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★仮のクリスタル★

「みんな、準備はいいよね?」

ルナは公園の出入口で、最後の確認をとった。

ルナ、ゆか、さえ、みどり、みみ、なな、ささ。

全員は深く頷く。それと同時に、デビルの声が聞こえる。

「さあ、行きましょう。」

ルナは足を踏み出す。結界の前で立ち止まり、デビルの魂であるホワイトクリスタルを取り出す。

「今から結界をとくわ。普通の悪魔はクリスタルの輝きに弱いはずよ。私は違ったけれど。かつて私が生み出した小悪魔たちはあの日、すべてあの光に飲み込まれて消えてしまったのだから。」

あの日・・・?

ルナが声を出す前に、デビルが付け足した。

「私がななさんを操り、みみさんとさささんを突き落とした日よ。」

その声は微かに震え声だった。

自分がやっていたことを思い出して声を震わせているのに、デビルはそれをかくすように早口で言う。

「あの日、3つのカラフルクリスタルが重なり力を発揮したとき、公園全体をその光が飲み込んだ。そのおかげで、私以外の悪魔はすべて跡形もなく消えたのよ。カラフルクリスタルは未知の力を秘めているわ。そのクリスタルさえ持っていれば、みみさんたちも、あゆみさんたちも無事なはずよ。ルナも、ハートフル魔法を持っている。その分、ゆかさんとさえさんは細心の注意をしておきなさい。」

デビルはそう言うと、白い光で体から放った。その体は真っ白なクリスタルだが。

次第に結界が破れるスピードが速くなっていく。

「みんな、深呼吸をして。わたし達ならできる。絶対に

悪魔王を倒すことができる。」

ルナは、キリっとした笑顔でそう言う。

自信に満ちた、自信に支えられている、そんな顔だ。

その顔をみてデビルたち7人は安心をする。そして深呼吸をする。

しかし・・・。

バリ―ン!!

結界が破れた音とともにルナたちは言葉を失った。

荒れ狂う人々、雷が鳴り響く空、ボロボロな家々・・・。

真っ黒な世界がこの町を包んでいる。

ゆかとルナが出会った日、あんなに咲いていた綺麗な桜が、今は跡形もなくその木の形すらのこしていない。

自分の住んでいる町が、10日間でこんなにも変わってしまった。

言葉が出なかった。涙も出なかった。状況がすぐに飲み込めなかった。

「ルナ・・・気をたしかにしなさい。今は悪魔王を倒すことだけを考えるのよ。この町が・・日本が・・世界が完全に変わってしまう前に。」

(そうだった。だめだ今、ここで絶望しているようじゃ。まだ、まだ間に合う。)

ルナは公園の外に足を踏みだした。

「みんな、行くよ。」

町の姿に呆然としていたゆかたちも、ハッとする。

今ここで、立ち止まっていては何も始まらない。何も終わらない。

「悪魔王なんかボッコボコに倒そ!!」

ゆかが公園の外へ出る。

「そうね。すべてを終わらせましょう!」

そしてさえもルナの横に並ぶ。

「わたし達は!」

「いつも一緒だから!」

「心も一つね!」

みみ、なな、ささはいつものように、3人で一緒に、公園の外へ出た。

「ルナ、いつの間にかこんな友達作ったんだね。やっぱりルナには友達を作る才能があるよ!」

みどりも微笑んで公園の外へ踏み出す。

目の前の光景は最悪だ。

みたこともない、最悪の景色だ。

だけど、こんな世界をこれから変えると思ったら、どうだろうか?

