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転生先は隠世!?〜属性過多の妖怪達に愛され過ぎて、念願のスローライフは享年1日で終了しました〜  作者: 桜桃
第1章 - 夜の来訪者編 -

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第1章 夜の来訪者編 - 第3話 「章タイトル詐欺」


翌朝。


隠世かくりよ生活一日目は情報量の暴力に始まり、静かだった夜は、種族混合淫魔の馬乗りによって潰えた。


なのに、あれだけのことがありながら、よく眠れた。


すぅぅぅう―――


美月は大きく息を吸った。


やはり、元々(あやかし)だからなのだろうか。

人間界にいた時よりも、 空気が体に馴染む。


溜まっていた疲労もしっかりと回復していた。


しかし。


どういうわけか、体が動かない。


美月はゆっくりと瞼を上げた。


ふかふかな毛布。


開いた窓からは柔らかな風と朝の日差しが入り込んでいるはずなのに、開いた目に映る景色はなぜか暗い。


―――“開いた”、窓?


「よォ」


金色の目と目が合った。

昨夜同様自分の上に跨っているのは。


爽やかな朝の幕開けを背中に背負っている、爽やかさとは無縁の属性2種盛り淫魔。


「マ゜ーーーーーーーーー!!!!」


穏やかに始まるはずの朝に、美月の断末魔が響いた。


「だから悲鳴特殊すぎんだろ!」

 

ジャジーは自身の尖った耳を押さえる。


「ねぇ朝なんだけど!」

「だからなんだよ」


美月はジャジーの肩を押した。

当然、2メートル程ある巨体は鎮座する岩のごとく、びくともしない。


「これがラノベなら、作者多分昨夜の段階で章タイトルを“夜の来訪者”とかにしてるよ」

「夜の来訪者が日中も来訪しただけの話だろ」

「章タイトル詐欺だよ!」


ぐいぐい肩を押して抵抗をしている美月を、ジャジーは真顔で見下ろした。


「勝手なイメージしてる方が悪ィ」

「吸血鬼とか淫魔とかって夜しか動けないもんじゃないの!?」


何かで読んだ伝承や人間界の創作では、大抵の登場シーンは夜である。


ジャジーはそんなことを知る由もない。

この世界で起きている事実が全てだ。


「今動いてんだろ」

「イメージと違う!」

「つーか最近の吸血鬼は日中も普通に起きてんぞ」

「初耳だよ!」


もっと知るべきことはあるはずだ。


しかし隠世かくりよ生活二日目に知った事は、夜の種族だと思っていた存在の、現在における生活の実態。


ジャジーは美月の服のボタンへと手をかける。


ボタンをつまみ、そのまま止まった。


「お前が望めば、今からもっと動けるぞ」


怪しげに口角を上げると、白い八重歯に朝日が反射した。


「……」


無駄に顔が良い。

しかし昨日、許可なく触らないという話をしたはずである。


「昨日、許可なく触らない宣言したよね」

「あぁ。だからお前自身には触れてねぇだろ」


ジャジーが乗っているのは美月の上にかかった布団の上。

触れているのは美月の部屋着。


つまり。

肌には触れていない=宣言は守っている。


最悪の解釈である。 


美月は彼がつまんだままの自分の服を引いた。


「私の服も私自身の判定に入るよ!」

「服も入んのかよ」


ジャジーの指が止まった。

しかし止まっただけであり、目の前の男の指は執念深く、ボタンへと居座っている。


「……じゃあ、一個だけ開けさせろ」

「あなたは昨日から今に至るまで何を学んでる?」

「お前が変な鳴き声の美味ぇやつってこと」

「可食モンスター枠!?」


だめだ。

この男は宣言の抜け穴を探して突破しようとするわ、交渉まで始める始末。


美月は、ボタンへと手をかけたままのジャジーの指を掴む。


「おっ」


美月から触れられた事実に、ジャジーの羽がわずかに震えた。


直接触れたことで、飢えが補填されていく。


「(……やっぱ、すげぇ)」


補填されていく感覚に浸っていた。


その時。


「ふんっ!」


美月は、ジャジーの関節の動きとは逆方向へと力を入れた。


「痛ぇ!!」


ジャジーの上半身が飛び起きる。


ようやくまともに朝日を拝むことができた。


「最小の動きで最大の効果出そうとすんな!」

「話を聞かない輩は効率重視です」


美月はジャジーに対し心底呆れた視線を送りながら、身だしなみを直そうとボタンをつまんだ。


「おい、せめて一個開けといてくれ」

「なんで私があなたの希望で服の施錠を解かなきゃいけないの」

「匂いも美味ぇんだよ」


ジャジーは真顔で告げた。

当たり前だろとでも言いたげである。


「ダクト飯みたいなことしないでよ!」


美月は勢いよく最後のボタンまで留める。

ジャジーは露骨に残念そうな顔をした。


「ほんとに朝から何しに来たの!?」


美月はボタン以外に乱れた服を直す。

目の前の男はやや考えるような素振りで視線を下げ、再び美月へと視線を戻した。


「……お前が安全か見に来た」


本音と建前がありそうな間があった。

本音の方は聞くまでもない。


「で、結果は?」

「よく寝てた」

「よく寝てる人を見たなら次にする行動は?」

「触る」

「不合格!」


美月は両手で✕を作り、ジャジーに突きつけた。


「私、鳥の餌台じゃないんだけど!?」

「インキュバスも入ってるっつったろ」

「どっちにしろ食べに来てるんじゃん!」


隠世かくりよ生活、二日目。

美月の朝食より先にやって来たのは、ジャジーの食事タイムだった。






第1章 夜の来訪者編 - 第3話

「章タイトル詐欺」-完-

→第1章 夜の来訪者編 - 第4話

「男女の関係性は友達や恋人だけじゃない」へ

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