1 今日の晩御飯
お詫び:お話が分かりやすく繋がるように順番を変えました。
遠くでガサガサと音がする。
なだらかな斜面が続く山間の、まばらに生える木々の向こうに見える大きな岩の影からのっそりソレは顔を出した。
「ねー、アレちょっと大きすぎない?たぶん頭抜けないよ?」
茂った低木の陰から低く押さえた女の声がした。
頭しか見えてないが、ゆうに11メルトは超えるサイズの猪鹿である。見た目は鹿だが頭の中身は猪だ。危険と察知しなければあの巨体で突っ込んでくる。
「あのサイズなら多分逃げないっしょ。釣ったら一旦隠れて、いなしたら足止めヨロシク。」
向かいの茂みから返事が返って来る。
「はー、、、行くのね・・・もうちょっとこーなんて言うか、小っちゃいのでよかったんだけどなぁ。
あー、もういくよー?おっけ?」
向こうをチラッと見ると満面の笑顔でハンドサインが返って来る。
(はぁー、そんなに食べたいんか。まぁ旨そうだけどもさー。)
「しゃーないいくかー」
ボソッと呟いて脱力し、そっと弓を構えた。
そろそろ陽も傾いて空がゆっくりと赤く染まっていく。
今日はいい天気だ、空には雲一つない。
雨が降らないのは良いことだ。のんびりご飯が食べられる。
あれから猪鹿の現れた方角に少し下ると沢があった。
寝床も準備して我々の目の前には小さめサイズの焚き火がある。その脇に積んだ石の上に猪鹿のブチ込まれたお鍋が鎮座しているのである。
猪鹿は見た目はともかく生態が猪に寄っているせいか普通の鹿より脂がノッている。しかもサイズがサイズである。寝床を準備する前から弱火で煮込んでるのでトロトロである。
そして目の前に座ってるこの男、どっか行ったと思ったらキノコを拾って来た。
きのこ・・・大丈夫か?
と、思わないでも無いけど野外での拾い食いにとても造詣?が深くキノコも例外ではない。遠くで大丈夫だ問題ないって声が聞こえた気がした。
大物仕留めたしずっとお預け状態なのもあって正直もう辛抱堪らくなってきた。
「ねー、もうそろそろいいんじゃ…」
と声をかけたら、なんか向こうでゴソゴソやり出した。
アンタそれ何して・・・スキレット出しおったー。
すこし深めのスキレットに多めに採れた脂を溶かして揚げ焼きにしていく。
お鍋をトロトロ煮込むために焚き火小分けにしたのかと思ってたらこの為か。計画的犯行か!
もうやめてお腹が限界なんよ。
こうして今日も夜が更けていくのである。




