仙人、聖剣と傷跡の決着を見る
「お主、本当にワシの事覚えてないのか!? お前はクレスト王国側の傭兵として戦争に参加しとったじゃろう!!」
マルテナの言葉にスカーは頷く。
「てことは、お前はダリア側か? でもやっぱり覚えがないな。お前みたいな特徴的な容姿してれば忘れるはずがないのだが?」
はた目から見ればマルテナは銀髪碧眼の美少女である。こんな相手を忘れるようならその人物は一度医者に診てもらった方がいいだろう。
「なら、これならどうじゃ!!」
マルテナは手で目を覆う。
「ンン~………」
手で目を隠したマルテナの姿が記憶を刺激し、一人の人物を浮かび上がらせた。
「お前、もしかして白騎士か?」
「ようやくわかったか?」
マルテナが呆れた様に言う。
「あのう、マルテナ様、白騎士って一体?」
将人が二人の話に付いて行けず、口を出した。
「馬車の中で話したじゃろう。変装して身分を隠して戦争に参加したと。その変装というの顔の半分を隠す白のハーフマスクでのう。今装備しとる白銀のハーフプレートアーマー、これも相まって白騎士と呼ばれとったんじゃ。ピンチの時に現れて、敵をなぎ倒して去っていくから兵士には人気があったぞ。敵側には白い死神と呼ばれとったが」
また、野盗もスカーに口出ししていた。
「あの女と知り合いのようですが、それと仕事は別なんで、そのう………」
「ああ、それは全く心配ない。お互い敵同士だったし、つけれなかった決着をつけるにはちょうどいい。戦争終わったからこっち、手ごわい相手がいなくてイライラしてたが………くだらない仕事でもやるもんだ」
「まったくじゃのう。お主と決着がつけられなかった事だけは心残りになっておったからの、白黒はっきりつける機会を与えてくれた野盗に感謝だけはしておこう」
容姿も性別も違うのに、二人は同種の凄みのある笑みを浮かべる。今にも獲物に食らいつこうとする獣の笑みだ。
「マサトォー!!」
バリケードとなる馬車をマサリアたちが乗り越え、将人に駆け寄る。
「突然、マルテナ様が鎧と剣を身に着けてこっちに走っていったから、慌てて追いかけてきたんだけど、どういう状況なの?」
マルテナと黒ずくめの男が対峙しているのを見て、ファテマが攻撃魔法の呪文を唱え始める。
「ファテマさん、ダメです!!」
将人が慌ててファテマの呪文を遮る。
「何でだい、マサト君?」
「あの二人、ダリアとクレストの戦争時の因縁があるようです。今、間に入るとマルテナ様に恨まれますよ」
「そんな事言ってる場合じゃ―――」
ファテマが言い切る前に、マルテナとスカーが動いた。マルテナが跳躍し、長剣を振り下ろす。それに対しスカーは右下から左上に大剣を切り上げた。長剣と大剣がぶつかり合い、大気を震わした。剣と剣がぶつかりあったとは思えない轟音に将人たちは耳を塞ぐ。そのまま鍔迫り合いとなる。
「腕は落ち取らんようじゃの!!」
「戦いの場がなくて心が腐りそうだったがな!!」
スカーが膂力を持って大剣を振り切り、マルテナを吹き飛ばす。マルテナが着地をする前にスカーが追い付き、大剣をふるう。大剣をふるっているとは思えない何重もの剣撃をマルテナは絶妙に受け流す。スカーは攻撃が流され続ける事にじれ始れ大振りになってしまう。そこでマルテナは剣の柄を離し、剣の刀身を掴む。そしてスカーの懐に入る。突然のマルテナの間合いの変化にスカーは追いつけない。マルテナの長剣の突きがスカーの腹部に入る。切っ先がスケイル・アーマーの装甲を貫き、肉に食い込む感触がするがそれより奥には入らなかった。スカーが勘と反射神経で後方へ飛んだからであった。スカーはそのまま、森の中に入る。
「逃さぬぞ!!」
マルテナはスカーの後を追い、森の中に入る。剣を振るには森の木々が障害となるがそれを物とはせず、二人は剣を振る。二人が剣をふるう度にに木々が倒れる。二人は森の最深部に入り、ひと際でかい巨木の前に出る。そこでマルテナとスカーは幾合の剣をぶつけ合い、スカーが痛恨のミスを犯す。スカーが横一文字に切りつけた時、刀身が巨木に潜り込み、半ばで止まってしまったのだ。引こうが押そうが大剣を抜く事は出来ない。そのミスをマルテナは逃さない。
「間抜けがっ!!」
マルテナが上段の構えから剣を振り下ろす。剣が脳天に届く前に、スカーは大剣の柄から手を離し、後方へ下がりマルテナの剣を避ける。マルテナの剣が地面に付いたと同時に、スカーはマルテナの剣を踏みつける。そして大剣の柄に再び握る。
「何をするつもりじゃ!!」
スカーは答えなかった。その代わりに雄叫びを上げた。巨木に刀身が潜り込み、ピクリともしなかった大剣が再び加速を得たかのように動き、大剣を振り切ったのだ。スカーに武器はないと考えていたマルテナの反応は遅れる。長剣を手放し、後方へ飛びのいたが、大剣から逃れる事は出来ず、マルテナは胸部を横一文字に切られてしまう。マルテナは大量の血を流し、地面に倒れ伏す。一連の戦いを見ていた将人は悲痛な声を上げる。
「マルテナ様!!!」




