仙人、オグマと再び対峙、VS『滅び』のゴーレム
魔法施設はドーム状の建物だった。窓などが全くなく、入り口だけがぽっかりと空いている。見張りも何も立てておらず罠であるのではと疑ってしまう。
「ファテマさん、どう思います?」
「………罠、だろうね」
「どうしましょう?」
「マサト君はどうしたい?」
「俺?」
将人が驚いてファテマを見る。
「だってマサト君、特級冒険者でしょ。この件に関しては君の方が権限があるんだから君がまず考えてみてよ。問題がある様だったら言うから」
将人は腕を組んだ考える。ただ敵と戦うのならまだ気が楽だが、自分の指示で仲間が動くというのはプレッシャーだ。気のせいか胃が痛くなってきた。
「まず、俺とファテマさんで先行しましょう」
「それはどうしてだい?」
「あの陰険ヤローは人の神経を逆なでしてイラつかせたところで罠を仕掛けてそれを楽しむタイプだと思います。だからあの入り口にも罠があると思います。だから手先が器用で罠の解除が出来るファテマさんとその罠が『滅び』によるものだったら『滅び』を除去出来る俺が先に入ります」
そこでいったん話を止めファテマを見ると、「続けて、続けて」と先を促される。
「次いで攻撃力、防御力が高いパウラちゃんとアベルドが入って俺とファテマさんを護衛、最後に攻撃、支援の魔法が使えるリアとエミさんが入るという感じでどうでしょう」
ファテマに答えを求めると口を縦に振った。
「ウン、それでいいと思うよ。マサト君正しい判断が出来るじゃないか」
「でも自分の意見が正しいのかと考えると胃が痛くなります」
「自信持っていいと思うよ」
ファテマに優しく肩を叩かれる。
「でも………」
ちらりとマサリア、パウラ、アベルドをの方を見る。
「リアとパウラちゃんは大丈夫か?治癒魔法かけてもらったとはいえ戦闘はまだきついんじゃないか?」
「マサト、私は大丈夫!! それに私にヒドい事をさせたオグマに魔法の一発でも叩き込まないとこっちの気が済まないもの!!」
「そうだよ、お兄ちゃん。私二回も体の自由奪われて仲間を襲ってるし。今回はそのツケを払わせる相手がいるから私燃えてるだよ。お兄ちゃんが止めても私はやるよ!!」
マサリアとパウラには気合が入っており二人の背後に炎が燃え盛っているようでやや引いてしまう。
「アベルドは………」
「当然私も行きます!!」
アベルドの語気は強いが顔色は悪い。治癒魔法で傷が塞がっても流れた血は戻らないのである。
「私も人をコマのように扱うあの外道が許せません!! 止めても行きますよ、私は」
「気合で何とでもなるというのは嫌いなんだよ、俺。無茶だけはするなよ」
「ハイッ!!」
「ファテマさんとエミさんは?」
「私も大丈夫だよ、無理はしない」
「リアお嬢さまが行かれるのなら私も行きます」
「エミさんは相変わらずブレないな。忠犬じゃなく忠狐だな。冗談は置いといて………魔法施設に突入しようか!!」
将人が気合を込めて言うと全員が応と答えた。
ファテマが伸縮自在の棒を伸ばし入り口までの通路を叩く。罠がない事を確認しながら進み入り口にの前までくる。ファテマは入り口の右、将人が入り口の左に着き中を確認する。中は光源がなく様子が分からない。ファテマが魔法で光球を作り中に放る。施設の中で蠢くものを見て将人は思わず呟いた。
「何だ、こりゃ!」
「みんな、こっちに来て!」
ファテマがマサリアたちに声をかける。マサリアたちは駆け寄り中を見てギョッとする。
「こいつら一体何やってるの?」
将人たちが見たものは、無数の人型のゴーレムがせわしなく動いて実験に使うであろうフラスコや薬品が入った瓶、資料、その他を奥に運んでいる光景だった。
将人たちの疑問に答える声が上の方から聞こえてきた。
「ここは廃棄する事になったから研究成果や資料を持ち出しているんだよ」
声が聞こえた上側を向くと魔法使いオグマが約十メートルくらいの所に浮いていた。道化師の仮面と人を小ばかにしたような喋り方が神経に触る。
