#番外編 4: フラムは、白髪で "冷酷" なメイドである。
部屋の空気が、まだ少し張り詰めている。
原因は一つ。
「フラムと申します」
目の前に立つ、白髪のメイド。
姿勢は完璧。
無駄な動きは一切ない。
声も、感情がほとんど乗っていない。
(圧が強い)
ロゼリアは内心でそう思いながら、手の中の黒い結晶を軽く持ち直す。
「それ、触らない方がいいって言ったわよね」
「はい」
フラムは即答する。
「危険ですので」
「具体的には?」
「不明です」
(不明なんかい)
思わず眉をひそめる。
ノアが腕を組んだまま口を開く。
「怪しすぎるな」
「否定はしません」
フラムは淡々と返す。
「ですが、事実です」
マイケルがくすっと笑う。
「面白いな、この子」
「子ではありません」
「細かいな」
「事実ですので」
(会話が噛み合ってない)
ロゼリアは小さく息を吐く。
「あなた、どこ所属?」
「現在は臨時でこちらに配属されています」
「“臨時”ね」
視線を細める。
怪しい。
でも、嘘をついている感じはない。
ただ――
(説明が足りないタイプ)
「で」
結晶を軽く持ち上げる。
「これ、知ってるの?」
一瞬だけ。
ほんのわずかに。
フラムの視線が鋭くなる。
「類似の記録はあります」
「記録?」
「はい」
それ以上は続かない。
(絶対知ってるやつ)
「詳しく」
「現時点では、断定できません」
「便利ね、その言い方」
「誤情報を避けるためです」
真顔。
一切ブレない。
(……めんどくさいけど、嫌いじゃない)
セリアが一歩前に出る。
「フラム、でしたね」
「はい」
「こちらでの職務は理解していますか」
「はい。護衛補助および環境維持」
完璧な回答。
ノアが小さく頷く。
「動きは悪くないな」
「評価、ありがとうございます」
「褒めてない」
「承知しています」
(全部拾うなこの子)
マイケルは肩を震わせて笑いをこらえている。
「で、実際どのくらいできるんだ?」
「必要な範囲で」
「曖昧だな」
「具体的な指示をいただければ、最適化します」
(融通は効くタイプか)
ロゼリアは少しだけ考えてから、椅子に座る。
「じゃあ、紅茶」
「かしこまりました」
フラムは一礼して、そのまま静かに部屋を出る。
数分後。
戻ってくる。
音がほとんどしない。
カップを置く動作も、無駄がない。
「どうぞ」
差し出される。
一口飲む。
「……」
ノアも無言で飲む。
セリアも確認する。
マイケルはにやっと笑う。
「完璧だな」
「ありがとうございます」
「いや本当に完璧なんだけど」
ロゼリアはカップを見ながら呟く。
温度、香り、味。
全部ちょうどいい。
(なにこれ、怖い)
「基本的な家事は問題ありません」
フラムは淡々と言う。
「戦闘補助も可能です」
「万能ね」
「必要な範囲で」
(そればっかり)
でも、使えるのは確実。
ロゼリアはカップを置いて、再び結晶を手に取る。
「で」
軽く持ち上げる。
「これの話、戻るけど」
フラムの視線が、またそこに向く。
一瞬で集中が変わる。
「さっき、“記録”って言ったわよね」
「はい」
「どういう意味?」
数秒の沈黙。
フラムは少しだけ考えるように目を伏せる。
そして――
「それは」
ゆっくりと口を開く。
「魔道具というより、“保存された何か”に近いものです」
(保存?)
ロゼリアの眉がわずかに動く。
「記憶、とも異なります」
「じゃあ何?」
「断定はできません」
(またそれ)
でも。
嘘じゃない。
分からないけど、知っている。
そんな感じ。
「ただ」
フラムが続ける。
「それは、誰にでも反応するものではありません」
ロゼリアは無言で結晶を見る。
さっきの感触。
確かに、自分だけだった。
「……つまり?」
「貴女が、それに触れた時のみ反応した場合」
ほんの一瞬。
フラムの視線が、ロゼリアに向く。
「何らかの“適合”が発生している可能性があります」
(適合ね)
面倒な単語。
でも。
嫌いじゃない。
「選ばれたってこと?」
軽く言う。
冗談半分。
でも――
フラムは首を横に振らない。
「その可能性も否定できません」
(おい)
ロゼリアは思わず小さく笑う。
「ほんと、面倒なの引いたな」
でも。
その口元は、少しだけ楽しそうだった。
フラムは静かに一礼する。
「現時点では」
そして、続ける。
「貴女がそれに選ばれた理由は、まだ分かりません」
部屋の空気が、ほんの少しだけ変わる。
静かに。
確実に。
ロゼリアは結晶を軽く握る。
微かに、熱を感じる。
(……やっぱりただの石じゃない)
視線を細める。
そして、小さく呟いた。
「いいじゃない」
その声には、わずかな期待が混ざっていた。
理科のテスト、クソ...先生は好きだけど、テストは好きじゃない
試験週間が終わるまであと1日…やったー!!
"オタクに優しいギャルはいない!?" と" マリッジトキシン"は良いアニメです。毎週楽しみにしています。




