6 居酒屋にて(1)
書いてるとどんどん長くなってきたので、今回は2話に分けました。
みなさんこんにちわ。
わたしはトワって言います。
リアーネの街の探索者ギルドの中にある居酒屋【小麦の雫亭】で給仕係をやってます。
面倒なんでみんな小麦亭って呼んでいます。
まだ働き始めて二月なので色々失敗もしちゃうけど最初の頃より慣れてきたんじゃないかなって思います。
今日は皆さんにギルドのみんなを紹介しながら、小麦亭での一日を見ていけたらいいなと思います。
まずは案内係のオリーさん。
初めてギルドに来た人への案内とかやってて、これをやるにはどこへ行けばいいの?って時にはオリーさんに聞けば丁寧に教えてくれます。
カッコ可愛い大人のお姉さんって感じ。
わたしはいつもアワアワしてるので、ちょっと憧れます。
あとギルドに来た人の事をすごくよく見ていて、気づいた事とかあったらこっそり教えに来てくれます。
今も二人連れの探索者の人が入って来た時に、リタさんに何か目で合図してました。
リタさんが指でおーけーしてます。二人して肯いてます。
なんであれで伝わるんでしょう?不思議です。
あ、この人はリタさんです。給仕係のエースでわたしの先輩です。
一気にいっぱい注文されても一回で覚えちゃうし、違うテーブルのお料理も全部一緒に持ってっちゃいます。
笑顔が素敵です。いつも色んな人に声をかけられてます。
すごく人気者です。
あと凄くモテます。夜とかはよく男の人に言い寄られてますけど、笑顔でするりとかわしてます。
凄いです。わたしもいつかリタさんみたいになりたいな。
リタさんはオリーさんと目で何かやりとりしたあとサッと厨房に駆け込みました。
走ってるのにバタバタした感じじゃない。凄いなぁ。
今厨房でリタさんとお話してるのはアントニーさん。
お料理係の一番偉い人です。
いつも賄いを作ってくれます。アントニーさんが作ってくれる賄いはとっても美味しいです。ほっぺた落ちちゃいます。賄いは毎日違うものが出てきます。
色々試して新しい料理を考えてるんだよって言ってました。あとは材料が痛まないように古くなる前に使ってるんだとか。小麦亭のお料理はいつも新鮮です。
そして向こうでキャベツを刻んでいるのがジッタくん。
ジッタくんも三月前から働き始めたみたい。一月分先輩です。
凄い速さでキャベツを刻んでます。お母さんより早いです。まだ見習いなのに凄いなぁ。
わたしも負けていられません!
もうすぐランチタイムです。
お掃除は終わったので、テーブルを整えたりソースやドレッシングの量をチェックしたり、お水の準備をしたり。
でも結構知らない間にリタさんが先にやっちゃってることが多いです。
あんなにお客さんとか厨房の人と話してるのにいつの間にやってるんだろ?不思議です。
アントニーさんに何か言われてジッタくんが外に走っていきました。
一瞬目が合ったので手を降ったらペコっとして行っちゃった。
さっきのオリーさんとリタさんみたいに目と目で通じあうのカッコいいなぁ。ジッタ君ともあんな感じにできる日が来るのかな?もっと仲良しにならないとですね!
そんなことを考えてるとリタさんがやってきました。
「トワちゃんおいでー、今のうちに賄い食べといでー」
「はーい!」
「お?元気ねいいね。今日はこれからちょーっと忙しくなるかも知れないから、しっかり食べておいでー。」
リタさんと厨房に行くと、
「お前も食っとけ」
ってアントニーさんがリタさんの分も装ってくれたので一緒にお昼です。
というか、調理係の人たちもみんな一緒に食べ始めました。
今日はいつもとなんか違うなぁ。こんなに沢山の人と一緒にご飯食べるのは初めてで、ちょっと楽しいです。
今日の賄いはシチューなんですけど、浅めのお皿に薄く引いたシチューの上に大き目の炙ったチキンが載ってます。その上から焦がした感じの濃いめのソースがZ字に掛かってます。凄く香ばしい香りがします。あとは昨日の残ったパンの表面を軽く炙ったの。おいしそうです。
みんなばらばらにお祈りしていただきます。
半分くらい食べたとこでジッタくんも戻ってきました。
手を降ったら今度は振り返してくれました。
さっきは忙しかったもんね?ちょっと仲良しになれたかな?
シチューおいしい・・・パンもいっこ食べよかな?やっぱやめとこうか、悩ましいです。
眠くなっちゃいそう。
調理係りは全員集合です。
さっきリタさんが今日は忙しくなるかもって言ってたけど本当みたい。失敗しないかちょっとドキドキしてきました。
食べ終わったら今度はみんなでランチの準備です。
テーブルも全部拭き終えたところで魔石のお店のザザさんがやってきました。
厨房の中でアントニーさんと何かお話しています。
ザザさんは誰にでも丁寧な話し方をする人でとても真面目な感じの人です。いつも落ち着いています。
ザザさんがすぐに戻っていったあと、アントニーさんが打ち合わせだって言って小麦亭チームを全員集めました。料理の人だけじゃなくって給仕のわたしたちも呼ばれるのは初めてです。
リタさんとアントニーさんは二人でいつも打ち合わせ・・・というかお話してお仕事の確認とかしてるの見ますけど。いつもは何かあったらあとでリタさんが教えてくれます。
みんな集まるとアントニーさんがホワイトボードを引っ張ってきて裏返しにしました。
なんか記憶石をみんなで観るみたい。
いつもお仕事してるみんなと魔石シネマ観るみたいで変な感じ、なんだかウキウキしちゃいます。
アントニーさんが記憶石を操作するとホワイトボードに映像が映りました。
あっ、この女の人さっきオリーさんとハイタッチしてた人だ。
「まずは食材確認すっぞー。えーっと、もちょっと先か?」
アントニーさんが映像を早送りすると、
わっ・・・なんかすごくないですか?
小さめのお家くらいの鹿さんが出てきました。
すごい勢いで向かって来たので思わず目を閉じちゃいました。
目を開けたら、もう鹿さん倒れてました・・・何がどうなったのか。
小麦亭のみんなもビックリしてます。
アントニーさんが進めたのか、いつの間にか場面が変わっていました。
今度は焚火の上でくつくつお鍋が煮えていて、トロトロのスープにとろとろお肉が出てきました。
わぁ・・・おいしそう。
うっとり見ていると荷物からごそごそフライパンを出して・・・
これはさっき一緒にいた男の人でしょうか?
白い塊の大きな脂を、隣にあった別の焚火の火にかけて溶かしていきます。
こっちの方が大きな焚火で、瞬きしてる間にどんどん脂が溶けていきます。
フライパンの底に脂がたゆたゆしてます。
少し薄めにお肉をスライスして何か振りかけたあと、うっすら白い粉を塗したモノをお鍋から拾ったキノコと一緒に脂に泳がせます。沈んでは無いけど半分くらい浸かってる感じ。
じゅっわぁぁぁぁああっ
って音を立ててお肉から湯気が出てます。
すぐに表面がいい感じの色になってきました。
これは・・・なんていうかダメな人になってしまいそうです。
はー・・・・っとため息をついていると
隣にいたリタさんが肩をつんつんしてきました。
「トワちゃん・・・よだれ出てるよ?」
はっ・・・はずかしい・・・
画面を見るとさっきの女の子も涎出てました。
トワちゃんが見ている!
ちょっとジッタくん目線のお話も書いてみたくなった。




