★砂嵐が晴れる時★
「心の魔法なんて結局使うことできなかったね。」
ルナはちょっと残念そうに言う。
辺りはもう暗い雰囲気が漂っている。
デビルは今、自分の悪魔力をためにためているだろう。
「デビル、絶対許せないから!ルナ、相手は一人。皆で立ち向かえば、きっと大丈夫だよ!」
ゆかの言葉にルナは少し安心する。
この十日間のキャンプで、色々なことをゆかと、さえと、みみたちでやってきた。
ルナにとって、誰一人かけてほしくない大切な友達だ。
デビルなんかに負けていられない。
「ルナならきっと大丈夫よ。」
「ありがとう、ゆか、さえ。皆で、最高の魔法を完成させよう。」
ルナはそう、心から誓った。
風が冷たく感じる頃、ルナたちは誰もいない広い公園の真ん中で、ただただ、デビルを待ち続けていた。
辺りに嫌な空気が漂う。
『こんばんは、ルナ。』
ルナはデビルの声を感じると、身を構える。
「デビル。私は絶対デビルに負けない。」
『私もあなたと戦えるのを楽しみにしていたわ。』
デビルは不気味笑っているようだ。
さえやゆかたちもデビルの気配に気づいたらしく、緊張感が伝わる。
『ルナ、勝負よ。悪魔デビルが、あなたの体をもう一度奪って見せるわ。』
「私には、ゆかやさえや、皆がいる。」
「そうね。私だってデビルにまけないわ。協力すれば、きっと大丈夫。」
「そうだよ!さっきも言ったけど相手はデビル一人。魔法が使えるのはさえと私と…きっとルナにもできる。3人の魔法で、絶対成功させるよ!」
ルナとさえとゆかは、目に見えないデビルに向かって、公園中に響声をあげる。
デビルはそんな3人の心の声が届いていないのか、フッ、と笑う声を出す。
『それはどうかしら?必ずしもお友達がそばにいてくれるとは限らないわよ。』
(え?・・・それって一体・・。)
ルナには意味が分からなかった。
確かに、友達とは永遠に一緒にいることができないものかもしれない。
ただ、今は違う。隣にさえも、ゆかもいてくれる。なのに、3人でデビルに立ち向かうことが不可能というのだろうか?
『忘れているようね。私はこのままではあなたたちと戦えない。あなたたちの中の一人の体が必要なのよ。』
「そ・・それって・・・。」
ルナがつぶやいたとき、闇色の霧が一気に渦巻き、砂嵐がおきる。
ルナは目を閉じ、両手で顔を覆う。
前を見ることすらできない。何が起こっているのかもわからない。
ただ、ルナが気づいたことは・・・。
砂嵐がおさまり、公園に再び静けさがよみがえる。
「目を開けなさい。ルナ。」
その声はいつものように頭の中に響く声ではない。
その声はデビルの声ではない。ただ、それがデビルなのだと感じる。
いつも元気に、ルナに話しかけてくれる声なのに、今の彼女の声は、彼女の物ではない。
「ゆか・・・。」
ルナは目を開ける前に、その場の状況を理解した。
目の前にいた真っ赤な髪の少女は、ゆかだった。
ゆかとデビルが戦ったあの夜…。
「あなたには闇を打ち消す光などないでしょう。私にはわかるわ。そんな力では私を倒すことなどできない。私に勝つのは不可能よ!」
ようやく気が付いた。ゆかが何度か頭が痛いと言っていた理由。
ゆかの魔力が弱まった理由。
デビルが自分に勝つのは不可能と行った理由。
悪魔力を身につけていたから。
おそらく、10日間のキャンプが始まった時からであろう。
身代わり魔法だって、そんな魔法使わなくてもさえを救うことができた。
なのに、極限の魔力を使い切って、ゆかは眠りについた。
「ささの時と同じ・・。」
さえは変わってしまったゆかを見つめる。
もうあれはゆかではない。デビルだと確信する。
「驚いたかしら?あなたたちの親友だものね。でも私は、あと少しでルナの体を完全に乗っ取ることができる。そんなときに彼女に邪魔されたの。」
「それで、ゆかの体を・・・?」
さえは息を荒立たせ、質問する。
「それだけではないわ。私もそこまで心の狭い悪魔ではないから。単に、ゆかさんの魔力が強かったから。彼女は友達を思う気持ちは誰よりも強い。ルナを倒すのには、彼女の魔力は危険だった。それに、ルナはまだ魔力が小さい。だからあの時は上手く乗っ取ることができなかった。魔力の強いゆかさんは自由自在ね。彼女からたくさんの魔力をいただいたわ。そのおかげでさささんにも取りつくことができた。ルナ、あなたはゆかさんと戦うことになるのよ。」
ルナは歯を食いしばる。
デビルに取りつかれていたルナを、解放してくれたのはゆかだった。
いつも明るくみんなを楽しませてくれて、勇気づけてくれて、そんなゆかが今、デビルに体を乗っ取られているなんて。
悔しくてたまらなかった。
でも、戦わなければいけない。
この公園から出るためには・・・。
悪魔王と戦うためには・・・。
平和な世界を取り戻すためには・・。
「その顔が私が求めていた顔よ。いつものように正義感の塊のような顔は捨てて、自分の憎しみを晴らすためだけに戦いなさい。それが悪魔を生み出すのだから。さあ、ルナ。あなたの魔法をみせてみなさい。」
ルナは、その場に立ち尽くすことしかできなかった。




