第2期 #1:判決パレ(1)
朝。
妙に騒がしい。
「……何」
ロゼリアはカーテン越しの光に目を細める。
外から、ざわめき。
人の声。
普段より明らかに多い。
(嫌な予感しかしない)
ノック。
「ロゼリア様」
セリアの声。
「入って」
扉が開く。
いつも通り整った姿。
でも、ほんのわずかに表情が硬い。
「外が騒がしいわね」
「はい」
一拍。
「本日、判決に関する発表が行われます」
(来た)
ロゼリアは一瞬だけ目を閉じる。
終わったはずの話。
でも、“完全に終わった”とは誰も言っていない。
「……誰の」
「複数です」
セリアは続ける。
「先日の一件に関係した者、及び」
少しだけ言葉を選ぶ。
「象徴的な意味合いを持つ者たちです」
(つまり見せしめ)
ロゼリアはベッドから降りる。
「で、私も関係ある?」
「あります」
即答。
「主に、“結果”として」
「そう」
(やっぱり)
中庭。
人が集まっている。
貴族。
騎士。
使用人。
普段よりも多い。
そして。
中央には、簡易的な台。
「公開処理か」
ノアが腕を組んでいる。
「形式上は“判決の宣言”です」
セリアが訂正する。
「ほぼ同じだろ」
マイケルが笑う。
「見せ物だな」
フラムは静かに周囲を観察している。
「視線の集中率、非常に高いです」
「そりゃそうでしょ」
ロゼリアは前に出る。
視線が、一斉に集まる。
(……うるさい)
声には出さない。
でも、空気で分かる。
好奇。
警戒。
興味。
そして
評価。
(面倒)
台の上に、一人の男が立つ。
役人。
声が通る。
「本日、ここにて」
形式的な言葉。
長い。
無駄に丁寧。
ロゼリアは聞き流す。
重要なのは中身。
「以上の罪状により、判決を下す」
空気が少し変わる。
ざわめきが止まる。
「第一対象」
名前が呼ばれる。
一人、前に出される。
顔は青い。
震えている。
(まあ、そうなる)
「……」
ロゼリアはじっと見る。
感情は動かさない。
そのまま。
判決が読み上げられる。
処分。
減刑。
条件付き。
いくつかのパターン。
完全な処刑はない。
(意外)
でも。
「名誉剥奪」「監視下」
十分重い。
「……」
周囲の反応。
納得。
不満。
色々混ざる。
(バランス取ってる)
誰も完全に満足しない形。
つまり
政治。
「最後に」
役人が言う。
空気が、また少し変わる。
「本件において、重要な役割を果たした人物について」
視線。
一斉に動く。
ロゼリアへ。
(来るわね)
「ロゼリア・フォン・アルブレヒト」
名前が響く。
ざわめき。
でもすぐに静まる。
「彼女の行動により、本件は収束へと至った」
事実。
でも。
言い方が気になる。
「よって」
一瞬の間。
「その功績を認め、今後の監視対象から除外する」
(……は?)
ロゼリアの目がわずかに動く。
「ただし」
続く。
やっぱり。
「影響力の増大を考慮し、特別観察対象とする」
(結局それ)
ノアが小さく舌打ちする。
マイケルが笑う。
「格上げだな」
「全然嬉しくない」
ロゼリアは小さく呟く。
セリアは冷静。
「想定内です」
フラムも頷く。
「リスク管理として合理的です」
(全然嬉しくない)
拍手が起きる。
形式的な。
誰も本気じゃない。
でも止まらない。
ロゼリアはその場に立ったまま。
動かない。
(終わり……じゃない)
むしろ。
始まっている。
そんな感覚。
式が終わる。
人が散る。
でも。
視線は残る。
完全には消えない。
ノアが横に来る。
「面倒なことになったな」
「元からでしょ」
「まあな」
マイケルも来る。
「有名人だな」
「やめて」
セリアが静かに言う。
「今後、行動にはさらに注意が必要です」
「分かってる」
フラムは短く。
「観察対象、継続」
「知ってる」
全員がいつも通り。
でも。
空気は少し違う。
ロゼリアは空を見上げる。
青い。
何も変わらないように見える。
でも。
中身は違う。
確実に。
「……ねえ」
小さく言う。
誰にでもなく。
「これ、“続き”よね」
誰も否定しない。
できない。
静かに。
確実に。
物語は、もう一度動き出していた。
先日「ファイヤーマーン」を観たんだけど、すごくかっこいい特撮映画だったよ。




