八寒地獄(5)
こねこの暖かさで皆に気力が戻り始めたその頃だった。どこからともなく猫の鳴き声が俺達の周りから聞こえ始めた。
にゃー にゃー にゃー
にゃー にゃー にゃー
向かい合う男の肩越しにそちらを見た男が声を上げた。
「あちこちから猫ちゃん達がこっちに向かってくる!」
「なんだってー!」
「きっと暖かい場所を見つけられなかった猫ちゃん達だ!」
猫達は雪の上に可愛い足跡をぽつぽつと作りながら、確実に俺達のところへ向かってきていた。そしてしゃがんだ足の間、股の間から続々と円陣の内側へと滑り込んでくる。
やがて足元に大きな猫団子が形成され、合体し損ねた猫達が俺達の膝の上に乗ってきた。
「なんという事だ…猫ちゃん達が…膝の上に乗ってくる…!」
「腕にはこねこ、足元には猫団子、膝の上にはアンモニャイト…なんて贅沢なひとときなんだ!」
「なんて素晴らしい光景だ…」
「俺、今までの人生で一番感動してる…」
俺達は背中も、後頭部も雪で真っ白にして、背骨が凍り付き身を切り裂くような冷たい風を受けながらも、暖かさで満たされていた。
膝の上では足りず、腕の上にまで乗ってきたキジトラ猫が、俺の顔にスリスリと頬ずりをしてくれた。ヒゲの感触がこそばゆい。
「俺達、猫ちゃん達に愛されたみたいだな…」
「あぁ…猫からの愛程、人生において尊いものは、ない…」
「猫を救うことで俺達も救われる…人生の真理がここにある…」
「俺達は…猫のために生きてこそなんだなぁ…」
俺達は泣いていた。男が4人、丸くなって猫まみれになりながら泣いていた。流れる涙と鼻水を拭く事も出来ず、ただこの悟りを得た感動に震え、涙を流していた。
ぴんぽーん 八寒地獄クリアー
クリアーのアナウンスを遠くに聞きながら、俺達は微睡む様に意識を失っていった。




