第27話強者への渇望
田所はゆっくりと立ち上がり、拳を握る。
田所が殴りかかろうとしたその時、田所は拳を止める。
「良い判断だ。一度経験したなら、その失敗を生かす事は評価しよう。で、どうする?」
「……うおおぉぉぉぉ」
「殴るのかよ」
和泉は防衛体勢を取ると、田所の攻撃を待ち構えた。
「現状打破は現状を打破する。触れれば、貴方の現状の良い効果を消し去る事が出来る」
現状打破なら、確かに問題は無く、和泉を殴れただろうが、和泉の体は神と同等となっている。
「あんな事言ってやがるが……神と言うものが分かっていねぇだろ。あいつ」
陣野のその言葉に千春は返答する。
「神の力や、存在等は酷く曖昧なものです。その力を正しく認識出来る人間等居るわけも無いですよ」
「……それもそうか。で、どう見る?あいつの現状打破って言う能力の面白味はあるが、神相手となると、物足りなさがあるな」
「工夫しても、神との差は埋められないですよ。次元が違うのですから」
「それは、そうだ。どうする?新入り」
二人が見守る中、田所と和泉の戦いは和泉の勝利で幕を閉じた。
「……基礎訓練はお前に一任する陣野」
「はぁ?」
「お前しか頼めない」
「そう言う事か。それはそうだ。俺以外の適任者は居ないだろう。体術においては」
「説明の手間が省ける」
「あいつの能力的にも体術をベースとして戦うのは、見ていた分かった。武器を使うにしても、最初は俺で間違い無い」
「では、頼むぞ」
田所の事を任された陣野は気絶し、倒れ込む田所の横で寝転ぶ。暫くすると、田所は目を覚ます。
「……起きたか。台所」
寝ぼけと、痛みの中、田所は返答する。
「台所ではなく、田所です」
「そうか。これから暫くお前の面倒を見る事になった陣野忠だ。お前の覚悟は見させて貰った。一ヶ月の間はお前一人で鍛えろ。アドバイスはやる。まず、一人称の僕から俺に変えろ。そして、その体を鍛えろ」
「えっと」
「反論は認めねぇ。強くなりたければ、強者に従い、強者を見習え。弱者はそこから始めろ」
田所が立ち上がり、返答しようとしたその時、陣野が制止する。
「待て、立ち上がるな。寝転んでおけ」
「……はい。あの聞きたい事が」
「なんだ?」
「何故、暗殺部隊に所属しているのですか?」
「俺の経緯は聞いているな?」
「はい」
「表に居る奴からしたら、裏の事情を知る訳も無く、その必要性も感じないだろう。人を殺めたこの手で、この体で出来る事は限られた。そして、この人生で出来る事も限られている。最初はただ、罪滅ぼしの為だった」




