5-14
翌朝。
レオニスは、普段より少し遅い時間に目を覚ました。
昨夜は結局、夜明け近くまで眠れなかった。
睡眠時間は十分とは言い難いが、幸い頭はすっきりしている。昨夜のような、何を考えても悪い方向へばかり進んでしまう感覚も、今はなかった。
ただし。
「……気が重い」
寝台の上で、小さく呟く。
理由は明白だった。
今日、第三室へ行けばラザがいる。
そして、自分は昨夜の非礼を詫びなければならない。
もちろん、謝罪すること自体に迷いはない。
問題は、その後だ。
ラザがどんな反応をするのか、まるで予想がつかない。
気にするなと笑うかもしれないし、ここぞとばかりにからかってくるかもしれない。
あるいは、いつものように面倒くさそうな顔で、適当な返事をするだけかもしれない。
どれも十分にあり得る。
そして、どれを想像しても、あまり気が進まなかった。
「……いや。自分で蒔いた種だ」
レオニスは寝台から起き上がった。
どんな反応をされようと、こちらが謝罪するべき事実は変わらない。
それだけの話だ。
身支度を整え、いつも通りに髪を撫でつける。
鏡の中には、見慣れた自分の顔があった。
少々寝不足ではあるが、仕事に差し支えるほどではないだろう。
眼鏡を掛け、襟元を整える。
それから、レオニスは部屋を出た。
◇ ◇ ◇
朝食の席には、長兄のキースがいた。
ローゼンフェルト家の次期当主として、普段から多忙な兄である。屋敷にいる時間が重なることはあっても、朝食を一緒に取る機会は案外少なかった。
「おはよう、レオニス」
「おはようございます、兄上」
キースは穏やかに微笑んだ。
「昨日は遅かったようだね」
「ええ。夜会が長引きましたので」
「そうか。お疲れさま」
レオニスは席につき、運ばれてきた茶へ口をつけた。
それから、ふと思い出す。
「そういえば、兄上。昨夜はありがとうございました」
「ん?」
「夜会のことです。途中でお話を引き継いでいただいたでしょう」
「ああ、あのことか」
キースはすぐに思い当たったらしい。
「構わないよ。ちょうど話が一区切りついたところだったしね。それに、何か急ぎの用事があったのだろう?」
「ええ。王宮の設備に少々問題がありまして」
「それは大変だったね」
「幸い、大事には至りませんでした。夜会も予定通り終わりましたし」
「なら、よかった」
キースは深く追及することなく頷いた。
昨夜の件について、詳しい事情を尋ねるつもりはないらしい。
兄のそういうところは、昔から変わらない。
相手が話せる範囲を見極め、必要以上には踏み込まない。
レオニスには到底真似できないとは思わないが、自然にそれができるところは、やはり見事だと思う。
「それにしても、兄上」
「何だい?」
「よくアルヴェイン君のことを覚えていらっしゃいましたね」
昨夜、ノエルが現れた時のことを思い出す。
キースは彼を見て、すぐにレオニスを探しているのだと察した。
そのうえ、話していた相手への対応まで引き受けてくれたのだ。
兄の記憶力を考えれば、一度会った相手を覚えていても不思議ではない。
それでも、ノエルとはそれほど長く話したことがなかったはずだ。
キースは少し目を瞬かせ、それから楽しそうに笑った。
「もちろん覚えているよ。お前のことを『レオニス先輩』と呼んでいた子だろう?」
「……」
レオニスは茶杯を置いた。
「……そのような覚え方をなさっていたのですか」
「だって、珍しかったからね」
「何がでしょう」
「お前をあんなふうに気軽に呼ぶ後輩がいるなんて、思わなかったものだから」
キースは、もう二年以上前のことを、まるで昨日のことのように言った。
たしか、あの時はノエルと宮廷の廊下で軽く立ち話をしていた。そこへ、偶然現れたキースへ、部下として軽く紹介した程度だというのに。
