第30話 登場
背中から大量の血を流しながら、田所は倒れそうになりながらも、立ち続けていた。
「まだだ。お前もふらついているだろ?後、一撃だ。後、一回殴れれば、勝てる」
「……その可能性もあるかもしれないが、お前はもうここで来れない」
「なめるな!」
田所は産まれて初めて、能力である現状打破を自身の背中から流れる血を止める事に使用する。
「……出血はおさえた。現状を打破してこそ、俺の能力!」
「何を吠えても、お前ではもう何も出来ない」
正一は実弾が入った拳銃を田所へ向ける。
田所はそれを理解した上で、走り出す。
「馬鹿が、もう勝てないと認めれば、楽なものを」
正一は目の前を走る田所へ向け、拳銃の引き金を引く。
念動力を扱う正一にとって、照準を合わせる必要は無い為、その動作は省いており、放たれた実弾は正一の念動力によって、正一が思い描いたまま、実弾は田所のもとへと向かっていく。
田所の能力、現状打破は自身と、目に映ったものを対象として発動する能力であり、速すぎる実弾を目に捉えられない田所は実弾に対して能力が発動出来ない状態である。しかし、それは田所も理解した上で走っていた。田所は実弾で撃たれても、本部決定戦のルール上殺しが禁止されている事から、自身の命の危険が無いと想定し、そして、実弾で撃ち抜かれた後に正一を殴ろうと考え、行動していた。
田所が走り出した時点で正一も田所の考えをおおよそ理解しており、実弾で狙ったのは、左目だった。
「あああぁぁぁぁ」
実弾で撃たれても、走り続け殴る事を決めていた田所もたまらず、左眼球を押さえながら、うずくまった。
「理解したか?」
「はぁはぁはぁ」
「答えられないか?まぁ、良い。これで終わりだ」
「……負けられん!俺は強さを手に入れた。ここはそれを証明するため、勝たなければ」
「母の為と言っていたな。何故、そこまでする?」
「お前は、母の為にどこまで出来る?」
「……何もするつもりは無い」
「母は俺の全てだ!」
「そうか。俺には、分からない事だな」
正一は魔力が溜め込んである拳銃を田所に向け、放つ。
至近距離からどす黒い魔力に当てられた田所は能力を発動させる事が出来ずに、吹き飛ばされ敗北してしまう。
田所の敗北が確定して、田所の所有ポイントである二ポイントが正一に加算され、正一のポイントは合計七ポイントとなった。
そんなタイミングで正一の目の前に一人の男が立ち塞がる。
「一。何をしている?」
正一の目の前に立ったのは、黒髪の男は新潟支部代表、二宮和人だった。




