第35話 侵入前
「報告します。昇さんが捕まりました。正体不明な能力によって、手も足もでずに……私も必死にここまで逃げてきました」
息を切らしながら、早乙女家に報告に来た大王を見た一族たちはただ事では無いと判断し、五月女家の屋敷に籠城する五月の説得には数人では不十分と判断に至り、早乙女家、五月女家がそれぞれ、七人ずつ五月の説得に行く事になった。
「気を引き締めろ。相手をただの子供と侮るな」
皆をまとめ、率いるこの老人は早乙女家の頭脳とまで言われた早乙女玄竜だった。
玄竜はどんな状況に陥ろうとも、的確で適切な判断能力に加え、状況判断能力が凄まじく、能力を使用せずに倒した敵は数知れずとまで言われた人物である。
そんな男が率いるからか、皆どこか安堵していた。
そんな時だった。玄竜は皆の中で唯一笑っていた男を殴りつけ、気絶させる。
「気を引き締めろ!……と、言った筈なんだが……理解出来なかった?ならば、理解しろ!気を緩めた者から、ワシが叩き潰す!」
玄竜のその言葉により、緊張感に包まれたこの場に置いて、笑おうとする者は誰もおらず、これから何があっても、気を緩める事は無いようにと、気を引き締める。
「……理解出来たようだな。では、行こうか?戦場へ」
「戦場?」
玄竜のその言葉に一人の若者が首を傾げた。
「相手が子供であろうが、この人数の大人を動くに値する相手を子供として扱うな。驚異的な存在として認識しろ!」
「はい!」
相手が子供であると言うその事実があるものの、玄竜のその一言によって、皆は戦闘体勢へと移行し、その表情は戦地に赴く兵隊さながらの様だった。
五月女家の屋敷の前で立ち止まった玄竜は暫く立ち止まる。
「……では、開けます」
中々、扉を開けようとしない玄竜に確認を取りながら、一人の若者が扉を開けようとする。
「待て!」
「……はい?」
「ここは敵のテリトリーだ。何があっても可笑しく無い。一度、昇と大王の二人がここに来ているのだ。敵も警戒している事だろう。罠の可能もある。状況は常に最悪を想定し行動しろ!」
玄竜のその言葉を受け、後方で待機していた一人の女性が動き出す。
「ならば、私の能力が役にたつかと」
「……なるほど、探知系を使うと聞いているぞ」
「はい!お任せを」
その女性が目を見開くと、五月女家の屋敷の全てを見通す。
「屋敷内にトラップはありません。五月女五月と思われる人物は最上階におります。そして、隣には横たわっている昇さんと思われる人物が確認出来ます」