その時、ノエルとどんな話をしていたか思い出そうとしたが、思い出せる気がしない。
まあ、おそらく仕事の話だろうが……。
「食堂のスープで何が好きかを熱心に語り合っていたね。随分と懐かれているし、お前も可愛がってるものだと思ったよ」
「……たまたまです」
「そうなのかい?」
兄の笑みは変わらない。
どうにも、こちらの説明を額面通りには受け取っていないらしい。
「え〜、なになに? そんな可愛い後輩がいるの。ご令嬢?」
同じテーブルで朝食をとっていたもう一人の兄、ジュリアンは手を止めて面白がるように目を細めた。
緩いウェーブの髪を束ね、流行りの衣装に身を包むこの兄は交友関係が広い。特に女性と。
「アルヴェイン家のご子息だよ」
キースが言うと、ジュリアンは大げさに肩を落としてみせた。
「それは残念。ご令嬢だったらぜひ挨拶したかったなぁ。弟を末永くよろしくお願いしますってさ」
「ジュリアン兄様」
「だってさぁ、うちの家名も、お前の気難しさも知ってて『レオニス先輩』なんて可愛く呼んでくれる後輩なんだろ? しかもアルヴェインなら家格も悪くない。いや〜、惜しいね!」
「ふふ、そうだね」
兄達は何やら盛り上がっているが、なにが惜しいのかは聞かないことにする。
そうしてしばらく兄達と話をしながら朝食を終え、席を立つ。
「では、私はそろそろ出勤しますので」
「ああ。気をつけて」
「いってらっしゃい〜」
「ありがとうございます」
二人の兄へレオニスは軽く頭を下げた。
そのまま食堂を出ようとして、ふと思い出したように振り返る。
「兄上」
「ん?」
「昨夜は、本当に助かりました」
キースが微笑む。
「どういたしまして。また何かあれば、遠慮なく頼りなさい」
「ええ。その時は、よろしくお願いいたします」
そう答えて、レオニスは食堂を後にした。
◇ ◇ ◇
宮廷魔法局第三室へ到着した時、執務室には既に明かりが灯っていた。
扉を開けると、聞き慣れた声がする。
「お、来たな」
ラザだった。
いつもの机に腰を下ろし、何やら資料を眺めている。
昨夜と変わらない、気怠そうな顔だった。
「おはようございます、所長」
「おう。おはよ」
レオニスは一度、静かに息を整えた。
今なら、まだほかの職員は来ていない。
謝罪するなら、今がよいだろう。
「所長。少し、お時間をいただけますか」
「ん?」
ラザが顔を上げる。
「何だよ、改まって」
「昨夜のことです」
レオニスは姿勢を正した。
「昨日は、感情的になってしまい、申し訳ありませんでした」
そう言って、深く頭を下げる。
「所長は私の判断について、正当に評価しようとしてくださっていた。それにもかかわらず、私は自分の感情を優先し、貴方へ不適切な言葉を向けました」
「……」
「所長補佐としても、一人の魔術師としても、恥ずべき態度だったと思っています。申し訳ありません」
しばらく、返事はなかった。
レオニスは頭を下げたまま待つ。
やがて。
「……お前さあ」
ラザが、呆れたように息を吐いた。
「ほんっと真面目だよな」
「……所長」
「いや、わかったわかった。顔上げろ」
促され、レオニスは顔を上げた。
ラザは椅子の背もたれに身体を預けている。
怒っている様子はなかった。
それどころか、少し面白そうにこちらを見ている。
「で?」
「……で、とは?」
「少しは頭冷えたか?」
レオニスは一瞬、返事に詰まった。
昨夜と同じような問いかけ。
しかし、今はそれに腹を立てる気にはならなかった。
「……ええ。おかげさまで」
「そりゃよかった」
「昨日、所長からいただいた問いについても考えました」
「へぇ」
ラザが少しだけ目を細めた。
「才能とは何か。そして、それはどれほど重要なのか、というお話です」
「ああ」