自分たちが、いつもの、いや、いつも以上の平和をこの世界に与えるのだ。

そう思いルナたちは、誇りに思う。

そう思いルナたちは、決意する。

変わってしまった世界に、平和をもたらすことができるのなら。

自分たちが、人の役にたてるなら。


「ルナ、催眠術学校・・・いえ、悪魔城の場所、わかるわね?」

「うん。大丈夫。覚えてるよ。」

デビルとルナは、確認をとると、先頭になって歩いた。

ここから催眠術学校までは電車を使って乗った方がいい。

しかし、町はこんなありさま。当然電車など使えない。

ゆかやさえがつかえる瞬間移動は、行ったことのある場所にしか行けない。

ゆかもさえも、催眠術学校や、その周辺にはいったことがないのだ。

「歩いていくしかないよね・・。」

ルナは独り言のようにつぶやく。

「仕方ないわ。でも、悪魔にとりつかれた人間が行きかう中で、安全に悪魔城までいけるはずがないわ。」

周りの人は皆、ルナたちを見ている。

恐ろしい目で。不気味な笑みをたたえて。

襲いかかってこないのはみみたちがクリスタルの光を悪魔たちに見せているからだ。

「これが悪魔・・・油断しちゃだめだよ!」

みみはルナのすぐ後ろに。

「町が悲鳴をあげてる・・・。」

「慎重に進みましょ!」

ななとささは、ゆかやさえを囲むように。

さえもゆかも、今は魔力を温存するべきだ。

そのために、みみたちは2人を囲んで守っていた。

ただ、それでは3人の体力が心配になる。

一方、みどりは何かを念じているように、手を胸に当てて深呼吸をしていた。

ルナは、集中しているみどりに何をしているのか聞くことはできなかった。

ふと、今になって気になることがあった。

湖の時の話だ。みどりが飛び込んだ時、ルナが駆け寄りクリスタルの力が働いた。

みどりは言っていた。

『ルナが駆けつけてくれたら、このクリスタルが働いて、ルナが何もしなければ、私が死ぬ。』

(私が何もしなくても、クリスタルは働いたんじゃ・・・?どうして、みどりは言い切ったのだろう・・・。)

あれこれ考えていると、みどりの胸のあたりが緑色に光り出した。

そして、クリスタルが現れる。

「みどり・・・それは・・。」

ルナが問いかけると、みどりは少し寂しそうな目で言う。

「私の中に眠っている、グリーンクリスタルだよ。」

「え・・?」

ルナは、驚けなかった。意味が分からなかった。

湖に飛び込んだ時、みどりの中から出てきた。みどりを助けた。

そして目の前にも、今、みどりの手元にある。

そんなクリスタルが、まだみどりの中に眠っているというのか・・・?

「このクリスタルは、私がこうやって力を込めた時や、私が願ったときの数分しか現れないの。簡単に言えば、まだこのクリスタルは、仮のものでしかないの。」

仮のクリスタル。

みどりの力であれば、自分の中に眠っているクリスタルを呼び起こすこともできるかもしれない。

しかしそれはまだ、みどり自身の心の中が悩みを持っている、もしくはみどり自身が何かを間違っている。という証拠である。

あゆみ、一般人になりたい悩み。

ききら、自分らしくいたい悩み。

なな、自分の能力の不満。

みみ、才能魔力の不満。

そんな悩みが解決したとき、4人のクリスタルは現れた。

そしてみらいとささは・・。

みらい、自分の中ではさえがすべてだと思っていた。

ささ、自分の中では、コンピューターが一番だと思っていた。

そんな間違いを正したとき、クリスタルが現れた。

みどりの手元のクリスタルは、時間がたつにつれだんだんと消えかかっていく。

ルナは気づいた。

あの時、自分が駆け付けなければ、みどりは本気で死ぬことを覚悟していた。

しかし、ルナが駆け付けたことで、みどりの「生きたい」という気持ちが強くなりクリスタルが働いた。

ルナはそう考えてゾクッとしたのだ。

今ここにいるみどりは、自分のせいで亡くなっていたのかもしれない。

「このクリスタルの力で、少しでも皆のやくにたてるなら、と思って。」

みどりはそのクリスタルを大事そうに持って、なにやら呪文を唱えた。

すると、クリスタルの光が瞬く間にあたりを包み込んだ。

それまで何も気付かなかったゆかとさえが、その光をみてようやく声を上げる。

「な、何!?」

「みどりちゃんのクリスタル・・?」

その光は大きくなっていく。

「やめなさいっ!」

その大きな声とともに、みどりの放っていたクリスタルの光は消えていた。

声はデビルだった。

「みどりさん、その行動がどうなるのか、わかってやっているのよね?」

デビルはいつも以上に真剣な声で、ルナも驚くほどに、声を荒げていた。

みどりは何も言わなかった。

ただ、その目の奥には、悲しみが隠れていた。


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