10 喫茶店にて
特に目立ったファンタジー要素はありません。
遠征帰りの街で過ごす日常をお楽しみください。
俺はアレン。
隣にいるアニータとワイルドイーターっていうPTを組んで探索者をやっている。
未踏破区域調査のためにメイヤールの街を出発し、未踏破区域であるオーウ山を抜けて今日の正午少し前にこのリアーネの街に到着した。
今ちょうど遠征中に確保した獲物とか素材を探索者ギルドに卸したところで、身軽になったしお昼も回ってお腹も空いたしで今夜の寝床を探す前に一先ず昼飯でも・・・と考えて街中をブラついている。
「で、何食おうか?」
「お肉以外でー、お肉あきたー」
「おう、そうだな。腹は減ってるけど、今日はこれ何腹かな・・・」
「そうそう、お腹減ってると悩むよねー。」
「今日はコレ!って日もあるんだけど、今はもう何でもいい。・・・お肉以外なら。」
遠征中は肉とか野草、果実とか、現地で確保できるものに偏ってくるので主食に飢えてくる。
今はとにかく無性にパンとか麺とか小麦から作ったものが食べたい。
リアーネはそれなりに大きい街なので、食事処もたくさん存在する。
飲食店が集中している区画とか、屋台が集まってる広場とかもあるけど、歩いてるだけでもそれなりに食事処に出会うことができる。
まだ昼回ったばっかりだし、ブラブラ歩きながら探せばいっか。
【鉄板焼き グリルドミート】
当店おすすめ肉汁まみれステーキ。グリルドミートといえばコレで決まり。
限定 A5クラス フィレステーキ定食。
ビックリサイズ ハンバーグ。
・・・今は、肉はパスだな。
【レストハウス メイヤール亭】
前メイヤールだったし、これもパスかな。
せっかく違う土地来たんだし、違うもの食いたい。
【軽食・喫茶 Salotto pomeridiano】
美味しいコーヒー、紅茶いかがでしょうか?
軽食、ケーキなども逸品をご用意してお待ちしております。
オサレな喫茶店である。
腹はがっつりを求めてる感じなんだが・・・
【大盛パスタのお店 Traboccare】
溢れミート
溢れペペロンチーノ
溢れペスカトーレ
+2銅貨で特盛!食べ応え最高!
お?
大盛パスタ・・・だと!?
「アニー、ここは?」
と隣を見るとアニーがいない。
振り返ったらさっき通り過ぎたオサレ喫茶店の看板にくぎ付けになっている。
「どーした?アニー。何か食いたいのあったか?」
反応がない、集中するとアニーは他が見えなくなることがある。
どうもこれは決まりかな?
「・・・いらっしゃい。」
中に入ってみると、落ち着いた空気の中ダンディなマスターが出迎えてくれた。
少しシックな雰囲気のある広い空間を使っていくつかのテーブルと・・・外にはテラス席も見える。
何組かいる先客は、誰もが自分の時間を優雅に過ごしているように思えた。
ギルドでワイワイ打ち上げするのもいいんだけど、こーゆーゆったりとした時間も良いな。
「お二人ですか?こちらへどうぞ。」
こちらもスマートな所作のウェイターがテーブルに案内してくれる。
テーブルに備え付けられていたメニューを見てみると。
中々軽食が豊富で、それなりにボリューミーなものもラインナップされていた。
これはなかなか悩ましい。
・バゲットサンド
炙りトマトとチーズ、照り焼きチキン、クレソンとベーコン、生ハムチーズ、乱切り卵とハム、ホウレン草とキノコのソテー
・ホットドック
厳選ソーセージ、チーズドッグ、Wチーズ、チーズチリビーンズ、照り焼きチキンとバジルソース、オニオンフィーバー
・トースト
トースト、アボガドチーズ、ピッツァテイスト、極厚トースト
・ホットケーキ
ホットケーキ 特製フルーツマウンテン
昼飯と考えると、バゲットかホットドックか・・・
チキンは肉と言えば肉だが今回の遠征ではそれほど鳥は採れなかった。ソースがすごく美味そう・・・
ホットドックも気になるっちゃなるが、腹具合からするとボリューミーなバゲットか。悩ましい。
アニーは?
「決まった?」
「バナナとココナッツのふわふわパウンド。」
それでいいのか?お前まだメニューも見てなかったけど。ケーキもなかなか一杯あって悩ましいぞこれ?