「結論から申し上げれば、才能は重要だと思います。その考えは変わりません」
「そうか」
ラザはあっさり頷いた。
「ですが、それだけで物事の価値が決まるわけではない、ということも理解しています」
「……」
「いえ。理解していたはずなのに、昨夜は忘れていた、と言うべきでしょうか」
レオニスは苦笑した。
「考えてみれば、私は以前から、得意な者へ仕事を任せることの重要性を知っていました。第三室では、それが当たり前のことですから」
「そうだな」
「分かりやすい例がノエル君です。彼の魔術的な能力は、決して突出したものではありません。しかし、だからといって、彼が第三室に不向きだとは、今では思っていません」
ラザは黙って聞いている。
「むしろ、彼にしかできないこともある。今回の管理室での対応も、その一つでしょう」
「ああ」
「それはリディア君、ユーリス君も同様。そして、私自身にも当てはまる。それなのに、私は自分自身については、所長と同じことができなかったという理由だけで、成果まで否定しかけていました」
レオニスは小さく息を吐いた。
「……何とも、お恥ずかしい話です」
「別に、恥ずかしがることでもねえだろ」
「いえ。十分に恥ずかしいことだと思います」
「お前、ほんっと頑固な」
ラザが可笑しそうに笑う。
レオニスも、僅かに口元を緩めた。
「ただ、所長」
「あ?」
「誤解のないよう申し上げておきますが、私は今後も、貴方のような術式を組み上げられるよう努力するつもりです」
「んー……」
「面倒くさそうな顔をしないでいただきたい。今回の修正についても、詳しい理論のまとめをお願いします」
「……おい」
ラザが嫌そうな顔をした。
「まさか、今からか?」
「当然でしょう。せっかく理解を深める機会があるのですから」
「お前なあ……」
「昨夜、所長ご自身が『才能とは何か考えろ』とおっしゃったではありませんか」
「ああ、言ったな」
「考えました。その結果、足りない技術については、これまで通り学ぶべきだという結論に至りました」
「……」
「ご指導、よろしくお願いいたします」
レオニスが丁寧に頭を下げる。
ラザはしばらく黙っていた。
それから、深々と息を吐く。
「……来るんじゃなかったな、昨日」
「何をおっしゃいます。大変有意義なお話でしたよ」
「お前にとっちゃな」
「ええ。非常に」
レオニスが薄く笑うと、ラザは呆れたように肩をすくめた。
ようやく、いつもの調子が戻ってきた気がした。
何より、自分自身の中にあった重苦しさが、今はもうない。
もちろん、悔しさが消えたわけではない。
ラザのような発想力を羨ましく思う気持ちも、変わっていない。
だが、それでいいのだろう。
できないことがあるのなら、できるようになるまで学べばいい。
これまで、ずっとそうしてきたのだから。
その時だった。
廊下の方から、複数の足音が聞こえてきた。
「おはようございます」
聞き慣れた、柔らかな声。
続いて、扉が開いた。
「おはようございます、レオニス先輩。あれ、所長も早いですね」
顔を覗かせたのはノエルだった。
その後ろに、ユーリスとリディアの姿も見える。
「おはようございます」
「おはようございます、ローゼンフェルト補佐」
三人がそれぞれ挨拶する。
レオニスは思わず目を瞬いた。
「……君たち、随分と早いね」
「そうですか?」
ノエルが首を傾げる。
「今日の午後にはザーレンへ戻るので、昨日の記録を午前のうちに整理しておいた方がいいかなと思いまして」
「私も、解析結果をまとめておきたいと思っていました」
リディアが続ける。
「異常が発生してから復旧するまでの魔力の変動を、きちんと記録して整理しておきたくて」
「俺は室温管理の修正内容です」
ユーリスも言った。
「まだ詳細な報告書にしていません。記憶が新しいうちに整理した方が正確だろう、と」
