仙人、黒幕と邂逅、VS………
迷路に入って十数分、将人は盾の『氣』を放出して壁を壊す、ファテマとアベルドが壁の向こう側に入り安全を確保し進み、また壁を壊す。そんなルーチン作業を延々と続けていた。
「マサト様、すみません。、私も『氣』が使えたらいいのですが………」
将人の護衛をしているエミリアが深刻な表情で言った。
「この壁に含まれる魔力は相当な物だから、エミさんの盾で同じ事やると恐らく一、二回で『氣』が空っぽになる。『氣』の蓄積量が多い俺の盾じゃないとこの壁の破壊は出来ない。エミさんはこの後、リアを助ける事を考えて」
「マサト様………」
いきなりエミリアに後ろから抱きつかれる。
「エミさん、何を………」
抱き着かれた感触でわかった。エミリアの体は小刻みに震えており、手に触れるとすごく冷たくなっていた。マサリアとエミリアは血の繋がりはないが姉妹のように仲が良く常に一緒にいるのだ。その相手がいなくなったのだから心配で気が気でないのだろう。今はまだ自分を押さえているが、この後、マサリアに何かあったらエミリアは正気を保っていられないだろう。
「エミさん、リアはきっと大丈夫。何かあったとしても必ずみんなで助けましょう」
将人は自分のぬくもりを分け与えるようにエミリアの手を握る。しばらくそうしていたが、エミリアが静かに離れた。
「すいません、マサト様。少し気弱になっていたみたいです。リアお嬢さまは必ず助け出します。マサト様も協力して下さい」
「マサリアは俺の仲間でもあるんです。必ず助け出します!!」
「マサト君………パウラも連れされれてるんだよ、忘れないでね。でもってお姉さんも慰めてほしいなあ」
壁の向こうから戻ってきたファテマにも抱き着かれてしまう。
「からかってる場合ですか………パウラちゃんも仲間です。当然助け出します!!」
「そうです、お二人は必ず助けるんです。ですから早く行きましょう、マサト殿!!」
アベルドが少しムッとした表情でファテマを引きはがし将人を引っ張っていく。
「何を怒ってるんだ?」
「怒っておりませんので!」
壁の穴の向こうに消える二人を見てファテマの疑惑は濃くなった。
(アベルド君、君ってやっぱり………)
ファテマは腐った脳の持ち主のようだった。
それから数分、最後の壁を突破し、魔法施設正面の広場に出た。
「何かおかしいねえ………」
ファテマがぽつりと呟く。
「おかしいって何が?」
「あの迷路、侵入者に対する物なら罠の一つもあると思ったんだけど」
「一直線に通ってこれたからでは」
「そうかもしれないけど………この広場だって私ならモンスターの一匹でも配置して侵入者を襲わせるんだけどね。あのジャイアントエイプクラスを出したら全滅させる事も出来るだろうにそんな事もしていない。どういう目的であの迷路を作ったんだろうね?」
「君らの考えは正しい。本来は侵入者撃退の為の迷路だがそれでは君たちに感謝の意を伝える事が出来ないい為罠を解除したのだよ」
広場の中央の空間が割け、そこからローブを纏った者が現れた。顔には人を小馬鹿にしたような道化師の仮面を被っていた。仮面を被っている為声がくぐもっているが声の感じからして男のようだ。
「アンタ、何者だ? 感謝って何のことだ?」
将人は盾をローブの男の方に向けながら問う。
「一つ一つ答えて行こう。私はオグマという。ある組織に属する魔法使いだ」
「で、そのオグマさんが俺たちに何で感謝してるんだ?」
「一つは失敗作であるジャイアントエイプを倒してくれた事、もう一つは君たちの武器や防具、これに使われている鉱石が我々の目的に非常に有益なものでな。これをもたらしてくれた君たちに感謝の意を表したい」
「感謝の意を表したいというなら、入り口で連れ去った二人を、マサリアとパウラを返してもらおうか?」
「構わんよ」
オグマがあっさりと言い、指を鳴らす。オグマの隣の空間が割け、そこからマサリアとパウラが出現した。二人共顔を下に向けている為表情が見えない。マサリアは連れ去れれた時と同じ出で立ちだが、パウラはプレートアーマーが脱がされており私服に大剣という出で立ちだ。
エミリアとファテマが二人に駆け寄りる。
「リアお嬢さま、お嬢さま………」
エミリアが涙を流しながらマサリアを強く抱きしめる。
「パウラ、アンタ大丈夫なの、冒険者なんだからすぐに捕まったりとかしないでよ!?」
ファテマがパウラの体をペタペタ触りながら体調を確認する。声を荒げていものの心配からくるもので険悪な感じはなく、目の端に涙を浮かべていた。喜ぶエミリアとファテマを見てアベルドももらい泣きをしていたが将人だけは違和感を感じていた。
(マサリアもパウラも感情豊かな方だ、あんな風にされれば照れたり泣いたりするもんだろう。それなのに何であの二人無表情なんだ? しかも武器を手放していない。あれじゃあまるで………)
将人がオグマの方を見ると体が僅かに震えていた。笑っているようだ。その瞬間将人がマサリアがパウラが声を上げていた。
「二人とも、逃げろ!!」
「エミ………早く………逃げて!!」
「お姉ちゃん………逃げて!!」
三人が叫んだのと同時にマサリアは装備しているバックラーから黒い光が放出されエミリアに直撃し、後方へ弾き飛ばされる。パウラがファテマを突き飛ばしバランスを崩した所へ大剣で切りつける。ファテマは咄嗟にバックラーで防御、バックラーから『氣』を放出、パウラの大剣とぶつかり合うがすぐに押し負け、弾き飛ばされる。
「リア、パウラちゃん………オグマ、アンタ二人に何をした!?」
オグマは我慢できないというように哄笑を上げる。
「だから言ったろう、これは感謝だと。君たちの武器や防具に使われている鉱石は『氣』という厄介な力を蓄積する事が出来るが『滅び』の力を蓄積する事が出来る。二人には『滅び』の力を込めた石を体内に埋め込むんだ。それにより『滅び』の力が効率的に使えるようになった。この鉱石を持ち込んだくれた君たちに感謝の意を込めて彼女らに君たちを殺させてあげよう。私の感謝、受け取ってくれたまえ!!」




