り集まった連中を確認した後、
「全員ちゅーもーく!」
「今回もあるそうだ。中身確認しとくぞー。こっち集まれ。」
食堂のホワイトボードに記憶石を投影モードで活性化する。
ボードには木の陰に隠れているアニータが写っていた。
少し送ってまずは食材の外観を観察しておく。
・・・デケェな、何だこれは猪鹿か?
なるほど、これはやっぱり始まるな。確定だ。
それじゃ次は飯テロ部分を・・・
「油凄いな、油とるの専任させるか。」
「ジッタ。今日はお前油係だ。ひたすら油とってろ。」
で、後は・・・
「飯テロの後だ。多分今日は猫も杓子も揚げ焼きだ。」
「かまど6個は揚げ焼き専用で行くぞ。1~6番は揚げ焼き用だ。」
打合せしていると魔石を見終わった連中が厨房に張り付きだした。
「一斉にしゃべっても分かんねぇよ。こっちにゃーまだ肉は回ってきてねーよ。」
「まだ物はあっちだあっち。あっちいけー。」
肉に集る亡者の群れを追い払う。
「ジッタちょっとあいつ等食い止めてろ、うるさくて打合せができん。」
「今の見てたな?張り付いてくるヤツはあっちに押し流せ。」
ジッタを餌にサッサと打合せするか。
「さー今のうち準備だ、肉届いたら脂身ところはジッタに回せ。」
「ジッタは油取って壺ん中にぶち込んでろ。」
亡者を食い止めるジッタにも背中越しに指示。
「今日は鉄プレートだ。鉄プレート全部持って来てここに積んどけ。」
「あとは・・・そうだなキノコと人参だな。人参は下茹でして5ミルで輪切り2枚」
「キノコは解したメイタケ半株、どっちもソテーで仕上げだ。」
「メイン揚げ焼きは最初に塩、あれだけ油乗ってたら素材で勝負できるだろ。」
「ブツ届いたら2,3枚試すから見て覚えろ。」
「肉削ぎ落すのに一人張り付いとけ。」
どんどん指示を出す。
「あ、霜箱どうなってる?空いてるか?」
「古くなったのは、なんか作ってでっち上げろ。お通しの大盤振る舞いだ。」
「あのサイズだと絶対溢れるからスペース確保しろ。」
・・・向こうに行っていた騒めきがだんだんこっち戻って来た。
解体んトコの親父とやり合ってるな。
来るぞ・・・これはそろそろ押し寄せてくる。
「てめーら気合を入れろー!戦争だー!総力戦だー!肉祭りだー!」
テンポ重視するため記述は見送りましたが、厨房には色々魔石を利用する場面がありそう。
あと機会があれば、もっと詳細に料理に焦点をあててみたい。
今までフォーカスされていない話の本筋とは関係ない描写にスポットライトあててみたいとです。




