叫喚地獄(2)
「あー…死ぬかと思った…死んでるけど…」
今度こそ寝てやる。俺は寝る…寝るんだ…寝てみせ――
その時だ。
カサリと枕の左横が沈む感触がした。
カサカサ…
続けて枕が沈む。顔のすぐ横。どうやら枕の上で猫ちゃんがお座りしているようだ。冷たい吐息が俺の頬を撫でる
すると猫は俺の喉に前足を両方乗せ――寄りかかってきた。
「でゅっふ…」
凭れ掛ってくれるのは嬉しいしフワフワが気持ちいいけど喉っ!喉にグリグリって…
たまらず反対側に寝返りを打つと、猫ちゃんは前足を外し、どこかへ行ってしまった。申し訳ない事をした…そう思いながらも睡魔の誘いに身を委ね――
カサリ
「いででで」
――髪の毛を踏まれた。しかも一本だけとか余計に痛いから。
だがこの程度なら――睡魔の方が――
うにゃにゃにゃにゃ――!
ドドドドドドドドドドドド
どふっ どふっ
「ぐふっ――うぐっ」
脇腹……しかも……2連続……俺はロイター板か……
「け、ケンカしちゃだめでしょ……」
にゃー なぁお
返事が返ってきて、その後静かになった。いう事を聞いてくれたのか。
これで今度こそ――眠れ――
その時、布団の足元から何か、と言っても猫ちゃんだろうが、モゾモゾと布団の中に侵入してきた。
一緒に寝たいのか――それならむしろ大歓げ――
ガブッ
「いだあだだだ」
痛みに耐えられず、猫ちゃんに気遣いながら足をゆっくりと動かす。猫ちゃんは驚いたのかいつの間にか布団の中から居なくなっていた。足、臭かったのか?風呂で洗った後なのに…
――このままでは眠れない。身体が思い切り睡眠を欲しているというのに眠れない。
逆に考えるんだ。寝ようとするから眠れないのだ。むしろ『寝なくていいや』と考えれば……ってそれは無理。眠い。
その時、布団の枕元、俺の顔の前に一匹の猫がやってきた。お座りして俺の顔をジッと見つめている。
逆に考える、か――
俺は布団をまくり上げ、胸の前に空間を作ってあげた。
「おいで。一緒に寝よう――」
するとその猫ちゃんは俺の言葉を待っていたかのように俺の胸元まで歩いてくると、ゴロリと横になった。
「うん、いい子だね。一緒にネンネしようか…」
胸にモフモフの温もりを抱いて眠る――なんて幸せな――
ぴんぽーん ぴんぽーん
あのチャイムで目が覚めた。どうやらぐっすり眠れたようだ。布団の中はもちろん上にも猫ちゃん達の姿は感じられなかった。
顔を上げると、枕の横に『猫のヒゲ』が落ちている。黒くて長い立派なヒゲだった。
それをポケットの中にしまい込む。
叫喚地獄 クリアー
ばこん
「おはようございまぁぁぁぁす」
モーニング落とし床を、俺は布団に入ったまま落ちていった。