「……なるほど」
レオニスは三人を見た。
誰も、特別なことをしているつもりはないらしい。
ただ、それぞれが自分の仕事を終わらせようと考え、こうして集まってきた。
誰も彼も、仕事熱心なことだ。
「お前らまで、朝から仕事の話かよ」
熱心から一番遠いラザは、呆れた声を出した。
「所長も仕事をなさっているではありませんか。珍しく」
レオニスが指摘すると、ラザは嫌そうに顔をしかめる。
「俺はちょっと資料見てただけ」
「普段縁遠いのでご存知ないかもしれませんが、それを仕事と言うのですよ」
「はいはい」
ノエルがくすくすと笑った。
その隣で、リディアも小さく微笑んでいる。
ユーリスだけは、特に気にした様子もなく自分の机へ向かった。
いつもの第三室だった。
レオニスは自然と、小さく息を吐いた。
「……さて。それでは、せっかく皆揃っていることだし、今日の予定を確認しようか」
三人が顔を上げる。
「まず、リディア君」
「はい」
「昨日の解析記録を、発生時刻ごとに整理してもらえるかね。特に、照明と室温管理の異常が進行した時間の差について、もう一度確認しておきたい」
「承知しました。異常の推移も併せてまとめておきます」
「うむ。よろしく頼むよ」
リディアが頷き、早速資料を取り出す。
「次に、ユーリス君」
「はい」
「君が室温管理へ施した修正について、詳しい記録をお願いしたい。今回は応急的な対応だったからね。今後の管理に必要な情報を残しておきたい」
「わかりました。既に大まかな構造は整理してあります。今日中にはまとめられると思います」
「それなら結構だ。他の業務との兼ね合いもあるだろうから、無理のない範囲で頼むよ」
「はい」
「それから、ノエル君」
「はい」
ノエルが姿勢を正す。
「午後には移動を控えているところすまないが、君には管理室側の報告書との照合をお願いしたい。現場でどのような判断が行われたか、職員たちの話も含めて整理してくれるかね」
「わかりました。昨日お話しした方々に、もう一度確認してきます」
「ああ。頼むよ」
レオニスは頷いた。
それから、一度言葉を切る。
「……あと、その前に」
「はい?」
ノエルが不思議そうに顔を上げた。
レオニスは少しだけ考える。
昨日は、夜会の対応があった。
その後も、報告書の作成に追われ、結局、ろくに休むことができなかった。
いつもなら、そんなことは気にせず仕事を始めているところだ。
しかし。
「久しぶりに、君の薬草茶が飲みたい」
「え?」
「淹れてくれると非常に助かる」
ノエルは一瞬きょとんとした。
それから、目を細めて微笑んだ。
「はい。もちろんです」
「うむ。よろしく頼むよ」
ノエルは嬉しそうに頷き、茶器の用意を始めた。
その姿を見ながら、レオニスは思い出す。
彼が第三室へ配属されたばかりの頃。
仕事の質問回数が少なくなってきた頃。
名前で呼ぶようになった頃。
そして、仕事を振ることが当たり前になった頃。
いつの頃も、レオニスにとって彼の淹れる薬草茶は密かな楽しみだった。
きっと、これも彼の才能。
ささやかだが、確かに意味のあるそれは、やはり第三室に必要なものだと思った。
◇ ◇ ◇
それからしばらくして、第三室には柔らかな薬草茶の香りが満ちた。
「ノエル先輩、今日の薬草は……ローシュ草と、クリブの種でしょうか」
「うん、正解。朝だから、ちょっと爽やかな感じが合うかなって」
「大変良い香りです。以前に同じ配合を試してみたのですが、うまく香りが立ちませんでした」
「クリブの種は少し潰して使うといいよ。その代わりお湯の温度は少し下げて。あまり高すぎると渋みが強くなるから」
「参考になります」
ノエルが茶を用意する隣で、手伝っているリディアが興味深そうに手元を見ている。