オグマの姿を確認した途端、マサリアは呪文を唱え火球を生み出し発射した。パウラは落ちていた石を拾いオグマに向け投石する。身体強化されたパウラが投石した石は十分殺傷力があった。火球と石はオグマの一メートル前で見えない壁の様なものにぶつかり破裂した。
「オグマ、アンタここで一体何をやっていた!?」
「ここでは『滅び』が生物に及ばす影響を調べていた。『滅び』をそのまま与えるとすぐに暴走してこちらが望むものにはならず、調整は難航していた。君らが戦ったジャイアントエイプは『滅び』の力で暴走したものだ。だが、君たちが持ってきてくれた鉱石が状況を一転した。あんなクズ鉄に『滅び』を蓄積できるとは思いもよらなかった。あの石を用いる事でこちらが望むものが出来上がった。二人には―――」
オグマはマサリアとパウラをちらりと見る。睨みつけているマサリアとパウラを見てクックッと笑う。
「―――『滅び』の石の実験体となってもらったがお気に召さなかったようだね」
「当たり前でしょ。この人格破綻者!! 降りてきなさい!!」
「お兄ちゃんが許しても私は許さないよ!!」
「俺も許してないって!!」
将人は盾をオグマに向け『氣』を放出した。『氣』は障壁を貫通しオグマを直撃した。空中浮遊の魔法を維持できず落下してくるが空中でクルリと一回転し足から着地する。
「それが二人から『滅び』の石を取り除いた『氣』の力か!? 食らってみて初めて分かる、恐ろしい力だ。魔力が打ち消され浮遊の魔法が維持出来なかった」
「流石のアンタも驚いているようだな。もう一発食らわしてアンタのそのふざけた仮面の下の顔を恐怖に染め上げてやる」
将人は盾をオグマに向け『氣』を放出する。オグマの立っている地面が波立ちオグマが地面に沈み始める。『氣』が届いた時にはすでに地面に飲み込まれていた。将人たちはオグマが沈んた場所に駆け寄り地面を叩くか固い感触があるのみだった。
「また、逃げられたか………」
「逃げてはいないよ、まだ仕事があるからね」
オグマの声が辺りに響き渡るが気配はなく、どこにいるのか分からなかった。オグマがそういうと施設の奥から人型のゴーレムが出てきた。一体、二体、三体………何百体ものゴーレムが隊列を組んで進んできた。将人たちは身構えるが、将人たちの前でゴーレムが前進を止める。
「何をする気だ。このゴーレム?」
「………こうするつもりだよ」
オグマの声が響くと空間から闇色に染まった拳大の石が出現し、ゴーレムの一体に埋め込まれた。そのゴーレムから強力な『滅び』の力が放出され、他のゴーレムを取り込み、『滅び』の石を埋め込まれた一体のみが残されていた。そのゴーレムは右手を上げた。右手に滅びの力が集まり放出され、天井は『滅び』の力に抵抗できず破壊される。
「ヤバい、みんな外に出ろ!!」
将人の声で全員が外に出る。将人は盾を構えながら殿を務める。魔法施設前の広場まで避難するがあのゴーレムは追ってこない。施設の破壊に集中しているようだ。
「あれは一体何をやってるんだ?」
「あのゴーレムには魔法施設の破壊と君たちの抹殺を命令してある」
「オグマ、どこにいる!?」
周囲にオグマの姿はなく声のみが届けられている。
「私の事を気にしている場合ではないと思うが。せいぜいアレに抗ってこちらのデータ収集に協力してくれ」
魔法施設が完全に崩壊した。瓦礫の中からあのゴーレムが飛び出し、こちらに向かって突進してくる。
「どうやって戦おう。俺、戦闘民族の血は引いてないんだ。ワクワクしねえ………」
「マサト、訳の分からない事言ってる場合じゃないわ、来るよ!!」
ゴーレムは将人たちの目の前で止まる。顔には目、鼻、口がなく表情が分からない。怒気も殺気もない為起こりが読めない。だからアベルドが何の前触れもなく吹っ飛ばされ初めて攻撃された事に気が付いたた。
(あのゴーレムの動きが見えなかった。『滅び』の力でここまで強化されるのか。このままじゃ俺たち………)
「みんな、こいつの攻撃は防御出来ない。攻撃するしかない!!」
将人の声に全員が身構える。『滅び』で強化された最悪のゴーレムとの闘いが始まろうとしていた。




