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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第四章 仙人、特級冒険者になる
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閑話 仙人VSダニエル、決着、盾命名

ダニエルは自分の周りに『滅び』の力を収束して作った円錐形の槍を数にして二十個展開した。それに対し将人は『三体式』の構えを取るだけだった。将人はリラックスした状態で『三体式』の構えを取る事で淀みなく体に『氣』を循環させ力を蓄えていた。


将人とダニエルの間に緊張感が高まる。緊張感は風船のように膨らみ何かの拍子に敗れてしまう。その時が戦いの合図だった。そしてその合図は意外な形で訪れた。ダニエルの後方から火球が叩き込まれたのだ。南門で入国の順番待ちをしていた冒険者の一人が打ち込んだものだ。だが『滅び』の力を纏った者には魔法が通じない。火球がダニエルが纏う『滅び』の力に触れた途端消失する。ダニエルが後方に意識を向けた瞬間、将人は一歩踏み出した。


ダニエルが将人に『滅び』の槍を射出した。将人は掌を上から下に打ち下ろす、下から上に打ち上げる、内から外に払う、外から内に払う、そして突く。『形意拳』の基本五行拳の動きを忠実に行う事で『滅び』の槍を全て撃墜した。


『滅び』の槍を個々で出しているのではかなわない、そう考えたダニエルは再び『滅び』の槍を複数展開、槍をさらに収束し強大な一個の『滅び』の槍を作り射出した。これは個人の力では破れない、そう考え将人は回避を考えるがそれでは後方で未だ目覚めないマサリアとエミリア、街にも被害が出る。二人を守っている盾の力でも防ぎきれないのではと考える。将人は回避を捨て逆に一歩踏み出した。踏み出すと同時に両拳で突き上げるように突く。『形意拳』の『十二形拳』の一つ『虎形拳』で迎撃を試みたのだ。

将人の『氣』と『滅び』がせめぎ合い、将人がじりじりと押されている。


(このままでは………)


将人は何とか『氣』を強めようと焦ってしまう。それだけで『氣』が弱まる。『氣』の制御はそれだけ難しいものだった。もうだめか、そう思った時思いもよらない所から援護があった。将人の盾から『氣』が射出されたのだ。『滅び』の槍ではなく将人に向かって。


盾から射出された『氣』は将人の背中から入り肩、腕を通り両拳に収束する。『滅び』の槍にひびが入り霧散する。霧散した『滅び』が煙幕となりダニエルの姿を見失ってしまった。『滅び』の煙幕が晴れた時ダニエルは目の前にいた。右手には『滅び』の力を収束したタガーを持っており、それでマサトの腹部を刺した。突然の事で将人は避ける暇がなかった。


無表情のダニエルがニヤリと笑ったがすぐに笑えなくなった。『滅び』のタガーの先端がクロースアーマーの表面で止まっていたからだ。将人は左手でダニエルの右手を掴み、右縦拳でダニエルの腹部を突いた。『形意拳』の『五行拳』の一つ『崩拳』だった。将人の『崩拳』はダニエルを包む『滅び』の力を突き抜け肉体に『氣』が通った事を感じた。ダニエルは二メートル程後方に吹っ飛び倒れる。腹部を押さえ、のたうち回り吐瀉物を吐き出した。その中に闇を固めたかのように真っ黒で丸い拳大の石が混じっていた。


「やっぱり………『滅び』の石か」


将人は『滅び』の石を踏み潰す。ダニエルは苦しげに呻きながら将人を見ていた。その顔には怯えの表情が浮かんでいる。ダニエルの表情を見て『滅び』の力の支配から脱却した事が見て取れた。


「誰がダニエルに『滅び』の石を与えたんだ。ダニエル、お前誰に『滅び』の石を貰った!?」


将人はダニエルの襟首を掴み問うが意味不明な言葉を呟くだけで要領を得ない。


「………ダメか」


将人はダニエルを離し地面に寝かせる。


「あの男がいるのか………」


将人は狡猾な魔法使いオグマの事を思い出していた。あの男はゼロ鉄を使って『滅び』の力を有効に使えるようになったと言っていた。あの男がこの街で『滅び』の石を使って何をするつもりなのか、将人は戦慄を覚えずにはいられなかった。