本来、中流とはいえ貴族令嬢のリディアが薬草茶の淹れ方に精通する必要はあまりない。しかし、普段固い表情をしがちな彼女が真剣に、そしてほんのり楽しそうに小さく頷く姿を見ていると、それを指摘するのは野暮な話だろう。
「以前から思っていたが、エルンストが淹れ方を覚える必要はあるのか?」
野暮だ。
ユーリスが不思議そうに言った言葉に、レオニスは無言で軽く額を押さえる。あの若き天才は、たまにこういうところがあるのだ。
いや無神経というほどではないのだが、貴族としてのあるべき姿が身に染み付き過ぎて、逆に心なく聞こえる。本人は純粋に疑問なだけなのだろうが。
「エルンスト家では、たまに家族がお茶を淹れていました。しかし……やはり貴族家としては、こういったことはあまり口にすべきではないのでしょうか」
「いや、単に疑問だったから聞いただけだ。そういうこともあるのか」
「ふふ、ユーリスも淹れてみたら楽しいかもしれないよ?」
「ヴァレンベルク先輩がお茶を……それは、ものすごく貴重な一杯になりそうです」
三人は特に空気が悪くなることもなく、いつもの調子で和やかに会話をしている。
そのことに若干の安堵を感じていると、カップがそれぞれの机に運ばれていく。
「はい、ユーリス」
「ありがとう」
「所長は今飲みますか?」
「飲む、ついでになんか摘むもん」
「わかりました」
ノエルが楽しそうに笑う。
レオニスも温かなカップを受け取り、礼を述べてからゆっくり口をつける。
爽やかな香りとほのかな甘み。身体を温めつつも、どこか清涼感があり頭がスッキリする。
やはり美味い。
レオニスはカップを置きながら、静かに息を吐いた。
部屋には、騒がしくない程度に人の声が満ちている。それに心地よさを感じながら、部屋全体へあらためて視線を向けた。
本当に、賑やかになったものだ。
かつては、ラザと自分の二人しかいなかった部屋。
机の数にも余裕があり、書類の置き場所に困ることもなかった。
今ではこうして机も増え、資料も増え、誰かが持ち込んだ茶葉や菓子まで置かれるようになった。
仕事の進め方も、随分と変わった。
同じ術式を見ても、誰もが違うところに目を向ける。
ある者は理論を重視し、ある者は実用性を考え、ある者は、それを使う人間のことを気にかける。
意見が食い違うこともある。
理解できない発想に出会うこともある。
そして、自分一人では思いつかなかった答えが、そこから生まれることもある。
レオニスは、ふと昔のことを思い出した。
ノエルの採用を巡って、ラザと口論した日のことだ。
あの時、自分は第三室に必要なのは、優れた魔術師だと考えていた。
もちろん、今でもそれは間違いではないと思う。
高度な術式を開発するためには、相応の知識と技術が必要だ。
だが、それだけでは足りないのだろう。
少なくとも、今の第三室には。
少し離れたところでは、相変わらずノエルがリディアと何やら楽しそうに話している。
その隣では、ユーリスが二人の会話に時折短く言葉を返していた。
それぞれ、まるで違う人間だ。
得意なことも、苦手なことも、物事の捉え方も違う。
だからこそ、意味がある。
……いや。
意味があると素直に認めるのは、少々癪に障る。
何しろ、それを最初から見抜いていたのは、あの男なのだから。
「なあ、レオニス」
隣からラザが声をかけてきた。
「何です?」
ラザは、ノエルたちの方へ視線を向ける。
それから、いつものように口元を緩めた。
「違う奴らがいると、面白いだろ?」
レオニスは答えなかった。
ただ、後輩たちの姿をもう一度眺める。
それから、瞼を伏せ小さく笑った。
「……腹立たしいがね」
理解できてしまうことが。
そんな言葉を飲み込むように、レオニスはもう一度カップへ口をつけた。




