第74話 狂乱の獣(フレンジー・ビースト)
佐助は全身から大量の黒いオーラを放出させると、それを自身の体に纏わせ、巨大な犬の様な獣へと変貌する。
黒いオーラを纏った佐助に紫音が放った氷の蕀は佐助に直撃し、犬の様な獣へと変貌した佐助の体にまとわりつく。しかし、少し犬の様な獣へと変貌した佐助が動くと脆く崩れ去る。
「……精神を崩壊させるオーラを纏って、攻撃が増しているのか?」
精神攻撃の能力としては、珍しい攻撃性を持つ佐助に紫音は警戒を強め、辺りに無数の氷で造られた大木を出現させ、素早く、移動し姿を眩ませる。
「……無駄だ。佐倉紫音……俺が何でわざわざ狂乱の獣になったのか理解していない」
佐助は深く息を吸い込むと、雄叫びと共に黒いオーラを口から吐き捨てる。
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
その雄叫びは広範囲と距離を伸ばしながら、精神を狂わせる狂乱の宴の黒いオーラ含ませながら、放たれる。
氷で造られた大木に身を潜める紫音だったが、叫びと共に黒いオーラが氷をすり抜け、紫音に直撃する。
(全身が揺れる。骨が軋む、魂が留まらない。何よりも、精神が狂う)
紫音が佐助の精神攻撃に耐えきれない中、先に隠れていた者が倒れていった。
(……紫音は一人じゃないでしょ)
「……そうだね。行こう」
紫音は全身から凄まじい冷気を放つと氷で造られた女性を出現させる。
「……なんだ……それ?」
得体の知れない氷で造られた女性の登場に佐助は警戒心を強めていた。
紫音の異能である氷神の花畑には上原氷月が死ぬ前に氷神の花畑と統合されていた。氷月の体には兄である氷雪によって、終焉の冬の完成に必要とされる五つの能力、異能の一部が取り込まれており、未完成な終焉の冬を紫音は扱う事が出来る。
「紫音!さっさと終わらせよ」
「うん……力を借りるよ」
手を伸ばす紫音の手を氷で造られた氷月が手に触れると、氷で造られた氷月の体は剣へと変化する。
「……この威圧感……氷で造った剣ではないな?」
「これは神器!」
「……能力、異能に神器を取り込むのは珍しい事ではない。それが俺に勝てる理由にはならんぞ」
「これは元々の僕の体に宿っていた神器にして、異能だった氷神撃滅剣。氷月の体と共に氷神の花畑に統合させ、新たな力を得た氷神撃滅蓮剣!」
全てが氷で造られ、蓮の花が生えたその剣は常に冷気を放っていた。
「……それがなんであろうとも、勝つのは俺だ!」
黒いオーラを身に包み、巨大な犬の様な獣へと変貌している佐助は四足歩行で素早く、紫音に接近を果たす。