将人は意識を切り替え別の事を考える。ダニエルの『滅び』のタガーがどうして腹部を貫けなかったのか。いつもと違う事と言えばクロースアーマーの下にゼロ鉄の鎖かたびらを着ている事だった。そう考えてアッと声を上げた。セロ鉄の鎖かたびらの上にモンスターの革を使ったクロースアーマーを着る、これは盾の構造と酷似しているのではないかと。鎖かたびらに蓄積した『氣』を無意識にクロースアーマーを通して放出した事で防御壁となり『滅び』のタガーを防いでくれたのだ。


「シゲルイさん、あなたは何てベストマッチしたものを作ってくれたんですか!」


将人はシゲルイの工房の方向に向き何度も頭を下げた。


その後、将人は衛兵で事情聴取を受け、治療院に連れて行かれたマサリアとエミリアを見舞う。マサリアとエミリアはただ気絶していただけで特に異常はなかったが体調を見る為一日泊る事になる。マサリアはピクニックに行けない事を悔しがったが後日また行けばいいと説得し諦めてもらった。ダニエルも治療院で治療を受けていた。衰弱しているが命に別状はなく、体力が回復したら事情聴取を受ける事になっている。その後は街から追放されるらしいがこれに関しては何も言う事は出来ない。


そんなこんなで将人が宿屋に戻れたのは深夜になってからだった。『滅び』との戦闘は通常の戦闘より疲労する。ベットで横になって眠ってしまいたかったがまだ、確認しなければならない事があった。将人は手探りでベットに向かい、ベットの縁に腰かける。右手に円形の盾を持って。


「盾よ」


将人は円形の盾に声をかけた。すると盾に反応があった。盾がフワリと宙に浮いたのだ。微かに輝き部屋を照らす


「やっぱり生きて(?)いたか」


ダニエルとの戦闘が終わった後、盾は地面に転がり何の反応も示さなくなったのだ。呼びかけに何も応えなくなったから不安だったが反応があってよかった


「盾よ、お前はいつから目覚めていたんだ。ダニエルと戦っていた時か?」


盾が上下に動く。人間ならば頷いたという事だろう。


「そっか、アリガトウ。お前のお陰で命拾いした」


盾が将人の周りを旋回したかと思ったら身を擦り付けてくる。犬がじゃれているようであった。盾には思考、感情があるように思えた。


「人懐っこいやつだな。思考、感情があるのなら名前の一つでも付けてあげようか?」


盾がピョンと飛び上がったかと思ったら、将人の周りを旋回する。喜んでいるようであった。


「盾に付ける名前かあ………まんま、タテちゃんとかどうだ?」


盾が床に落ちる。


「ダメか………ターちゃんとかテッちゃんとかはどうだ?」


盾が飛び上がり将人の頭をベチベチ叩く。お気に召さなかったらしい。


「お前の体鉄で出来てるんだ。そんなもんで人の頭叩くな!!」


将人に怒鳴られ盾はまた床に転がり動かなくなる。


「オーイ、タテ、タテちゃん」


呼びかけに答えない。つついても反応がない。落ち込んでいるように感じられた。


「気難しいやつだな。どういう名前ならお気に召すのやら、伝承、伝説から引っ張ってくるか。剣に関する伝説、伝承はよくあるけど盾に関するものはほとんどないんだよな………盾に関する物ならイージスの盾、もしくはアイアスの盾か………そういえばアイアスの盾は青銅の盾に七枚の牛皮を重ねた物だって話だけどこの盾も似た構造なんだよな。牛皮がモンスターの革だって事以外は………引用させてもらうか。盾よ、お前は今日からアイアスだ!!」


その声に盾が身を起こす。


「お前の名前は今日からアイアスだ」


将人がもう一度言うと盾が浮かび上がりくるくると回転する。喜んでいると思われる。


「アイアスだからアイちゃんだ。改めてよろしくな」


クルクル回っているのが躍っているように見えた。


(ものだから性別ないだろうけど、あるとしたら女の子かな)


将人はそんなどうでもいいことを考えながらベットに横になった。











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