天国と地獄(2)
「…どうして?」
俺はまだ名前も決めていない猫ちゃんを抱きあげて聞いた。
「猫達は天の国に入れんのだ…儂が『全ての猫は地獄で世話をする』と届け出た所為なのだがな…そのせいで向こうは犬ばかり」
「チェンジで」
「早いな。しかも食い気味に答えおるか」
「猫の居ない世界なんて地獄と変わらねぇよ。って地獄の方が天国たぁ可笑しな話だ」
「まぁ、ここで猫ちゃんの可愛さを味わってしまえば、そうなるよなぁ……ならばここに残って猫ちゃん達と暮らすか?」
「……天国に行かなくてもいいのか?」
「正直なところ、地獄を猫ちゃん仕様に改革してからというもの、天国への昇天を望まず地獄への残留希望者が後を絶たんのだ」
「…ってぇ事は…地獄がこうなったのって…」
「儂の独断じゃ」
「アンタ最高だぜ」
「では庁舎の『生活課』まで行って住所変更手続きをするといい。二人の新居もこちらで手配しよう。ちなみに猫ちゃんのエサは無料で配布される」
「…本当に役所みたいだな」
「みたい、じゃなくて本当に役所なんだが」
「しかし新居にごはんまで用意してくれるだなんて、随分金と土地があるんだな。」
「地獄は1万9千由旬(136,800km)が7層もあるからな。定住者が増えた所で誰も困らぬし…」
そして俺と閻魔は互いの眼を見ながらニヤリと笑い、
「「――猫が幸せだったらそれでいい」」
声を合わせてそう言って――笑った。
にゃっ
「そうだ。住所変更届には2人の名前を書くんじゃぞ。その子の名前は決めたか?」
「名前か――」
俺はこの子に出会い、ここに住むことを決めた。
ここが二人のスタート地点なのだ。
だったら――
「この子は――ココだ」
ココは何も言わず、俺の腕の中でグイと背伸びして頬ずりをしてくれた。
これからよろしくな、ココ。
そして地獄は猫と真に猫を愛せる人々の暮らす平和な世界となった。
だが
これが後に――
人間に仕える犬こそ至高、と公言憚らない天国(犬好き)と
猫に奉仕する事こそ人の幸福と主張する地獄(猫好き)による
天国と地獄の住民のみならず、神と悪魔をも巻き込んだ大戦――最終戦争のプロローグであったことは、その時の俺は知る由もなかった。




