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八寒地獄(1)

寒い――心がとか財布がじゃなくて普通に寒い。

それもその筈、辺り一面銀世界。大粒の雪が空から横殴りに降っている。

気が付けばぬくぬくお布団もどこかに消えている。猫ちゃんの姿も無い……それもそうか。猫は寒さに弱い生き物だ。


「くそっ…本当に地獄って感じだな。しかしこのままじゃあ凍え死んで…って死んでる場合はどうなるんだ…?」

それはさておきどうしたものかと辺りを見回すと、吹雪で白く霞む向こうに人影らしきものが見えた。この地獄に落とされた罪人だろうか。集団で固まりながらどこかへと向かって歩いているように見える。

「おーい!」

声を上げ、手を振りながら膝まで積もる雪を踏み分けながらそちらへと向かう。

「こっちだー!」「ここに居るぞー!」

すると向こうも俺に気付いたらしく、手を振ってくれた。向こうは3人。期待に満ちた眼差しで俺を出迎えてくれたのだが…

「「「「救助隊…じゃあ…ない…よな…」」」」

互いの姿を確認し、4人全員が同じ言葉を口にして肩を落とす。

「やはりここはは地獄なのか…」

「だろうな。今までの地獄と様変わりしすぎだぜ」

「まったくだ…なんせ…」

「「「「猫ちゃんが全く見当たらねぇ」」」」

俺達は互いに顔を見合わせ頷いた。

「ところで何処に向かっていたんだ?」

誰と話しに尋ねると、1人が答えてくれた。

「アテなんざ無ぇよ。“何かないか”と歩き回っていただけだ」

「これ以上こんな極寒の地に居たら氷の彫像になっちまうからな」

「そうだったのか…俺は」

自己紹介をしようとすると、男の1人に手で遮られた。

「こんな世界だ。自己紹介はナシにしようや。互いに地獄に落ちるような奴だってぇのだけで充分だ」

他の一人がそれに続ける。

「あぁ。それに、何時誰が倒れるかも分からねぇ状況だ。途中で誰かが倒れても『知らねぇ奴だ』で終わらせられる。生きても死んでも互いに後腐れナシの方がいい」

「あぁ…その方がいいのかもな」

「とにかくじっとしていたってくたばるだけだ……歩こうぜ」

「あぁ」


それから俺達は『寒さをしのげるなにか』を探し、雪の中を彷徨い続けた。

どのくらい歩き続けたのだろう。先頭を歩く男が呟くように言った。

「な、なぁ…俺、とうとう寒さでおかしくなっちまったのかな…」

「どうしたんだ?」

男はスッと前方を指さした。


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