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★始まりの夜★

純粋に光るホワイトクリスタルを見つめながら、ルナたちは固く決意した。

「デビル、私はあなたの人生を変えてしまった悪魔王が許せない。絶対にレインボー魔法を成功させて、悪魔王の支配を終わらせてみせる。」

悪魔王はデビルの人生だけでなく、全ての人の人生を自分のものにしようとしている。

デビルはそんな支配者に協力をしてしまったことがくやしくて仕方がない。

「人を自由に操って、彼はそれを楽しんでいる。人間の心をもてあそんで楽しむのが悪魔王よ。くれぐれも気を付けなさい。強い心を持っていれば、悪魔がよりつくことも少ないはず。」

ルナたちは一度深呼吸をして、うなずいた。

しかし、うなずくのもつかの間・・・。

「皆・・!見て!」

さえは空の結界が少しずつ崩れていくことに気がついた。

「これは、私がクリスタルになり完全に魔法を封じ込めたことで結界が破れはじめている。」

デビルはすぐにゆかの体調を確認するように言った。

みどりは回復薬を作り、看病していたが、一向に体調が回復する様子がない。

「このままじゃ、ゆかちゃんは戦えない。それに、まだ悪魔力が残ってる・・・。私、悪魔力だけには敏感だからわかるの。こんな体じゃ、悪魔にまた体を乗っ取られる可能性も・・・。」

みどりはかなり心配そうな、焦った表情でゆかを見つめている。

「・・・あ!ルナ、さっきの魔法、もう一度できる?」

「もう一度?」

「ハートフル魔法は悪の力を浄化する力を持っていると思う。だから、その魔法が使えれば、きっとゆかちゃんに残っている悪魔力を取り除くことができるはず・・・。」

ルナは頷けなかった。

あのときは無意識で呪文を唱えて魔法を使っていた。

あの魔法がどれ程の魔力を使って、どれ程の力を持っているのか、わからない。

もう一度、あんな魔法が本当に自分に使えるのか・・・。

もし失敗したら、悪魔法で作られた結界が早く崩れるだけ・・・。

少しの間、時が止まったように周りの音が聞こえなかった。

「もしかして、不安?そんな弱い心では、できるものもできないわ。もっと自分を信じて。」

そんな静かな空間の中で、デビルの言葉がすーとルナの中へ入っていく。

嫌だった声が、今はこんなに落ち着く声だったなんて。

(私は・・・私ならできる。ゆか、今私が必ず助けるから。)

まだ会って間もないけど、ゆかはずっと前から一緒にいるような、大切な友達だから。

私を救ってくれた親友だから。

ルナは深呼吸をして心を落ち着かせた。

【静まり返る心よ!心の声よ!信じる心よ!私の心からの魔法、ハートフル魔法!】

(ゆか、お願い!)

ルナは全身が熱くなるほどの力を魔法にして、ゆかの体に送り込む。

(魔力が・・・限界・・!)

ルナは最後の力を振り絞る。

光が徐々に消えていく。

「ゆか・・・。」

ゆかの親友であるさえは、自分が悪魔力を取り除く力がないことに悔しがっている様子だった。

ただ同時に、ゆかの目覚めを心から信じている。

「いつも一人で本を読んでいた私に、ゆかは転校早々声をかけてくれたよね。読書の時間がなくなるほど、ゆかは私と一緒にいてくれた。私がスター魔法を使えるようになったのはゆかのおかげよ。ゆかと一緒に戦っているから私は戦うことを恐れてないの。だから今、ゆかが元気じゃないなんて、いけない。」

さえが最後に回復魔法をかける。

どんな魔法よりも、心をこめて。

すると、ゆかのまぶたがゆっくり開き始めた。

「ゆかっ!」

さえは一番早くゆかに気がついて声をだした。

「さえ・・・。」

二人はお互いの顔を見て安心したのか、しばらく黙ったまま微笑んでいた。

「もう、さえったらやだなあ。まるで私が死んだみたいなこと言っちゃって。」

ゆかはさえの話していた言葉をしっかり聞いていた。

「ふふ。ごめんなさい。」

いつも通りの会話。

けして久しぶりではないのに、凄く久しぶりな感覚。

それほど、夜が長かったんだ。

空は少しずつ、朝を迎えている。

そしてそれとともに、結界がペースを早めて破れていく。

もう時間の問題かもしれない。


「ゆうと。安全な私の部屋で待っていて。」

さえは瞬間移動魔法でゆうとをさえの部屋に連れ込み、家の鍵を閉めて結界を張った。

これでゆうとに身の危険がせまることはないだろう。

「お姉ちゃん、絶対に帰ってきてね。」

さえはゆうとの目をまっすぐ見て、うなずいた。


「本当にここに残らなくていいの?」

ゆかはみみ、なな、ささに何度も聞いた。

三人は魔法が使えない。

「もちろん!私たちだってクリスタルがあるもん!」

「このクリスタルは、きっと私たちを守ってくれる。ずーと私たちを見てくれているの。」

「悪魔の勝手になんてさせない。私は私の夢を叶えるのだから。」

ゆかはあきれたように、ため息をついて笑った。

「もーしょうがないなあ。そう言うと思ってたよ。」


ルナはそんなやり取りを見ながら、ふと、空を見上げた。

真っ黒な雲がまるでルナたち・・・いや、町全体を飲み込んでいくようだ。

みどりとデビルもその異様な空気に気がついていた。

「ルナ、悪魔の気配が・・・。」

「ええ。ルナ、気を付けなさい。」

(これから・・・始まる。)

この夜は、始まりに過ぎない。

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