#番外編 5: 分析
机の上に、黒い結晶が置かれている。
静かだ。
何もしていないのに、妙に存在感がある。
(……落ち着かない)
ロゼリアは椅子に座ったまま、それを見下ろす。
「変化はありません」
背後から、フラムの声。
いつもの調子。
感情の揺れはない。
「見れば分かる」
短く返す。
指で軽く弾く。
転がる。
止まる。
それだけ。
(ほんとに、何もない時は何もない)
でも。
あの時。
確かに反応した。
「もう一回」
小さく呟いて、結晶を手に取る。
指先に意識を集中させる。
魔力を、ほんの少しだけ流す。
ぴく。
微かな反応。
内部が、揺れる。
「……やっぱり」
目を細める。
「再現性は確認できました」
フラムが淡々と言う。
「条件は?」
「現時点では、貴女のみが反応を引き出しています」
「他は?」
「無反応です」
横を見る。
ノアが腕を組んだまま立っている。
「貸せ」
「いいけど」
結晶を渡す。
ノアが同じように魔力を流す。
沈黙。
何も起きない。
「……本当に何もないな」
「でしょ」
受け取る。
マイケルも試す。
結果は同じ。
無反応。
「完全に選別されてるな」
「そうね」
軽く頷く。
セリアも試すが、変化なし。
「やはり、ロゼリア様のみです」
(完全に私専用ってことか)
面倒な響き。
でも。
重要でもある。
再び結晶を見る。
(条件は“私”)
それだけじゃない。
さっきの反応。
意識した時だけ。
「フラム」
「はい」
「これ、意図に反応してる可能性は?」
一瞬の間。
フラムはすぐに答えない。
数秒考えてから、口を開く。
「否定できません」
(やっぱり)
「ただし」
続ける。
「単純な意思ではなく、より深い層の可能性があります」
「深い層?」
「自覚していない意識、あるいは記録に紐づくもの」
(記録、ね)
またその単語。
ロゼリアは結晶を軽く握る。
今度は、何も考えずに。
反応しない。
(じゃあ)
少しだけ、意識を向ける。
“知りたい”。
“確かめたい”。
その瞬間。
――ぴく。
今度は、はっきり。
「……なるほど」
小さく呟く。
「意思に近いけど、もっと曖昧な何か」
「はい」
フラムが頷く。
「適合者の内面と連動している可能性があります」
(便利なようで、危ない)
視線を細める。
「で」
結晶をテーブルに戻す。
「これ、何なの」
今までより少しだけ強く問う。
フラムは、わずかに目を伏せる。
珍しい。
「記録体、もしくはその断片」
「断片?」
「完全な形ではありません」
(完全だったらどうなるのよ)
聞きたくない気もする。
「最悪の場合」
フラムが静かに続ける。
「侵食の可能性があります」
部屋の空気が、一瞬止まる。
「侵食?」
ノアが低く繰り返す。
「使用者の意識、もしくは記憶への干渉です」
(はい出た)
危険ワード。
でも。
想定内。
「どのくらいの確率?」
「不明です」
「便利ね、その答え」
「事実ですので」
いつも通り。
でも。
嘘はない。
ロゼリアはしばらく黙る。
結晶を見る。
ただの石。
でも。
確実に普通じゃない。
(使える)
同時に。
(危ない)
どっちも正しい。
「……」
小さく息を吐く。
選択肢を並べる。
使う。
保留。
捨てる。
どれも正解で、どれも間違い。
「ロゼリア様」
セリアが静かに呼ぶ。
「ご判断を」
「分かってる」
短く返す。
もう一度、結晶を手に取る。
軽い。
ただの石みたいに。
でも。
さっきの感触が、まだ残っている気がする。
(これ)
少しだけ、口元が歪む。
「……面倒なもの買ったな、ほんと」
小さく呟く。
でも。
その声には、ほんの少しだけ迷いが混ざる。
視線を落とす。
手の中の黒い結晶。
静かに、何も言わずにそこにある。
ロゼリアは、それを見つめたまま
ぽつりと呟いた。
「……捨てるべきか」
「メイドさんは食べるだけ」は、見ていてとても楽しい癒しのアニメです。"「姫騎士は蛮族の嫁」がとても面白いですねww
私はサッカーはあまり好きではないし、実際、スポーツは得意ではないけれど、ドッジボールはまあまあできる。




