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異世界カラオケ大会!? スキルなしの俺に歌バトルの波がくる!

「というわけで、ヒロト君――君も参加だ!」


「なんでそうなるんですか!?」


ギルドの酒場の片隅、クラウスの高らかな宣言とともに、ヒロトは頭を抱えていた。


数日前、ゴブリン掃討クエストを見事に成功させたヒロトたちは、今やちょっとした話題の冒険者パーティーとして名を知られるようになっていた。


そこに飛び込んできたのが、異世界カラオケ大会開催決定のニュースだった。


主催は――もちろん、クラウス=ウィンド=ヴォイスアーツ。

目的は――「この世界に音楽の魂を広める」ため。


つまり、趣味全開である。


「僕がこの大会を開くことで、声の力がどれほど世界を変えられるかを示すつもりだ!」


「いや、世界より先にギルドの空気が変わってますけどね!?」


ヒロトは半笑いでツッコミを入れつつも、内心こう思っていた。


(なんだかんだで、この人が動くと周囲も巻き込まれて、本当にイベントになるんだよな……)


事実、ギルド中はすでに参加希望者で賑わい始めていた。


異世界ロックバンドを結成しようとする転生者たち。音痴を克服したい武闘家。吟遊詩人ギルドからの刺客。


「で、俺はなんで出ることになってるんですか」


「だって君、スキルなしというハンデで挑戦する感動枠だろう?」


「人の人生を勝手に、感動ドキュメンタリーにしないでください!」




そんなやりとりの末、なぜかエントリーしてしまったヒロト。


そして、大会当日――


「ようこそ! 記念すべき第一回《異世界ボイス・フェスティバル》へッ!!」


大音量の司会もちろんクラウスで幕を開けたこのイベントは、思った以上に大規模だった。


特設ステージに魔法スピーカー、客席はギルド員や町民でぎっしり。


「なんで俺、ステージの裏にいるんだ……」


ヒロトは汗をぬぐいながら、自分の順番を待っていた。


(歌なんてカラオケでしかやったことないのに……)


しかし、ルミナが励ましの笑顔を向けてくれた。


「ヒロトさんの歌、聴いてみたいです」


「う……そ、そう言われると……がんばるしかないですね……」


「大丈夫。心を込めれば、届きますから」


レイナは無言で、握り拳を軽く突き出してきた。


ヒロトも拳を合わせる。伝わるのは、言葉よりも熱。


「よし、やるしかないか……!」




前の参加者が終わり、いよいよヒロトの出番が来た。


ステージに上がると、まぶしい魔法ライトと無数の視線が突き刺さる。


(逃げ出したい……でも――)


クラウスの声が、遠くから聞こえた。


「ヒロト君、君の声は――今を生きてる!」


意味がよくわからないが、なんだか元気が出た。


「……よし、いきます!」


選んだ曲は、地球でよく歌っていたバラード系の一曲。


もちろん、この世界に曲なんて存在しない。ヒロトは、かすかな記憶を頼りに――アカペラで歌い出した。


「――いつか見た あの日の空を

もう一度 信じられるのなら……」


静寂の中、ヒロトの歌声がホールに響いた。


高くはない。でも、まっすぐ。

技巧もない。でも、誠実。


会場のざわめきが、いつの間にか止まっていた。


ヒロトは歌い続けた。


自分にできることを、心のままに。


(スキルがなくても……声なら、届けられるんだ)




歌い終わると、しばらく無音が続いた。


が――


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


会場が、割れるような歓声に包まれた。


ルミナは目を潤ませながら拍手を送り、レイナは口元にわずかな笑みを浮かべていた。


クラウスは――


「ブラボォォオオオオオオオ!!!! 世界に響けヒロトォオオオオオオオオオ!!」


観客よりもうるさい叫びで応えていた。


「やっぱこの人が一番騒がしいよな……」


ヒロトはそう呟きながらも、頬が自然と緩んでいた。




その後、大会は大盛況のうちに幕を閉じた。


ヒロトの順位は――最終的に3位。


だが、クラウスの私的ランキングでは、心を震わせた部門1位だったらしい。


「ヒロト君。今日、キミは声の力を手に入れた。つまり、それは――魂のスキルさ!」


「それって、何か役に立つんですか?」


「いいや、特に!」


「いらないよそんなスキル!!」


だが、たしかにヒロトの中に芽生えたものがあった。


自分にできることが、少しずつ増えていく感覚。


(この世界で生きるって、こういうことかもな……)


そう思いながら、ヒロトは空を見上げた。


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