★双子の悪魔★
みどりと合流したルナたちは、再び悪魔城へと足を運ぶ。
悪魔に取り憑かれた人たちを避けながら、ルナたちは着実に悪魔王のもとへ進んでいた。
「ルナ、あとどのくらい?」
「あと10分くらいだよ。もうすぐで、旧催眠術学校……悪魔城へたどり着く。」
さえの問いかけに、ルナは緊張した面持ちで答える。
「そろそろ見えてもいいのにね。」
ゆかは辺りを探るが、視界はほぼ霧で覆われていた。デビルも気がついたようで、声色を変えながらルナたちを注意する。
「霧が深いのは悪魔城が近づいている証よ。気をつけなさい。」
「やあやあ、デビルさん元気そうだね!」
「そうそう、悪魔王様がお怒りのようですよ。」
広い大通りに出たところで、突如声が聞こえた。
思わず立ち止まると、デビルは大声で叫んだ。
「逃げなさいっ!」
ルナたちは一斉にばらけた。
次の瞬間、耳を押さえても鼓膜が張り裂けそうなほどの、大きな音が響いた。
「え……?」
ルナは目の前に起こっていることがよくわからなかった。
つい先ほどまでルナたちがいた道路の真ん中に、焼け焦げたような穴が空いていた。焦げた穴の周辺は、水がジュウッっと音を立てながら蒸発している。
攻撃が放たれたであろう方向を見ると、二人の少女が立っていた。
燃えるような炎色の髪をした少女。
その隣には透明な水色の髪を揺らす少女。
似通った顔立ち……おそらく双子だろうか。
ルナでも分かるほどの、強い闇のオーラを放った二人が、立っていた。
「デビル、あの二人は……?」
「悪魔王の側近よ。悪魔王の使いがいない今、その代わりとなる人物が必要だったのよ。」
みどりの代わりとなった悪魔……つまり、悪魔王の次に強いとされる力を持つ悪魔が、すぐそこに立っている。
「悪魔王は、あれ以上に遥かに強いのよ。それでも、ルナ、あなたは悪魔王と戦えるのかしら?」
「……正直、怖いよ。でも、私たちしかできないことなら、私は諦めない。それに、世界がこんなになったままで、黙って立っていられるわけないよ。」
周りをみれば、悪魔と化した人々が自分を出せず、悪魔に取り憑かれたまま封じ込まれている。
ルナ自身も、デビルに取り憑かれていた日々を思うと、計り知れないほどの苦痛に感じる。
「悪魔を封印……いや、封印だけじゃ、また同じ事が起こる。私は悪魔を、倒す」
「悪魔を倒す……。ルナ、それは過去の勇者も果たせなかった無理難題な話よ。でも、あなたのそのまっすぐな目を見れば、できない事でもなさそうね」
「アタシは悪魔王の使い、ナイトメア! メアって呼んでね! 裏切者と悪魔への反逆者を処刑しにきた悪魔だよ!」
「同じく悪魔王の使い、ダークネスです。メアからはネスと呼ばれています。早く出てこないとこの辺り一帯を平地にしますよ。」
二人は今にも強い魔法を放ちそうな勢いだ。
「ここは隠れても無駄ね。ルナ、2人の前に出ましょう。悪魔王と戦うには通らなければいけない道よ。」
デビルの言う通り、この二人が倒せなければ悪魔王を倒すことは難しい。
ルナは二人の方へ走り出そうとした。
が、その前に二つの影が動いた。ゆかと、さえだ。
「私たちが相手する!」
「ルナたちは先に行ってっ!」
二人は魔方陣を作り出し一気に光の矢を打ち抜く。
スター魔法の持ち主。決して弱くない。むしろトップレベルの魔法の力を持つ二人が合わさったら、普通の魔法使いは太刀打ちできないだろう。
普通の魔法使いなら……の話だが。
「やぁっと反逆者のお出ましだね!」
「けど、肝心の裏切り者はいないですね。」
打ち抜かれたはずの光の矢はいとも簡単に打ち消され、何事もなかったかのようにメアとネスはゆかたちのもとに歩み寄る。
「悪魔王は足止めをしようとしてるわ。今此処でメアとネスに構っていたら敵の思うつぼよ。」
デビルは足を止めるルナに、「行け」という合図を出した。
「でも……」
「あなたは仲間を信じないの?」
「……そうだよね。あの二人なら、きっと。いや、絶対に。」
ルナが言い終わる前に、背後から声がした。
「大丈夫。だよね。」
みどりはルナの手を取り、走り出す。
「あの二人とは私、関わりは短いかもしれないけど、きっと大丈夫。それに、悪魔王は今にも世界を征服しようとしてる。」
「ええ。一刻も早く城へ向かうしかないわ。それに……あの二人にはまだ、切り札があるはずよ。」
(切り札……?)
デビルの言う「切り札」が何なのか、ルナには分からなかったが、二人を信じて走り出すことにした。後ろには、みみ、なな、ささも着いてきている。
ゆかとさえ、二人に対する信頼の気持ちは、誰も曲げなかった。
ルナたちが走り出したのを見届けたゆかとさえは、目の前の悪魔二人の攻撃に避けることに集中していた。
「ははは! 逃げてるだけじゃアタシたちとは戦えないよー!」
「なるほど。デビルさん達を逃がしたということですか。でも、あなたたちをすぐに始末すれば意味のないことっ!」
真っ黒に染まった炎を操るナイトメア。真っ黒に染まった水を操るダークネス。
二人の強力な悪魔法は、少しでも触れてしまえば一瞬で飲み込まれるであろう攻撃だった。
「さえ、そろそろ攻撃をしないと、こっちのスタミナが持たないよね。」
「ええ。でも隙がないのよね……っ!」
二人の体力も消耗してきている。
悪魔二人に隙を作る。
それができなければ、ずっと攻撃を避けるだけになってしまう。
動き回りながら、悪魔に攻撃を与える方法……。
「……高度な魔法だけど、私たち二人ならできる魔法があるよ。ほら、夏休みにやった、あの魔法。」
「……確かに、それなら二人に攻撃を与えることができるかも。試してみましょう!」
二人は近くの木に囲まれた公園まで悪魔をおびき寄せることにした。
「あれれー? 消耗戦のつもりかなー?」
「私たちの魔力は有り余っていますよ。」
双子はそれぞれ攻撃をやめることなく一定のペースで悪魔法を放ってくる。
「さあ、一撃を与えるよさえ!」
「ええ! 私たちの思い出を、力にしましょう! ゆか!」
二人の体力もそろそろ力尽きてきている。それでも二人は諦めず、二手に分かれて動き出した。
二人にとって、忘れられない思い出に浸りながら。




