仙人、ダドリーの屋敷を調査する、空間の穴
将人たちは再びダドリーの屋敷に来ていた。屋敷の塀の周りには『滅び』の力が抜けただの抜け殻となった村人の遺体が山積み状態となっていた。遺体はミイラ状となっており悪臭を放つことはなかった。将人は遺体に手を合わせ瞑目する。ファテマ達も将人をまねて瞑目し、それから屋敷の門をくぐった。
「マサトがやったこの手を合わせるのはどういう意味があるの?」
マサリアが胸の前で手を合わせながら聞く。
「これは合掌と言って右手が仏、こっちで言う神様、左手が生命を持つ者、人を表していてこれを合わせると人が神様に成る、つまり未練を無くして仏になる事であの世に行けるって意味になる。調和の意味も持つな。俺の国の宗教で行われる所作ね、これ」
そういって将人も手を合わせる。
「それはさておき、その、地水火風の神様の像を確認しようか?」
結界破りに失敗した将人にマサリアが次の手段を提示した。
―――ダドリーの屋敷を調べてみないかと。
マサリアがダドリーに捕まった時の事を思い出し話してくれた。
「ダドリーと顔合わせをしていた時、私ちょっとお花を摘みに行ったの。その時に地水火風の四神の像を見つけて、普通だったら外側を向かせて災厄なんかを睨みつけて近づけさせない働きがあるのにここの場合はその逆で屋敷の方を向いてたからおかしいなと思ったの。屋敷の内側に何かあるのかなって。それを聞こうと思ったら今回の事態になっちゃった」
それを聞いて将人は溜め息をつく。
「何よ」
マサリアがムッとする。
「リアの瞬間記憶能力、調査を行う上では有能な能力何だよ。今回の事がなくても何かしらの事件が起こった時は探偵役になってもらおうと思ってたんだが事件の発端になるとは思わなかった。これはこっちの落ち度だな、スマン」
頭を下げる将人に慌てるマサリア。
「急に謝られても困るよ。私もダドリーじゃなくてファテマさんに相談しておけばよかったんだし、私も悪いよ」
マサリアも将人に頭を下げる。
「ところでマサト、タンテイって何?」
「謎を解明する人って事。それは置いといて、神様の像が屋敷を向いていたって事だけど、その神様はこの屋敷のどこを向いてたんだろうな。分かる?」
「それはこれから調べてみればわかるでしょ。行こう、将人」
頷きマサリアの後についていく将人。
それから屋敷の東西南北にある地水火風の神の像が向いている方向を確認し視線が合わさる場所を特定する。そこは昨日ダドリーと死闘を繰り広げたエントランスの中央だった。
何もない空間を見上げて途方に暮れる一同。
「どうしようか?」
ファテマが皆に問う。
「四大の神が向いてる方向は間違いない筈だよな。昨日の戦闘時もここに何か置いてあった感じではなかったし………」
ぶつぶつ呟きながら考える将人。答えに期待し将人の周りに詰まるファテマ達。
「ファテマさん、リア、エミさんはこう何というか目に見えないものを探索するような魔法は会得してないの?」
「私は主に攻撃魔法しか会得してない」
「右に同じ」
「すみません、私もです」
ファテマ、マサリア、エミリアが頭を下げる。
「いや、いいんですよ、いいんですよ。とするとどうしよう………試してみるか」
「ん、マサト君、何かいい方法があるのかい?」
「お兄ちゃん、何やるの?」
「マサト殿、私に出来る事があるなら何でも言ってください」
「マサトって何気に万能だから羨ましいわ」
「マサト様………」
期待、羨望、呆れ、色々なものが混じった視線にさらされ、プレッシャーに動揺する将人。
「期待はしないで下さい。うまくいくかどうかは分からないんですから………」
将人はその場に座る。右足を左の股に乗せる座り方で半跏趺坐という。結跏趺坐の略式の座り方で足の負担が少ない座り方である。左掌の上に右手を開いて乗せ、互いの親指をくっつける。
「これからちょっと俺の事見えにくくなると思いますが消失したわけじゃないので慌てないようお願いします」
将人は念を押し目を閉じる。行うのは『全身周天』の前段階の修行法『小周天』だった。『丹田』に『氣』を集中し、任脈(体の前面の正中線)、督脈(体の背部の正中線)に『氣』を通す。『小周天』を行う事数十分将人の体に変化が起こる。
「………あれ、おかしいな。ねえ、お姉ちゃん、お兄ちゃんそこにいるよね?」
「パウラもそう見える。私の目がおかしくなってるわけじゃないみたいだね」
「マサト殿、これは一体………」
「マサト様………」
「マサト、アンタ何やってるの。本当に体がボンヤリしてる………」
将人の体の輪郭が目に見えて薄くなっていた。全員が止めるべきかと考えるがあわてるなと念を押されている為止める事が出来ない。将人は周囲の気配に同化しようとしている為視認しづらくなっているのだ。今将人は地水火風そして空間と一つになっていた。それ故に周囲の細やかな変化が感じ取れるようになっていた。ファテマ、パウラ、マサリア、エミリア、アベルドの気配、呼吸、体温、それから足元か伝わる地面の冷たさ、周囲の気温、湿気、臭い、空気の流れといったあらゆるものを感知しておかしな事に気が付いた。将人は『小周天』を終え、首や肩を回し立ち上がり、その場でピョンピョン飛び跳ねる。
「マサト何してるの?」
「この真上辺りの空気の流れが少しおかしいから調べたいんだが届かない」
「それならパウラの出番だよ、お兄ちゃん」
パウラが肩車をして立ち上がる。それだとまだ届かない為、パウラの肩の上に立ち上がる。バランスを取りながら僅かに空気を吸い込んでいる空間に手を突っ込むと下で見ていた全員がギョッとした。将人の手が無くなっていたのだ。手を引き抜き今度は顔を突っ込むと将人の頭が消失した。しばらくすると顔を出しこうう言った。
「見つけた!! これがダドリーが隠したがってたものだ―――ユニスはここにいる!!」




