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仙人、異世界で無双する  作者: サマト
第三章 ラクレール村事件
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仙人、神を殺す、ラクレール村から脱出

将人は空間のふちに手をかけよじ登った。下で見ている皆は将人が空間に飲み込まれたように見えていた。


「ちょっとパウラ、マサト君止めて!!」


パウラは体にかかっていた重量が消えた事を不思議に思い上を見上げると、空間に将人が空間に飲み込まれるように見え咄嗟に空間から出ている足を掴もうとするが間に合わない。


「お兄ちゃんが消えちゃった!!」


「パウラ、私も肩車して。あそこの空間には何かある。私たちも行くよ」


「わかった!!」


パウラがファテマを肩車をし、パウラの肩の上に立ち上がり将人が消えた辺りに手を伸ばす。柔らかいものが手に当たる。気色の悪い感触に思わず小さな悲鳴を上げる。


「目が、メガァァァ………」


一方気色の悪いものもヤバイ位置に指が入った為、どこかの大佐の様な悲鳴を上げていた。ファテマが悲鳴を上げたものを見上げる。そこには将人の顔があった。


「マサト君、無事なのかい?」


「さっきまでは大丈夫でしたが、今攻撃を受けて無事じゃありません………」


「ゴメン、これは不幸な事故なんだよ。それよりどうなっているの、これ」


「俺もよく分かりません。だからこれからこっち側を調査してきます」


「調査するって一人で? 一人じゃ危ないよ。私たちもそっちに行くからしばらく待ってて」


屋敷の裏手の蔵からハシゴも持ってきて、空間の縁にハシゴをかけのぼる。ファテマ達は広がる光景を見て思わず声を上げる。


天井までの距離は約20メートル、床も天井も白い大理石で覆われ光が一切入ってこない。そんな空間であるにもかかわらずほのかに明るかった。将人は隣にいたマサリアに聞くとこれは魔法の光ではないとの事だった。壁に近づき確認すると苔が光っていることが分かる。


「ヒカリゴケってやつか。光源があって助かるな。これから何があるか分からないし力を温存するに越した事はない」


「まったくもってその通り。だからマサト君には特に休んでもらわないとね」


そういってファテマが指示を出す。戦士であるパウラとアベルドが前衛、魔法使いであるマサリアとエミリアが後衛、戦闘も魔法もそこそこ出来るオールマイティなファテマが中衛、将人は体力温存、『氣』の回復に努める為ファテマの横に付き、戦闘があった場合は様子見となる。


「これだと俺何もする事がないんですが………」


「ユニスが出てきた時対抗できるのが君だけだからね。もしユニス以外の相手が出てきたら私たちが戦うから無理をせず力の温存に努めてほしいんだ」


「そういう事ならわかりました。みんなすまないがよろしく頼む」


将人に言われ全員が応と答える。


陣形を組み、警戒心がら進んで一時間ほど時間がたった。どこまでも一本道で終わりがなかった。


「ここは一体どこなんだろう、どう考えてもラクレール村じゃないよね」


マサリアが不安げに言った。


「どこであろうとこれだけ歩いてるんだもん。ラクレール村を出ているよね。上に向かって攻撃魔法を打ったら外に出れないかな」


「パウラ~、そんな事したら生き埋めになるでしょうが、このおバカ。でも、もう少し歩いて何もなければ元に戻り事を考えた方がいいかもね」


後退すべきか迷い始めた時ようやく変化が見られた。通路よりさらに広い場所に出たのだ。その中央にあるのは石造りの神壇だった。神壇は黒い薄絹が足らされており中を見る事が出来なかった。そこから噴き出てくる邪悪な魔力に全員が踏み出す事に躊躇していた。そんなか将人は一歩踏み出した。


「マサト、行けるの?」


「流石にチト厳しい。でもやらないと、みんなはそこで待ってて」


将人は邪悪な魔力に当てられ、眩暈に襲われ嫌な汗が噴き出す。その場に倒れそうになるが『丹田』に『氣』を籠める。簡易的な『氣』の障壁を作るが力は弱い。それでも絶える事は出来た。黒い薄絹に手をかけ力任せに引きはがす。そこにはあったのは胎児のミイラだった。人の魂を養分に生かされ続けている胎児のミイラ。将人はこれを見て破壊しなければと、『三体式』の構えを取り『崩拳』を放つ。だが、ミイラが放つ魔力に押し負け弾き飛ばされる。将人はミイラを睨みつける。ミイラから白い光が放たれその中から少女が現れる。神も肌も白い、瞳だけが血のように赤い神秘的な少女、ユニスだった。将人は『氣』を全身に循環させるが生成速度が遅い。


