第34話 五月女家
「それじゃあ、行くか」
昇のその言葉を受け、大王は無言で頷くと、二人は取り壊し予定の五月女家の屋敷内へと足を踏み入れる。
「この部屋です」
「よし」
扉に手をかけた昇は扉を開ける。
「……ただの子供じゃないか」
無防備で座る白髪の少女を目の前にして、昇も警戒心を解き、五月へと近寄る。
「……ここはもう取り壊し……」
昇が異変に気付いた時には、もう昇の口は動かす事が出来なかった。
「驚きましたか?これが五月の能力強制終了です。その能力によって、貴方は会話をする事が禁じられました」
大王は優雅に歩き、五月の元に向かう。
「どうして、五月女家の人間が知らなかった五月の能力を知っているのか?って顔ですね」
「……」
「ただの勘ですが……まぁ、多分合っているでしょう。説明しますね。五月と私は手を組んでいるのです。そして、一族の全ての人間を殺すと決めたのです。貴方は最初の犠牲者って訳だ」
大王の背後に上半身のみで炎に包まれ、怒りを露にしたそれを目にした昇は本能的に背後に後退していた。
一目見ただけで理解した。逃げなければならないと
「これが私の能力、琰摩羅闍です。山梨支部の檜山家の人間の能力である閻魔大王と一緒にしないで下さいね。たまに、間違える不届き者が居るので」
「……」
「あぁ、それ、正解ですよ。逃げるのは、恥でしょうが、命には変えられませんからね」
「……」
「五月逃げられない様にして貰えますか?」
大王は笑顔で五月に頼み込む。
五月は無言で頷くと、能力を発動させる。
「見事でしょ?五月の強制終了は目視した人物のあらゆるものを強制的に再起不能にする。例えば、喋るのをシャットダウン、動きをシャットダウン、思考をシャットダウン数を上げれば切りがない。取りあえず、五月の能力についてはここまでにしておきましょう。ここからは私の能力である琰摩羅闍について教えておきますね。私の背後に居るこの琰摩羅闍に掴まれたら、肉体に触れる事は叶わないが、精神を掴む事が出来る。そして、掴んだら最後、永久的に私の管理下に置く事が可能となる。五月もこの琰摩羅闍に掴まれているんですよ」
「……」
「見てください。私の言う通り、動き無駄な事を一切喋らない。動かない。素晴らしい部下だ。昇さん貴方も私のコレクションに加えてあげますよ」
笑顔で微笑むと、大王は背後に出現させた琰摩羅闍を操作し、昇へと右腕を伸ばさせる。
五月の能力である強制終了によって、動きを封じられた昇に回避等出来る訳も無く、琰摩羅闍に掴まれてしまう
「五月女家はここから生まれ変わる」
不適な笑みで告げる大王のその言葉通り、この日日本中に知れ渡る事件が始まる。