「バナナとここふわパウンド。」
ちょっと待て、それごちゃ混ぜになってる。
アニーは一択だったようだ。よし、照り焼きチキンにするか。
注文しよう。
「照り焼きチキンのバゲットとコーヒー・・・はイタリアンローストで」
「それとなんだっけ、ふわふわなんちゃら・・・「バナナとココナツふわふわパウンド」
「あとレモンティーで。」
「お飲み物はお食事とご一緒で宜しいですか?」
「・・・かしこまりました。少々お待ちください。」
宿はどこにしようか、ずっと野営だったから少し広めの寛げるとこがいいか。
ちなみにだがワイルドイーターの懐は温かい。
獲物もたっぷり納品したが、ワイルドイーターの場合、記憶の売却益が結構バカにならない。
今回放出した飯テロの記憶石は一つ1銀貨で販売されているが、売り上げの3割がアレンの取り分になる。魔石ショップで売却してからまだ1刻半ほどではあるが、すでに400程売れていた。
この後のことをあれこれ考えながらのんびり待ってると昼飯がやってきた。
バケットは具沢山。一口噛り付く。
レタスとトマトにオニオンベースのドレッシング、粗めに乱切りした卵サラダ。オニオンと薄く削ぎ落したキノコを甘めのソースと油を絡めてソテーしたものを重ねて、メインの照り焼きチキンが挟んである。
いろいろ挟んであるバゲットは色んな食材の味わいが一気に押し寄せてくる感じがいい。
ソースもたっぷりで言うことなしである。
コーヒーを一口。
コーヒーは少し苦みのある。
複雑なバゲットの味わいにシンプルな苦みが調和している。
鼻に抜けてくるコーヒーの香りが最高だ。
口の中がスッキリしたところで、もう一口バケット。
いつの間にかバケットがなくなっていた。
目を閉じてコーヒーの余韻を味わう。最高だ。
ひとしきりコーヒーの香りを堪能したあと、目を開けるとそこにはモンブランがいた。
あれ?アニーなんちゃらパウンド頼んでなかった?
アニーがスプーンでひとすくいしたモンブランを口に運びトリップする。
紅茶を一口。そしてモンブラン、また行ってしまった。どんどん消えていくモンブラン。
そこへウェイターさんがやってきた。
「ザッハトルテでございます。こちらはお下げいたしますね?」
そっとアニーの前にチョコケーキを置いていく。
そっとスプーンをザッハトルテに沈ませるアニー。
先ほどと全く同じ光景が繰り返されていく。するとまたウェイターさんが現れた。
「ティラミスでございます。・・・お下げいたします。」
え・・・今注文とかしてなかったよな?
「先ほどお客様がバゲットをご堪能されておりましたおり、お連れ様がご注文を。順番にお持ちするようにと・・・」
なるほど、オーダーがスタックされていたようだ。
アニーは止まる様子がない。心静かに淀みなくケーキを口に運んでいく。明鏡止水だ。
ケーキを口に運ぶ。目を閉じる。ケーキを運ぶ。目を閉じる。
・・・怖ぇよアニー。
「あら?アレンくんじゃない、お久しぶり。アニーちゃんもこんにちわ。」
「あ、メリンダさんお久しぶりです。」
顔見知りのメリンダさんが入ってきた。
メリンダさんは魔術師ギルドの偉い人で、知的なお姉さんである。
反応がない。ケーキを口に運ぶ。目を閉じる。ケーキ・・・
「どうしたの?これ。」
メリンダさんが眉を顰める。
「さっきから自動運転中ですね。今日帰ってきたんですけど、甘未成分が不足してたみたいで・・・」
「そっか。まだしばらくいるんでしょ?」
「アニーちゃんによろしく言っといてー。あ、マスター、マドレーヌとミルクティーで。」
と言いながら、陽の差し込む窓際の席に歩いて行った。
ケーキ。紅茶。目を閉じる。うっとり。
「ガトーショコラで御座います。」
アニーが戻ってくるのはまだしばらく掛かりそうだ。
食材について
全部異世界食材にしてしまうとピンと来なくなるので、現実食材を異世界風にアレンジ(品種とか。大きさとか味とか?)したものをメインにしつつ、時々現実にはないトンデモ食材を混ぜるのが良さそうかなと思っています。
有名冒険者の人気コンテンツは複数ギルドへ拡散展開されていきます。
1商圏で独占するより拡大した方が利益が莫大に。
ギルド間でリベートありで拡散され、売れた分だけ版権者にバックされる仕組みです。
最初に買い取ったギルドもリベートで、版権者も拡散されると収益の裾が大きく広がります。
拡散された先も初出ギルド程ではないですが、バズれば莫大な利益に。
WINWINの関係が出来上がっています。
お昼過ぎで魔石の販売が400程度となってますが、小麦亭になだれ込んでくるのは呑んだくれだけで、魔石を購入した人全体からするとほんの一部だけです。ランチタイムはともかくギルド併設なので普段は探索者の酔っ払いだらけ。一般の人はちょっと利用しずらいんじゃないかなと思ってます。
ちな1銀貨400個で40金貨の3割だと12金貨、チョイ出しの切り抜き2~3時間程度の初動で12万円くらいの収入が発生してる感じですね。
補足
アニー「ここからここまで全部で。あと特製フルーツマウンテン!」
ウェイターさん「・・・さようで御座いますか、少々お待ちを。」