(こんな『氣』じゃ戦いにならない。逃げるのも難しいぞ、どうする………)


将人とユニスが対峙する。視線を合わせユニスに敵意がない事を悟る。


「あなたを待っていました。マサトさん」


「待っていたってどういう………」


「私を殺してください!! あなたの不思議な力なら私を殺す事が出来る。早く!!」


油断させる罠かと思うがユニスの必死さに将人は考えを改める。


「私の中で育っているものがあります。それはあと二日で生まれてしまう。お父さんは私を蘇らせたい一心で私が訴えても信じてくれなかった」


「育っているものって何なんだ?」


「おそらくは………『神』」


「さっき俺を弾き飛ばしたのは………」


「あたしの中で育ってる『神』が無意識に防御したものだと。今なら私がまだ私が抑え込む事が出来ます。だから、早く!!」


将人は溜め息を付き、『三体式』の構えをとる。ユニスは将人の構えを見て膝を付き、両手を組み祈るような所作をする。


「俺の国の宗教には輪廻転生って言葉がある。死んであの世に行った魂がこの世に生まれ変わってくることを言う。ユニス、あなたの次の生はいいものになることを祈っている。元気に生まれて、友達や好きな人が出来て、子をなして、孫に囲まれて死ぬような普通の人生になる事を祈ってる」


「………次の人生があるのならそのように生きてみたいです」


泣き笑いのユニスを見て将人は悲しくなる。鎮魂の意志を込めながら『崩拳』を放つ。拳はユニスをすり抜けその後ろにある胎児のミイラを突いた。拳に込められた『氣』がミイラに浸透し破砕した。それと同時にユニスの体が光の粒子となり虚空に消えた。消える瞬間「アリガトウ」という声が聞こえた。


「どんな事情があったとしても殺した人間に感謝なんてしたらアカンよ………」


将人はホロホロと涙を流していた。


「君はユニスを殺したんじゃない、救ったんだよ。誇っていい………」


ファテマがそう言ってポンと肩を叩く。


「あのお姉ちゃん笑ってた。お兄ちゃんだからで来た事だよ」


パウラも肩を叩く。


「マサト、あまり落ち込まないでね。パウラが言った通りユニスは笑顔で逝けたんだから………元気出しなさいよ」


マサリアは困った様に頬を掻きながら頭を一撫でした。


アベルドが将人に飛びついた。


「マサト殿ォォォ~。私は感動しました。剣も拳も何かを倒す為にあるものだと思っていました。でもユニスを倒した時のあの拳には倒す意志ではなく慈悲の意志が籠っているように感じました。私もあのような一撃が出せるよう精進します」


(いつも通り『崩拳』打っただけなんだけどな………)


「マサト様………」


エミリアが手を差し出してくれる。将人はエミリアの手を取り立ち上がるがさらに引っ張られる。そしてエミリアが将人に抱き締められる。鼻孔をくすぐるいい匂い、柔らかい感触や体温に慌てていたが優しく背中を叩かれていると気分がとても落ち着いてくる。エミリアがすっと離れ「元気を出してください」と一言。慰めてくれたらしい。


「俺、目に見えて落ち込んでいたのか………みんな優しいな」


「あとは結界の解除だけだね、みんな行こう!!」


来た道を戻り、ダドリーの屋敷を出るとラクレール村を包んでいた結界が解除されていた。ユニスを倒した事が関係しているのだろうか、それは分からない。でもこれはチャンスでもあった。宿屋に戻り荷物をまとめ早々に村を出た。数日かけて街道に出て、そこを走る馬車を捕まえ、近くの街まで乗せてもらえるよう話をつける。将人は馬車の荷台に乗り空を見上げる。ラクレール村がどちらの方向か分からないがあたりを付けてそちらの方向を向いて合掌した。ユニスも村の人たちもついでにダドリーとハイゼンももう一度転生して普通の人としての人生を送れますようにと祈らずにはいられなかった。









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