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転生先は隠世!?〜属性過多の妖怪達に愛され過ぎて、念願のスローライフは享年1日で終了しました〜  作者: 桜桃
第4章 - 穏やか(?)な日常編 -

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第4章 穏やか(?)な日常編 - 第1話「緊急会議パニック」



朝食を終えた美月は、卓上へ一枚の紙を広げた。

 

そこには、昨夜の告白など微塵も思い出させない妙に事務的な文字が並んでいる。


「緊急会議を開催します」


びしっと宣言した美月に、向かい側へ座っていたほうが姿勢を正した。


「議題は何でござるか」

「業務の振り分け、補給時間の固定化など、多岐たきにわたります」


その隣で、壁にもたれていたジャジーが片眉を上げる。


「理由は」

「穏やかな日常を送るため」

「はいフラグ立った」

「立たせてないよ!」

「勝手に立つんだよ」

「立たせないで!」

「既に会話が事故を起こしているでござる……」


ほうが額へ手を当てた。


するとジャジーが、その横顔をじっと見る。

「……お前、そういうことが分かるって意外とムッツリなんだな」

「ムッツリではござらぬ!」

「朝から何の会議してんの!?」


美月は卓をぺしっと叩いた。


「はい! まず仕事の振り分けから!」


紙へ視線を落とし、最初の項目を指で叩く。


「ジャジーは飛べるから、異常に育った茎や葉っぱの剪定」

「異常に育てたのお前だろ」

「気合が表出しちゃいまして」

「表出の規模じゃねぇ」

「あとなんか美味しいもの持ってきて」

「急にパシリにすんな!」

「そろそろまともにタンパク質が食べたい」


美月は切実だった。


最近の食卓を思い返せば、野菜、野菜、野菜。

“肉なし肉じゃが”という哲学料理まで誕生した。


「つっても、今は勝手に魔獣も狩れねぇぞ?」

「え゛!」

狩猟しゅりょう資格がいる」

「じゃあそれも取ってきて」

「パシるために資格取らせんな!」


美月は次の項目へ指を滑らせる。


「じゃあ次はほうね。今まで通り野菜の収穫。それと散水もお願い」

「承知した。しかし」


ほうが首を傾げる。


「妖力栽培は、水を必要とせぬのではないのか?」

「分かってないなぁ」


美月は腕を組み、なぜか得意げになる。


「お肌の潤いを補給するのに、いくら化粧水塗ったところで、普段から水分をしっかり取ってなかったら意味ないでしょ?」

「けしょうすい」


ほうの思考が止まり、ジャジーも止まった。


「またよく分かんねぇ例出たな」

「ベースが潤ってなかったら意味ないってこと!」

「しかし、以前収穫したものは水を与えなくとも美味であった」

「さらに美味しくなるの!」

「……なるほど」

「納得すんのかよ」

「美月殿がそう申すのであれば、試す価値はござろう」


 美月は咳払いをした。


「次は補給について!」


その瞬間。


ジャジーの顔から、少しだけ余裕が消えた。


美月の目が細くなる。


「以前私は、ジャジーにキス一回でどのくらい保つのか聞きました」

「……おう」

「あの答え、うやむやなままなんですけど」

「……」

「ジャジー?」

「……二日」

「二日!?」


美月が勢いよく身を乗り出した。


「一週間とかじゃないの!?」

「淫魔買い被りすぎだろ!」

「だって淫魔だよ!?」

「普通ならキスだけじゃねぇ!」


ジャジーも負けじと身を乗り出す。


「最後までやって保つのは一日だぞ!?」


「さ、最後まで……」


美月の顔が一気に赤くなり、隣ではほうが目元を片手で覆った。


破廉恥はれんちでござる……」

「生態の話だ!」

「朝の卓で語る生態ではござらぬ!」

「俺にしてみたら美月が飯食うのと同じ扱いだ!」


ジャジーは美月を指さした。


「けどよ!美月のキス一回で二日保つんだぞ!? そっちの方がおかしいんだよ!」

「そういえば、福徳系とは言われたなぁ……」


美月は腕を組むと、紙へ何やら書き込んだ。


「じゃあジャジーは二日に一回。時間は昼ということで」

「“ということで”、じゃねぇ!」


ジャジーが即座に卓へ手をついた。


「え!?なに!?」


「キスをシフトみてぇに組むな!」

「だって二日保つんでしょ?」

「俺とのキスが業務になってんじゃねぇか!」

「違うの?」

「違ぇよ!」

「補給でしょ?」

「っ、お前なぁ……!」


ジャジーの頬が、じわじわと赤くなっていく。


「一回“補給”って言葉から離れろ!」

「でも」

「俺は⋯っ⋯お前のこと好きだっつったんだぞ⋯⋯!?」


美月の肩がびくっと跳ねた。


「お前を好きだっつった男が二日に一回、決められた時間にキスして終わりで納得するわけがねぇだろ!」


耳まで赤い。


言った本人も恥ずかしいらしい。

しかし、美月の顔も、それ以上の勢いで熱を持っていた。


「……だから……」

「あ?」

「だから固定化したいんだよぉ……!」

「⋯⋯は?」


美月は紙を握りしめた。


「『友達以上恋人未満です』って言った私の情緒が持たないから、決まった時間にしたかったの!」

「……」

「好きにキスしてたらもう脳が“恋人”って認識しちゃうじゃん!」


美月は真っ赤な顔のまま続ける。


「私はちゃんと、自分の言葉で返事返してからステップアップしたいの!」


しん、と居間が静まり返った。


美月も数秒後、自分の発言を頭の中でもう一度再生した。


「……」


ジャジーの口角が、ゆっくり上がっていく。


「……お前」

「⋯⋯なに」

「それ、次の段階に行く前提の話だったぞ」


完全に何かを確信した顔だ。


「……ぁ……」


美月の顔から血の気が引き。


次の瞬間、倍になって戻ってきた。


「違⋯っ⋯!そういう意味じゃ⋯⋯!」

「へぇ〜」

「その顔やめて!」

「仕方ねぇなぁ」


ジャジーは完全に勝ち誇った顔で腕を組む。


「返事が返ってくるまでは、シフト制キスで我慢してやる」

「勝ち確顔やめて!!」


美月は両手で顔を覆った。


「別に確定してないからね!?」

「でもステップアップしたいんだろ?」

「言葉尻を拾うなぁ!」


そんな二人の横で。


ほうは頬を赤らめながらも、会議の紙の次の項目―――


“吸血について”の文字を、真面目に見つめていた。





第4章 穏やか(?)な日常編 - 第1話

「緊急会議パニック」- 完 -

→第4章 穏やか(?)な日常編 - 第2話

「連想ゲェムwith種族差異」へ

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