第24話 変わる人生観
「お父さんは、体が弱かったから、病気にも勝てなかったの……泰二……貴方は、貴方だけは、こんなに簡単に死なないで」
「お父さんは簡単に死んだ訳では、懸命に」
「死んだじゃない。弱いからよ。強くなりなさい。強くなければ、死ぬの。泰二、強くなるのよ」
「……僕は」
「お母さんはもう無理よ。貴方まで死なれたら」
床に倒れ、田所のズボンにしがみつく、弱き母の姿を初めて見た田所は、正常な判断をしたとは、思わなかった。だが、ただ今の母が立ち上がり、涙を止められるなら、この決断は間違いではないと自身に言い聞かせた。
「僕、強くなるよ。だから、泣かないで母さん」
「約束よ。もう誰かを看取るなんて、母さんは御免よ」
「うん。大丈夫……僕は死なないから」
田所はその場しのぎで言ったつもりは無い。
言ったからには、田所は非力な自身を変える為、動く事を決めた。勿論、当てはある。
田所は病院に来る前に貰った紙を見つめ、スマホを操作すると、それを耳に当てる。
「……僕です」
「思っていたよりも、早かったな。あの様子だと、もう少し我慢すると、思ったが」
「父がたった今亡くなりました」
「……そうか。男が強くなる動機としては、十分じゃあねぇか」
「僕は僕の為に強くなります。僕が強ければ、守れますから」
「了解した。明日から来い防衛局暗殺部隊で面倒を見てやる」
「もう防衛局の前に居ます」
「……良いね。そのやる気、俺の部下に迎えに行かせるよ」
田所が待っていると、そこにやって来たのは、白髪の少年であった。彼は福岡支部防衛局暗殺部隊副部隊長を務める春風千春だった。
「和泉様の命令を受け、出迎えに来た。和泉様が見込んだ男は皆、劇的な成長を見せた。僕の様にね。君にも何かしらの才能があるのだろう」
「僕にはその才能があるとは思えないのですが」
「当たり前だ。最初からそんなに自信があってたまるか。度重なる実践と、経験が才能を開花させる。君はまだまだ力不足であり、何も知らない。強くなるも、弱者のままで居るのも、君次第だ」
「……強くなりたいです!」
「僕は和泉様が居ない間だけ君の面倒を見る様にと、言われた。君の面倒は基本和泉様が行う事になる」
「一つ聞いても良いですか?」
「何だ?」
「暗殺部隊は……その……」
「安心しろ。そんなに恐ろしいものでは無い」
「良かった」
唯一の不安要素が無くなった田所は、安心して千春の後に続き防衛局内へと入って行く。
防衛局は清潔で、明るい雰囲気で田所を安堵していた。




